著者
舩田 正彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.10-16, 2005 (Released:2005-09-01)
参考文献数
33
被引用文献数
3 3

薬物依存症の治療法の確立および治療薬の開発のために,依存性薬物による精神依存形成機構の解明が必要である.このためには,精神依存動物モデルを確実に,かつ安定して獲得する方法論を確立することが必須となる.条件付け場所嗜好性試験(Conditioned place preference,CPP法)は,薬物の精神依存形成能を報酬効果から予測する方法として注目されている.CPP法はパブロフ型条件付けの原理に基づいており,動物に薬物を投与した時,その薬物が引き起こす感覚効果(中枢神経作用)と装置の環境刺激(視覚,触覚,嗅覚刺激など)を結びつける方法として開発された.CPP法は薬物の報酬効果を簡便な装置を利用することで,短期間で評価できることが最大の特徴である.また,短期間での評価が可能であることから,薬物の脳内微量注入による条件付けにより,精神依存形成における責任脳部位の同定が可能になった.一方,揮発性有機溶剤は“吸入”により乱用されることから,依存形成メカニズム解明のためには,薬物吸入により精神依存性を評価する装置の開発が必須であった.そこで,薬物吸入による揮発性有機溶剤用CPP装置の開発を試みた.その結果,トルエン吸入により報酬効果の発現が確認された.このCPP装置は簡便な操作で,一定量の揮発性有機化合物を動物に吸入させることができ,トルエン以外の揮発性有機化合物の報酬効果の評価にも応用できると考えられる.CPP法は装置を工夫することで薬物吸入による依存モデルの作製も可能であり,さまざまな薬物の精神依存形成能の一次的評価方法として非常に有用である.また,操作が簡便であり,評価に要する時間も短期間であることから,薬物の精神依存形成機構の解明に大きく貢献する評価法の一つである. 現在,わが国は第三次覚せい剤乱用期にあり,薬物乱用が大きな社会問題となっている.特に,覚せい剤,コカインおよび大麻などの違法性薬物の入手の可能性がこれまでになく高まり,薬物乱用の若年層への拡大が表面化している.また,こうした薬物の慢性的な使用により,精神疾患を発症することが知られている.医療施設における薬物関連精神疾患に関する調査から,その発病に至る薬物として覚せい剤が50%,有機溶剤は30%を占め主要な原因薬物になっているのが現状である(1,2).こうした薬物関連精神疾患,薬物依存症の治療法の確立およびその治療薬の開発のために,依存性薬物による精神依存形成機構の解明が必要である. さらに,法的規制を受けていない化学物質である通称“脱法ドラッグ”の乱用は若年層を中心に浸透しているのが現状である.こうした化学物質は,強力な精神依存形成能を有する危険性や未知の毒性などが発現する危険性を有する.事実,幾つかの化学物質は乱用され重大な社会問題となっている.したがって,化学物質の薬物依存性を,迅速に評価できる動物実験の必要性が高まっている. こうした背景から,薬物の依存形成能を迅速に評価し,さらに精神依存動物モデルを確実かつ安定して獲得する方法論を確立することが重要である.国内および海外の研究施設において,条件付け場所嗜好性試験(Conditioned place preference,CPP法)は,薬物の精神依存形成能を報酬効果から予測する方法として注目されている(3,4).海外では1980年代に,ラットを使用した研究からCPP法が確立されてきた(3,4).国内では1990年代に世界に先駆けて,鈴木らにより遺伝子改変マウスの利用を視野に入れたマウスを使用したCPP法が確立された(5).その後,マウスを利用したCPP法に関する研究報告が飛躍的に増えている.CPP法に関する詳細な実験技術に関しては,既に鈴木らのグループにより紹介されている(5,6).本総説では,こうした報告を踏まえCPP法の基礎として,実際の実験方法と実験を実施する際の留意点に関して総括した.また,CPP法は薬物の報酬効果を,短期間で評価できることが最大の特徴および有用性である.すなわち,動物の維持が短期間で済むため「薬物の脳内微量注入による条件付け」の実施が可能になった.そこで,こうした技術とCPP法を利用した薬物の報酬効果発現の解析を通じ,明確になりつつある薬物精神依存形成における責任脳部位に関する代表的な知見をまとめてみた.さらに,CPP法の応用例として,当研究部で確立に成功した揮発性有機溶剤であるトルエン吸入による報酬効果評価の実例を紹介する.
著者
大月 三郎 秋山 一文 森本 清
出版者
Okayama Medical Association
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.187-196, 1991-06-18 (Released:2009-08-24)
参考文献数
46

Abuse of psychostimulants such as methamphetamine by humans leads to psychotic symptoms which are virtually indistinguishable from those of paranoid schizophrenia. A similar progressive augmentation was observed in locomotion and stereotyped behavior of animals receiving chronic administration of methamphetamine. Thus, such behavioral sensitization or reverse tolerance phenomenon has been well established as an animal model of susceptibility to exacerbation of methamphetamine-induced paranoid psychosis and schizophrenia. On the other hand, kindling refers to a phenomenon whereby a progressively increasing epileptiform discharge emerges after repeated electrical stimulation in a limbic area and finally culminates in a generalized seizure. Kindling has been best characterized as a model of human temporal lobe epilepsy. This review summarizes the studies on reverse tolerance and kindling phenomenon so far conducted in our department. Acute exacerbation following a re-challenge of methamphetamine in the methamphetamine-treated animals is associated with enhancement of dopamine release in the striatum. The pharmacological and electrophysioloical studies of kindling revealed cumulative evidence that excitatory amino acids play an important role in the induction mechanism of kindling, but that the seizure triggering mechanism may be related to collapse of inhibitory gamma-aminobutyric acid function. Further studies are necessary to understand these two important phenomena for psychiatry.
著者
山下 悦子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.107-124, 1990-03-10

この論文では、日本の知識人の間で大反響をもたらした、結婚制度にとらわれない男女の自由な性愛関係を理想とするコロンタイの恋愛観を基軸に、一九二〇年代後半から三〇年代前半にかけての知の変容(転向の問題)を探る。
著者
福田 有希子 高月 誠司 三田村 秀雄 大橋 成孝 家田 真樹 三好 俊一郎 小川 聡 坂本 宗久 茅野 眞男 鈴木 亮 佐藤 千恵 黒島 義明 菊野 隆明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.18-23, 2004-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
2

症例は35歳の男性.失神,突然死の家族歴はない.平成15年4月1日午前9時3分頃,通勤途中の電車内で,突然意識消失.駅員が午前9時7分救急隊を要請した.モニター上心室細動(VF)で,救急隊により午前9時15分電気ショックを施行,午前9時24分再度VFとなり,2回めの電気ショックを施行した.その後洞調律を維持し,午前9時45分他院救急救命センターに搬送された.到着時意識レベルは,昏睡状態,JCS300,血圧135/82mmHg,心拍数116/min,洞性頻脈で,瞳孔は3mm大,対光反射を認めず,脳保護のため低体温療法を開始した.復温とともに意識状態は回復し,神経学的にも後遺症を認めなかった.心臓超音波検査,冠動脈造影,アセチルコリン負荷検査を行ったが,異常所見は得られず,当院へ紹介入院した.トレッドミル運動負荷試験,pilsicainide負荷試験では異常所見を認めなかった.6月10日に行った心臓電気生理検査で,Baselineでは不整脈は誘発されなかったが,isoproterenol負荷後の右室期外刺激(400/200ms)で,VFが誘発され,特発性VFと診断し,ICD(植え込み型除細動器)を挿入した.本症例は,医師の指示なく,救急救命士の判断で行った電気的除細動によって一命をとりとめ,さらに社会復帰し得た本邦第1例目の症例であった.

11 11 11 11 OA 労務統計

著者
鉄道大臣官房現業調査課 編
出版者
鉄道大臣官房現業調査課
巻号頁・発行日
vol.昭和7年10月10日現在 第2輯 家賃, 1935
著者
崔 京 蘭 大崎 純 中村 奎吾
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.82, no.737, pp.1137-1143, 2017 (Released:2017-07-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

Recently, a number of designers have focused on free-form surface shell to realize a free architectural form that is different from the analytical curved surface such as cylindrical or spherical surfaces. However, in order to create rational architectural forms, constructability and cost are also essential factors to be considered. Developable surface is a special form of ruled surface generated by continuous movement of the straight line. It can be obtained by adding the condition that the normal vector of the surface does not change along the generating line (generatrix). Because the generatrix is a straight line without torsion, the formwork of continuum shell is easily created. Since the twisting process is not required, it has a high workability characteristics. In this study, several developable surfaces are combined to form a curved roof structure. The (n,1) Bézier surface is used for modeling the surface. Optimization problem is formulated for minimizing the maximum principal stress under several static loading conditions including vertical and horizontal loads. The coordinates of control points of the Bézier surface are chosen as design variables. The developability condition is numerically assigned so that the tangent vectors at the same parameter value of the two Bézier curves along the boundary exist in the same plane as the directing line. The G0 and G1 continuity conditions are assigned for connecting the Bézier surfaces. Optimal solutions are found using nonlinear programming approach, where the sensitivity coefficients are computed by the finite difference approximation. As the result of optimization, a variety of developable surfaces are obtained by connecting Bézier surfaces. Since the control points of the curves are chosen as design variables, the calculation efficiency is high. The stress distribution also greatly improved by using the maximum stress as the objective function.
著者
高槻 成紀 久保薗 昌彦 南 正人
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.87-93, 2014-05-30 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
2

北アメリカからの外来哺乳類であるアライグマは1960年代に日本で逸出し、1980年代以降各地に生息するようになった。アライグマは水生動物群集に影響を及ぼすといわれるが、食性情報は限定的である。原産地では、水生動物も採食するが、哺乳類、穀類、果実なども採食する広食性であることが知られている。横浜市で捕獲された113のアライグマの腸内容物を分析した結果、果実・種子が約半量から50〜75%を占めて最も重要であり、次いで哺乳類(体毛)が10〜15%、植物の葉が5〜20%、昆虫が2〜10%で、そのほかの成分は少なかった。水生動物と同定されるものはごく少なく、魚類が春に頻度3.0%、占有率0.2%、甲殻類が春に頻度3.0%、占有率0.1%、貝類(軟体動物)が夏に頻度3.4%、占有率<0.1%といずれもごく小さい値であった。腸内容物は消化をうけた食物の残滓であることを考慮しても、水生動物が主要な食物であるとは考えにくい。アライグマが水生動物をよく採食し、水生動物群集に強い影響を与えているかどうかは実証的に検討される必要がある。
著者
内藤 可夫
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 電子版 (ISSN:21858373)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.33-44, 2015-03-31 (Released:2018-04-23)

ニーチェは自我概念を批判し、これがそれ自身としての存在者の概念の誤った起源であると洞察した。それは自我概念の解体を意味している。和辻によって人の間の存在として定義された人間は、ニーチェのこの主張を前提にしたものと言える。自我概念はさらに他者の概念に基づけられる。それは発達や脳機能についての検証から言えることである。またこの他者の認知においては自己同一性や普遍性、統一性が認められる。それこそが西洋形而上学の存在概念の基礎的条件である。他者概念はしかし実在に対応するものでなく、有用性を持つ認識機能に過ぎない。ここにニーチェによるプラトニズムに対する徹底的な批判が完結するのということができるだろう。
著者
塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.344-350, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
5

本報告の目的は,限られた介入頻度でも,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を用いた介入の有用性を示すことである.方法は,2事例の事例報告で,介入はそれぞれ2回(約1ヵ月に1回)であり,その前後を比較した.結果は,CO-OPを用いることで,粗大運動および微細運動スキルどちらの課題でも,スキルを獲得することができた.さらに,最小限の介入頻度で,スキルの獲得およびスキルの般化,転移を導く可能性が示唆された.結論として,CO-OPの適応児の選定に検討の必要性はあるが,認知戦略を発見および使用できる子どもに対しては,有効である可能性が示された.
著者
川崎 展 上田 陽一 酒井 昭典 森 俊陽 佐羽内 研 橋本 弘史
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

下垂体後葉ホルモンの一つであるオキシトシン (OXT)は疼痛調整に関与していることが示唆されている。本研究の目的は、OXT-単量体赤色蛍光タンパク1 (mRFP1)トランスジェニックラットを用いて、急性ならびに慢性炎症・疼痛モデルラットを作製し、視床下部・下垂体後葉・脊髄におけるOXT-mRFP1融合遺伝子の発現動態を可視化・定量化し、OXTの役割を検討した。その結果、急性および慢性疼痛・炎症モデルラット、いずれにおいても下垂体後葉系におけるOXTの産生・分泌の亢進および視床下部室傍核-脊髄経路のOXT系が活性化しており、温痛覚の感受性に関わっていることが示唆された。
著者
山本 勝広 大江 透 相原 直彦 鎌倉 史郎 松久 茂久雄 下村 克朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.679-685, 1988-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

迷走神経刺激は心室頻拍には影響を与えないと言われているが,迷走神経の緊張を高める手技や自律神経作働薬にて心室頻拍の停止する例がわずかながら報告されている.我々は,心室頻拍の停止に副交感神経刺激が有効であった3例について検討した.2例は非持続型の心室頻拍,1例は持続型の心室頻拍である.種々の副交感神経刺激手技や副交惑神経刺激薬剤にて心室頻拍は停止した.しかし副交感神経刺激の有効性の機序は迷走神経緊張作用によるものか,交感神経抑制作用によるものか,あるいはこれらの相乗作用によるものか明らかではなかった.また,その心室頻拍の特徴や機序についても検討した.