著者
大嶋 栄子
出版者
医学書院
雑誌
精神看護 (ISSN:13432761)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.100-103, 2020-01-15

それは社会から隔絶された場所にあった 刑務所と精神科病院は、とてもよく似た場所だ。どちらも、望んで行く場所ではないこと。自由が制限されること。そこから出るためには、できる限り本当のことは話さないほうがよく、周囲の人に心を許さないほうがいいとされてきたこと、などなど相似点が多い。 昨年秋、この映画の舞台となった「島根あさひ社会復帰促進センター」★1という民間が運営する刑務所を訪問し、TC(セラピューティック・コミュニティ=治療共同体)★2ユニットのプログラムを見学する機会を得た。そこは広島空港から高速バスを乗り継ぎ、インターチェンジまで迎えに来てもらわないとたどり着けない場所だ。ずいぶん不便な所にあると驚きながら、これも多くの精神科病院と同じだなと思った。監督の坂上香さんがちょうど映画を撮影していた頃、レンタカーを飛ばして飛行場に駆け込んで間に合ったとか、途中の風景があまりに綺麗でカメラに収めたとか、思うように進まない撮影の現場で起こるアクシデントについてのぼやきを聞いたりSNSで見たりしていた。だから、自分がその場所に立った時に、初めてなのにここに帰ってきたような気がした。