著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.10-26, 2004-10-18 (Released:2017-03-30)
被引用文献数
3

2003年に実施された衆議院議員選挙において,主要政党のほとんどが,犯罪・治安対策を重要な争点として取り上げるなど,日本において,現在ほど,犯罪や治安が大きな社会問題となったことはない.世論調査の結果を待つまでもなく,多くの国民が,疑問の余地のない事実として,日本の治安が大きく悪化していると考えている.本稿では,これを「治安悪化神話」と呼ぶ.本稿では,まず最初に,日本の治安悪化神話の根拠となっている犯罪統計を検証する.そして,治安悪化を示す警察統計の指標は,警察における事件処理方針の変更等による人為的なものであり,人口動態統計等を参照すると,暴力によって死亡するリスクは年々減少しつつあること,つまり,治安悪化神話は,必ずしも客観的な事実に基づいていないことを確認する.次に,治安悪化神話の生成過程について,マスコミによる凶悪犯罪の過剰報道,それによって作られたモラル・パニックを指摘しつつ,さらに,一過性であるはずの治安悪化言説が,マスコミ,犯罪被害者支援運動と支援者(advocates),行政・政治家,専門家の共同作業を通して,単なるパニックを超えて,社会の中に定着していく過程を分析する.
著者
田口 祐子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.87-98, 2019 (Released:2019-04-08)

戦後の高度経済成長期を境に、人生の節目に行なわれてきた多くの儀礼が、それまでの儀礼の担い手であった地域共同体の手を離れ、「家」の外で行なわれるようになった。外部のサービスを利用して、儀礼が執り行われるようになったのである。サービスの利用は、儀礼を実施する際の一部にとどまらず、儀礼のすべてにかかわる利用の場合もみられる。このような状況は、現代の代表的な子どもの儀礼である七五三においても同様であり、現在貸衣装とヘアメイク、写真撮影といった子どもの七五三を祝うために必要な多くのことを、総合的に提供する「こども写真館」がもてはやされ、高い利用率を誇っている。しかし、このこども写真館登場前に七五三を全国に浸透させる役割をスーパーが担っていたことは、あまり知られていない。 本稿では、これまで整理されてこなかった七五三における戦後の儀礼産業の動向を、主にサービス関係者やその利用者への調査結果から明らかにしていく。そのことを通じて、七五三の実態や意義について検討し、現代における人生儀礼のあり様を研究する上での一つの切り口を提示したいと考えている。
著者
太田 さつき 久保田 貴之 高城 佳那 漁田 武雄 日隈 美代子
雑誌
環境と経営 : 静岡産業大学論集 = Environment and management : journal of Shizuoka Sangyo University
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.95-108, 2020-06-01

WEB調査会社モニタ会員の20歳代の大卒総合職を対象に調査を行い、昇進意欲および昇進意欲に関係すると思われる要因の男女差を調べた。目指す役職については、明確な男女差がみられ、女性は男性よりも上位の役職を希望していなかった。女性は男性より管理職に必要と思われる能力への自信が低く、自信に繋がる職務経験が少ない傾向にあった。組織の女性活躍推進や男女均等の施策を高く知覚するほど、自信に繋がる職務経験をするほど、男女ともに上位の役職を目指していた。女性においては、能力への自信と目指す役職との間に明確な正の関係がみられた。
著者
岩本 通弥
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.265-321, 2008-03-31

本稿は日本近代の産育儀礼の通史的展開として、その一大転機と位置付けられるであろう民力涵養運動期における「国民儀礼」の創出について、民俗学的観点から分析する。第一次大戦の戦後経営ともいえる民力涵養運動は、日露戦後の地方改良運動の延長と見做されたためか、近代史でも地方改良運動や後続の郷土教育運動・翼賛文化運動に比べ、研究蓄積はさほど厚くないが、民俗学的にみると、その史料には矯正すべき弊習として従前の暮らしぶりも描写されるなど、実に興味深い記述が多い。この運動は形式上、内務省の示した「五大要綱」に応じた、各県・各郡・各町村の自己変革であるため、その対応は地方毎であるが、列島周縁部では、例えば岩手県では敬神崇祖の強調で伊勢大麻を奉祭する「神棚」設置が推進され、鹿児島県では大島郡に対し、「神社ナキ地方ハ我カ皇国ノ不基ヲ定メ賜ヒタル…先賢偉人ノ神霊ヲ奉祀スヘキ神社ヲ建立スルコト」と命じるなど、一九四〇年代の神祇院体制への土台として地域的平準化が図られており、従前の竈神や納戸神・便所神などへの素朴で個別的な民間信仰は、天照の下に統合され、家内安全も豊作・安産祈願も「天照のお蔭」と思わせるような換骨奪胎過程が見てとれる。そのほか各地の記事を通覧すると、門松や注連縄、初詣や七五三、神前結婚式の普及を推奨したり、礼服規定で喪服を黒に統一するなど、今日日本で「伝統」と見做される「国民儀礼」の多くは、この期の運動によって成立するが、それまで地方毎に多様だった民俗文化を平準化し、「文化的ならし」を図る一方、自治奉告祭や出征兵士の送迎、三大節など、地域共同体に何かしらの出来事があれば、「氏神」に参集させ、新たな形式の「集団参拝」を強要するなど、私的で人的であった習俗を、公的で外部からも見える可視的な社会的儀礼へと変換させた。それは地域内階層差や初生児優遇の儀礼を平等化する一方、忠君愛国へ向けた儀礼の全国的画一化の端緒ともなった。

371 365 90 1 OA 麻疹ワクチン

著者
中山 哲夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.257-266, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
44

麻疹ワクチンは1954年に分離されたEdmonston株を親株としてニワトリ胎児胚細胞をはじめとした本来の感受性宿主以外の細胞で継代することにより高度弱毒生ワクチンが樹立された.麻疹ワクチンの普及により麻疹患者報告例数は減少し南北アメリカは麻疹排除に成功し,我が国を含めた太平洋西部地域は2012年を麻疹排除の目標達成年度としている.近年の分子生物学的手法の進歩により麻疹ウイルスRNAをcDNAクローン化し感染性ウイルスを回収するreverse geneticsが確立され,弱毒の分子基盤が解明され麻疹ウイルスの性状が解析されてきた.また,こうした分子生物学的な手技を応用し既存の方法では有効なワクチンが開発されていない感染症に対して既に安全性と有効性が確立されている弱毒麻疹ワクチンを生ワクチンウイルスベクターのプラットフォームとする新規の組換え生ワクチンへの応用,ワクチン株をベースとするoncolytic measles virusへの展開を述べる.
著者
前野 悦輝
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.175-176, 2019-03-05 (Released:2019-08-16)
参考文献数
16

談話室Leggett教授から物理学若手研究者へのメッセージ――傘寿を祝う研究会にて
著者
越 光男 畑中 修二
出版者
一般社団法人 日本燃焼学会
雑誌
日本燃焼学会誌 (ISSN:13471864)
巻号頁・発行日
vol.60, no.193, pp.163-172, 2018 (Released:2019-02-15)
参考文献数
22

A simple model for the smoke formation in black powder combustion is developed. Smoke formation is modeled as nucleation from gas phase molecules. The precursor molecules for this nucleation process for black powder with 75 wt% of KNO3 are identified as potassium salts such, K2CO3 and K2SO4. This determination is based on the partial-equilibrium calculations in which chemical species in the condensed phase are excluded. Standard classical nucleation theory (CNT) is adopted to estimate the radius and formation rate of the critical nuclei of smoke particles. The main components of smoke from black powder are K2CO3 or K2SO4 particles, depending on the sulfur content. The predicted nucleation rates of the particles are very fast. The time variation of the averaged particle radius and volume fraction of smoke is also evaluated by solving the population valance equation (Smoluchowski equation). The volume fraction of smoke produced by black powder combustion is predicted to be of the order of 10-4. This study also investigates how ammonium perchlorate (NH4ClO4, AP) added to the black powder affects smoke formation, using CNT and the Smoluchowski equation. CNT predicts that the critical radius of K2CO3 and K2SO4 particles can be considerably increased by the addition of AP to black powder. This intervention could thus reduce smoke-particle formation. Although CNT predicts that no KCl particles will form because of the high vapor pressure of KCl, the Smoluchowski equation indicates that KCl particles will be produced with a large amount of added AP. Solutions of the Smoluchowski equation also indicate that the average particle diameter and volume fraction of smoke decrease if the amount of added AP is increased.
著者
吉野 知子 前田 義昌
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.433-438, 2014 (Released:2017-02-01)
参考文献数
23

磁性細菌は細胞内にナノサイズの磁性粒子を合成する。このナノ磁性粒子はマグネタイト(Fe3O4)からなるコアを持ち,多くのタンパク質を含む脂質二重膜で覆われている。これまでに磁性細菌の遺伝子改変技術が開発されており,組み換えタンパク質の発現ホストとしての利用が試みられている。特に,粒子膜中のタンパク質をアンカータンパク質として用いることで,機能性タンパク質をディスプレイした磁性粒子の創製が可能である。本稿では,当研究室で開発された磁性粒子上へのタンパク質ディスプレイ技術の基本戦略を概説した後に,難発現性タンパク質のディスプレイを目指した近年の取り組みを紹介する。この中では,テトラサイクリン誘導発現システムの開発や変異株の作出,更には “in vitroドッキング法” と呼ばれる方法が開発され,膜タンパク質や抗体といった難発現性タンパク質を磁性粒子上に効率的に発現させることが可能となった。これらの遺伝子組み換えツールを駆使して構築された新規機能性磁性粒子は,バイオテクノロジー分野における様々な用途に応用できると期待される。
著者
Yamanaka Takeharu
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2003

制度:新 ; 文部省報告番号:乙1830号 ; 学位の種類:博士(理学) ; 授与年月日:2003-10-16 ; 早大学位記番号:新3651
著者
小池 淳一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.205, pp.459-472, 2017-03-31

本稿は、民俗儀礼を起源とする俳句の季語を文芸資源と捉え、その形成の過程を論じようとするものである。七五三という儀礼は実は新しく、都市的な環境のなかで成立したものである。そして特に現代では古い状況から新しい状況へと変化することを示す儀礼というよりも、人生の階梯を晴れ着などで示す表層的な儀式という性格が顕著である。そうした七五三が文芸資源として俳句作品に用いられる際には、子どもの成長や晴れ着の着こなし、儀式のなかでの動きを切り取るものとして機能している。社会的な儀礼よりも一時的な儀式としての意味合いが強調される。一方、岡見は「堀川百首」の源俊頼の和歌における「をかみ」の語釈として胚胎し、近世の季寄せや歳時記の類にこの語に関する関心が引き継がれてきた。記録上は、多少のバリエーションがあり、担い手や方法に差異があるが、実際の民俗儀礼として明確に確認はできない。この語は俳句作品のなかでは年の暮の情景を示すものとして、さらには時間感覚を表出させるものとして働く場合が多い。それは幻想的であり、年中行事というよりも特殊な境界の時空をとらえるものとなっている。
著者
山中 智省
出版者
目白大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、日本の若年層向けエンターテインメント小説の一つであるライトノベルを、「若年層の読者たちを戦略的に獲得することを企図した出版メディア」と捉えた上で、その段階的な発展過程を、メディア論的視座を重視した文化研究の立場から実証的に探っていく。また、以上の調査・分析を通して、ライトノベルがもたらした小説や物語の受容・創作のあり方、ならびに若年層の文学・読書能力や教養の形成状況などを包括的に捉えつつ、現代日本の「文学」に生じた変容/再編の具体相を明らかにする。
著者
安川 康介 野村 恭子
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.275-283, 2014-08-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
66
被引用文献数
3

近年, 女性医師の勤務継続支援に関しては活発に議論されるようになってきたが,ジェンダー平等へ向けたより包括的な議論は不十分である.本稿では,日本の医学界におけるジェンダー不平等をめぐる現況について概観し,ジェンダー平等に向けた課題について考察する.医学界のジェンダー不平等の主な原因として,性役割分業を前提とした医師の長時間・不規則な勤務体制,女性医師の家庭と仕事の二重負担,女性に対する固定観念・偏見・差別等があげられる.女性であることが,医師として不利にならない労働環境を構築するために,ジェンダー平等へ向けた取組みが必要である.