著者
佐伯 大輔
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.154-169, 2002-03-30 (Released:2017-06-28)

これまで、経済学と心理学は、遅延時間の経過に伴う報酬の価値の減衰を、時間選好または遅延による報酬の価値割引と呼び、この現象の説明を異なる学問的立場から異なる方法論を用いて行ってきた。経済学における初期の研究は、公理的アプローチにより、財消費の現在と未来への合理的配分を表すことのできる指数関数モデルを提案した。しかし、最近の経済学研究は、経済学や心理学における実証的研究の結果から、指数関数モデルでは記述できない逸脱現象を見出し、これらを記述できる新たな割引モデルを提案している。一方、心理学では、ヒトや動物の遅延による価値割引が、指数関数モデルよりも双曲線関数モデルによってうまく記述できることや、収入水準やインフレーションなどの経済学的変数が割引率に関係する事実が明らかになった。今後、仮想報酬間での選択場面を用いてきた経済学の時間選好研究には、実際の選択場面を用いた割引率の測定が求められる。一方、心理学の価値割引研究には、経済学が報告した逸脱現象が、実際の選択場面においても生起するか否かを検討することが求められる。2つの価値割引研究の融合により、この現象のさらなる理解を可能にする学際的研究領域の確立が期待される。
著者
高倉 弘喜
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.126-133, 2015

サイバー攻撃の手法は日々進歩している.従来,サイバー攻撃に使用されるプログラムの開発では,有効性確認のためにインターネット上のコンピュータを無差別に攻撃する試し撃ちが世界中で観測された.それを観測・解析することにより攻撃者が狙っている脆弱性の推定,攻撃プログラムの開発状況を把握し,事前に防御策を講じることも可能であった.しかし,2010年代に入り,攻撃者の目的が愉快犯的なものから機密情報や個人情報など価値のある情報窃取に移行したため,試し撃ちの観測は困難となりつつある.攻撃者は事前の綿密な調査を経て,標的とする組織や人物に特化した攻撃プログラムをインターネット上で試用することなく開発し,対象者のPCに直接感染させ乗っ取ることができるようになった.このため,従来の観測手法ではサイバー攻撃の状況を把握しにくくなっている.この問題に対処するため,組織内ネットワークの通信を監視し,基準を超える異常な通信を見つけ出す手法が求められつつある.
著者
来嶋 洋美 柴原 智代 八田 直美 Hiromi KIJIMA Tomoyo SHIBAHARA Naomi HATTA
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.8, pp.103-117, 2012

国際交流基金ではJF日本語教育スタンダードを教育現場でどう適用するか具現化すると同時に、海外拠点における日本語講座での使用のために、準拠教科書の開発に取り組んでいる。新しい教科書は相互理解のための日本語教育を実践するために、日本語だけでなく異文化理解の学びを取り入れる。学習対象は海外の成人学習者である。JFスタンダードに準拠するために、レベル設定、Can-doによる学習目標、トピック、異文化理解の学習、ポートフォリオを取り入れ、2011年5月には『まるごと-日本のことばと文化- 入門A1』試用版を刊行した。コミュニケーション言語活動中心の「活動編」と、言語能力(語彙、文型など)を中心にした「理解編」、そしてトピック別語彙集で構成される。活動編と理解編は各々主教材として開発したが、トピック構成が共通で、相互補完的にも使用できる。本稿ではその開発の枠組みと内容・構成について報告する。
著者
加藤 慶信
出版者
日経BP社
雑誌
日経Linux (ISSN:13450182)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.46-49, 2011-11

Linuxデスクトップを導入する企業や自治体が増えている。大阪府にある交野市役所と箕面市内の小中学校は、2010年にUbuntuベースのLinuxデスクトップを導入した。Linuxデスクトップをサポートするベンダーがほとんどない状況のなか導入に踏み切った背景と導入時の工夫をリポートする。
著者
岩佐 麻未 高沢 百香 伊藤 晃 牧野 七々美 城 由起子 松原 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.0425, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】疼痛に対する理学療法の有効性に関して1990年代より系統的な取りまとめが各国でなされ,その中でも運動は強く推奨されている。そのエビデンスは,近年の運動による疼痛緩和(exercise-induced hypoalgesia:EIH)に関する報告で示されているが,いずれも高強度・長時間の運動による効果であり(Julie 2010),疼痛患者に処方することは難しい。また,疼痛に対する理学療法を想定すれば低負荷の有酸素運動が適するが,歩行やランニング,自転車運動など有酸素運動の方法による効果の違いは明らかにされていない。一方,これまで我々は3METs程度の歩行,自転車エルゴメーターによる下肢運動,クランクエルゴメーターによる上肢運動の低負荷有酸素運動により広汎なEIHが得られる可能性について報告した(山形2013)。しかし,個人の運動耐性能により身体へ負荷される運動強度は異なることから,運動強度を統一したうえで運動方法の違いによるEIH効果を厳密に比較するまでには至っていない。そこで本研究では,個々の運動耐性能をもとに運動強度を統一し,歩行,下肢運動,上肢運動といった運動方法の違いによるEIH効果について比較検討した。【方法】対象は,健常成人45名(男性22名,女性23名,年齢21.4±0.7歳)とし,全身運動群,下肢運動群,上肢運動群の3群(各群15名)に無作為に振り分けた。全身運動群はトレッドミル(STM-1250,日本光電)による歩行,下肢運動群は自転車エルゴメーター(Ergociser EC-1200,キャットアイ)による下肢ペダリング運動,上肢運動群はクランクエルゴメーター(881E,Monark)による上肢ペダリング運動を各20分間行わせた。また,運動強度は予測最大心拍数を算出し,Karvonen法を用いて40%heart rate reserve(HRR)に設定した。評価項目は,圧痛閾値,心拍変動,および主観的運動強度の指標であるBorg scaleとした。圧痛閾値はデジタルプッシュプルゲージ(RX-20,AIKOH)を用い,僧帽筋,上腕二頭筋,前脛骨筋にて運動前(pre),運動終了直後(post 0)および15分後(post 15)に測定し,pre値で除した変化率を測定値とした。心拍変動は携帯型心拍変動記録装置(AC-301A,GMS)にて心電図を実験中経時的に記録し,心拍数,および心電図R-R間隔の周波数解析から低周波数成分(LF:0.04~0.15 Hz),高周波数成分(HF:0.15~0.40 Hz,副交感神経活動指標)とLF/HF比(LF/HF,交感神経活動指標)を算出し,圧痛閾値の測定に対応した時点のそれぞれ前1分間の平均値を測定値とした。統計学的解析は,経時的変化にはFriedman検定およびTukey-typeの多重比較検定,群間比較にはKruskal-Wallis検定およびDunn's法による多重比較検定を用い,いずれも有意水準は5%とした。【結果】圧痛閾値は,3群とも全ての測定部位にてpreに比べpost 0で上昇し,全身運動群では全ての測定部位,下肢運動群では上腕二頭筋と前脛骨筋,上肢運動群では前脛骨筋でpost 15においても上昇を示した。また,全身運動群は他群に比べ僧帽筋のpost 15で高値を示した。心拍変動は,3群ともpreに比べ運動中にHFが減衰,心拍数とLF/HFが増大し,群間に差はなかった。またBorg scaleも群間に差はなかった。【考察】すべての運動方法で,運動中の心拍数,自律神経活動,主観的疲労感は同程度であったことから,個々に負荷された運動強度は同一であった。運動方法にかかわらず非運動部を含め広汎な痛覚感受性の低下,およびその持続効果を認め,さらにその効果は全身運動で最も顕著であった。有酸素運動に関する先行研究では,60%HRR以上の高強度負荷によりEIHが生じ,さらに30分~2時間の負荷でその効果は大きいとされている(Kodesh 2014, Naugle 2014, Hoffman 2004)。しかし今回,低負荷・短時間の運動であっても,その方法にかかわらずEIHが生じた。さらに,歩行のようなより広範部の運動の方がEIH効果は大きかったことから,有酸素運動のEIHは全身性の運動で効果が増大する可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】有酸素運動は低負荷であっても疼痛を緩和させ,特に,誰もが簡便かつ安全に行える歩行のような全身性の運動がより大きなEIH効果をもたらす可能性が示されたことは,疼痛マネジメントとしての運動療法を確立する一助となる意義深い結果である。
著者
小林 茂人
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.47-51, 2012 (Released:2012-07-27)
参考文献数
10

反応性関節炎とは, 広義には関節以外の部位の微生物感染後におこる無菌性の関節炎である. レンサ球菌感染症に起因する反応性関節炎は海外ではpoststreptococcal reactive arthritisと呼ばれ, リウマチ熱との異同が論議されている. 扁桃炎に続く反応性関節炎の多くはレンサ球菌感染に起因するがレンサ球菌以外の微生物によることも多いので注意する必要がある. 扁桃炎に伴う反応性関節炎の多くは抗生物質治療によって治るが, 関節炎が持続する症例には抗リウマチ剤治療は有効ではなく, 扁桃摘出術によって完治する. つまり, 扁桃の陰窩膿瘍を除去することによって関節炎が治るという「病巣感染」である. このため, 本疾患は「扁桃摘出によって完治する関節炎」として, 耳鼻科医との医療連携においてきわめて重要なリウマチ性疾患である.
著者
石原 久代 伊東 優里
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1001-1010, 2017

<p><tt>高齢女性に合う服装色を検討するために,若年時と高齢時の適合服装色の差異について顔面の加齢再現ソフト「oldify」を用いて研究を行った. 実験は,24 名の若年女性の顔面写真を試料とし,10 形容詞対を用いてSD 法の官能検査を行い,クラスター分析により3 名のモデルを選出した.この3 名の顔面を「oldify」により老けさせ,若年時と高齢時の顔面に8 色の服装をCGで合成させ48 試料を作成した.この試料を用いて前記と同様のSD法で実験を行い,併せて見た目年齢を問う調査を行った. その結果,3 名とも特に高彩度の赤の服装色で若年時と高齢時の印象差が大きかった.着装イメージの因子分析では,若年時,高齢時とも活動性と評価性の2 因子が抽出され,活動性の因子には赤,評価性の因子には高明度色が影響することが判明した.また,視覚的年齢評価では高彩度の青,白,高明度赤が若く,黒,暗い赤,暗い青が高齢に見えることが判明した</tt><tt>.</tt></p>
著者
山口 あゆみ 橋本 公男 松原 薫 蒔田 愛
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.24-30, 2019

<p>顔立ちや表情がその人の印象形成に影響することは当然ながら,われわれは顔の肌質感も印象を決める重要な要素と考えている。今回は,ミドルエイジ男性が年齢は相応でも若々しい印象に見られたい意識があることに着目し,若々しさ印象の要因を探ることを試みた。見た目年齢は「シワ」の評価スコアとの関連が確認できた一方,若々しい印象スコアは,「シミ」,「くすみ」,「血色」の評価スコアと関連することがわかった。さらに視線解析結果より,見た目年齢評価時に比べ若々しい印象評価時に視線滞在時間が最も長かった部位は,肌質が顕著に現れやすいほほの部分であった。モデル乳液を連用すると,肌をよく観察できる条件である近距離でのみ若々しい印象がアップした結果が得られた。若いときと比べて肌の変化が顕著に起こっているミドルエイジ男性にとって,日々のスキンケアは年齢相応でありながら若々しい印象を作り出せる有効な手段であるといえる。</p>
著者
FUJIE Ryo ODAGAKI Takashi
出版者
The Physical Society of Japan
雑誌
J Phys Soc Jpn (ISSN:00319015)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.124802-124802-5, 2011-12-15

The aim of this paper is to understand the condition of emergence of social hierarchy in a competitive society. We introduce a minimal model which incorporates cost for participating in fighting in order to understand effects of the difference between the gain for a winner and the loss for a loser. We show numerically and analytically that phase transition from an egalitarian state to hierarchical states occurs in two steps as the frequency of fighting is increased for any value of cost except when the reward is equal to the cost or to twice of the cost, and when no cost is required. Furthermore, we determine the phase diagram consisting of one egalitarian phase and three distinct hierarchical phases in the parameter space of the cost and the frequency of fighting.
著者
村上 陽介
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.p178-189, 1978
著者
村田 伸 中野 英樹 安彦 鉄平 岩瀬 弘明 豊西 孝嘉 松倉 祥子 児島 諒
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.109-113, 2017

<p>本研究は,開発した下肢がむくみ難いパンプス(開発パンプス)を紹介するとともに,そのむくみ抑制効果について検証した。方法は,開発パンプスと一般パンプスを交互に履くクロスオーバーデザインを採用し,かつそれぞれのパンプスが対象者に分からないようブラインド化して効果を検証した。なお,下肢のむくみは下肢容積を水置換法によって計測することで判定した。対象とした女子大学生12名両下肢24肢の登校時と下校時の下肢容積変化量を比較した結果,開発パンプス装着日は-15.4±19.5ml,一般パンプス装着日は41.7±14.0ml であり,有意差(p<0.05)が認められ,開発パンプス装着日の下肢容積の減少が確認された。このことから,開発パンプスの下肢のむくみに対する一定の抑制効果が確認された。</p>
著者
谷口 倫一郎 大田友一 美濃導彦 石黒 浩 桑島 茂純 和田 俊和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.2, pp.85-87, 2002-01-17

「大量カメラを用いなければ得られない情報とは何か」、「大量カメラを用いたシステムにおいて通信が果たす役割」、「大量カメラを用いたシステムの今後の展望」などのテーマについて各パネラーの意見を述べ、これをもとにして「大量カメラとネットワーク」の今後について展望する。In this panel, we will discuss varieties of topics, e.g.,``What is the intrinsic information obtained only by mass-camera system?'', ``What is the role of `communication' in mass-camera system?'', ``Future systems based on mass-camera''. Through the discussions, we hope to have a vision of the future in this research field.