著者
水島 淳
出版者
心の科学の基礎論研究会
雑誌
こころの科学とエピステモロジー (ISSN:24362131)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.21-44, 2023-05-15 (Released:2023-06-02)

本論文は、反出生主義の精緻化を目指し、その上で切り捨てられることになる感情、特に〈生まれてこない方がよかった〉に注目し、そのケアも同時に目指したものである。反出生主義を「人間、場合によってはすべての有感生物から苦痛を取り除く思想」とし、現代反出生主義が感情の範疇である可能性と理性と論理だけで組み上げた反出生主義の冷酷さ示す。そして理性によって退けられる感情である〈生まれてこない方がよかった〉を3つの視点からケアする道を探っていく。その3つの視点とは「基本的自尊感情」、「いるからいる」、「死にたい」へのケア方法の応用である。
著者
加藤 憲一 宮沢 篤生 高瀬 眞理子 東 みなみ 大塚 康平 江畑 晶夫 寺田 知正 長谷部 義幸 清水 武 水野 克己
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.373-379, 2023 (Released:2024-01-25)
参考文献数
24

動脈管早期閉鎖(premature closure of ductus arteriosus:PCDA)の原因として母体への非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti- inflammatory drugs:NSAIDs)が知られているが,近年ポリフェノールも原因となることが報告されている.ポリフェノール含有飲料が原因と思われるPCDAが疑われた1例を経験した.症例は在胎37週3日,2,730gで出生した一絨毛膜二羊膜双胎第2子.生後2時間から酸素化不良を認め,その後も酸素需要が続くため日齢1にNICUに入室した.胸部X線,12誘導心電図で右室肥大が認められ,心エコー図では動脈管閉鎖,心室中隔の平坦化,心房間の右左短絡が認められ,PCDAが疑われた.妊娠中にNSAIDsの服用はなかった.あずき茶とルイボスティーを連日飲用していたことが判明し,PCDAの原因としてこれらに含有されるポリフェノールの影響が疑われた.ポリフェノールはさまざまな食品に含まれており,一般的に健康に良いものと認知されているが,妊娠中の摂取について注意喚起が必要である.
著者
五十嵐 彰
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.185-196, 2018-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
41

配偶者とのみ性的関係をもつ,いわゆる「不倫」の禁止は現代の結婚制度の根幹を支える要素のひとつといえる.しかしながら,では誰が「不倫」をするのかを明らかにした日本の研究はほぼ見当たらない.本稿では日本における「不倫」行動の規定要因を機会および夫婦間関係のフレームワークを用いて検討した.分析結果から,労働時間や夫婦間関係の親密さ(会話頻度,セックスの頻度),子どもの数は「不倫」行動の発生に効果を与えないことが示された.男女ともに効果のある変数は学歴であり,高学歴になればより「不倫」しなくなるといえる.男性のみに効果のある変数は収入および妻との収入差であった.男性は収入が上がれば,また妻の方が収入が高ければ「不倫」するようになるといえる.
著者
南学 正仁
出版者
心の科学の基礎論研究会
雑誌
こころの科学とエピステモロジー (ISSN:24362131)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.12-20, 2023-05-15 (Released:2023-06-02)

Imagine a situation in which a patient asks a doctor “Why must I die?” and the doctor stands there stunned. Physicist Schrödinger claimed that scientists unconsciously put “I” as the subject of recognition outside the objective world. Both doctor and patient put “I” as the subject of recognition outside the objective world. In medicine as a science, doctors eliminate the fact that each patient is “I” for himself. Also, doctor puts himself outside the objective world and thinks as if he himself will not die. By doing so, doctors can continue their clinical practice in which they get close to people’s death. On the other hand, patients spend their days as if they will not die, by putting “I” outside the objective world.
著者
内田 良 長谷川 哲也 上地 香杜
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.422-434, 2023 (Released:2023-12-13)
参考文献数
30

本研究の目的は、公共図書館をだれが利用しているのか、またそれはだれに利用されるべきと考えられているのかについて、平等利用の観点から大規模ウェブ調査の分析をもとに検証することである。分析の知見は次のとおりである。第一に、図書館利用には学歴がもっとも強い影響力をもっていた。第二に、非大卒者よりも大卒者のほうが、また滞在型の新しいサービスへの期待度が高い者のほうが、利他的に公共図書館の存在意義を重視していた。
著者
松山 博幸
出版者
日本応用経済学会
雑誌
応用経済学研究 (ISSN:18829562)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.45-68, 2021-02-25 (Released:2023-08-21)

芸術競技において審査過程の公平性を確保することは重要な課題である.本論文では,審査結果に意図せざる形で偏りが存在しているか否か,存在するとしたらどの程度影響を与えているのか,という問いに対して全日本吹奏楽コンクールを事例として分析を行った.分析の結果,演奏順が後ろであればあるほど有利であるという “overall order bias” と,一つ前の演奏団体のパフォーマンスから影響を受ける “sequential order bias” が存在することが示された.
著者
喜多 一 森村 吉貴 岡本 雅子
巻号頁・発行日
pp.1-239, 2021-10-08

本書は京都大学の全学共通科目として実施されるプログラミング演習(Python)の教科書として作成されたものです.
著者
小森 日菜子 小林 さやか 川田 伸一郎
出版者
独立行政法人 国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館研究報告A類(動物学) (ISSN:18819052)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.33-48, 2024-02-22 (Released:2024-02-22)
参考文献数
65

A mounted skin of unknown species belonging to genus Canis deposited in the National Museum of Nature and Science, Tokyo (NSMT) is certificated morphologically and bibliographically. The specimen label is described as ‘a kind of Yamainu’ and M831 of the Tokyo Imperial Household Museum collection, while the specimen catalog says that M831 was derived from an individual kept at Ueno Zoo and that it was disposed of after. This specimen seemed to be confused with another one. So, we examined the morphological characteristics of this specimen and traced the history of Canis sp. specimens of the Tokyo Imperial Household Museum collection and Canis sp. kept at Ueno Zoo. As a result, measurements of this mounted skin were reasonable to be within the range of specimens previously identified as Japanese wolves. We confirmed that this specimen is correctly labeled as M831. This specimen M831 was considered to be one of two wolves that arrived at Ueno Zoo from Iwate Prefecture, Japan, in 1888. Therefore, it is thought that this specimen is a Japanese wolf. This study may have revealed a new Japanese wolf skin specimen that had previously been overlooked.
著者
今福 輪太郎
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-002, 2021 (Released:2021-03-23)
参考文献数
15

質的研究の目的は,研究対象となる当事者の視点から見える事象や人々との関わり,その人の心情などの内面的世界を理解することにあり,事実に対する「良い」「悪い」の評価基準は保留することが重要である.医療者教育の分野においても質的研究への関心が高まり,質的研究を「やってみよう」「やってみたい」と思う人が増えてきている.しかしながら,それに比例して,「どんなリサーチ・クエスチョンを立てたらいいのか」「何人からデータを収集すればいいのか」「数値に表しきれない膨大なデータが蓄積されていくだけでこの先どうすればいいのか」「分析手順がわからない」など,質的研究を始めてはみたものの壁にぶつかる人も多くいるだろう.本稿では,質的研究を実施する中でしばしば生じる疑問に答えながら,質的研究の位置づけや目指すものを整理し,その基本理念や方略について考察していく.
著者
越後 宏紀 呉 健朗 新井 貴紘 富永 詩音 小林 稔
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.86-95, 2023-01-15

CG技術の発達により,配信者は顔出しをせずに2D CGまたは3D CGのアバタを利用して配信を行うことが可能となっている.アバタを利用した配信者,すなわちVTuberはCG技術の発達とともに活動の幅が広がっており,顔を出して配信しているYouTuberと遜色がなくなってきている.動画配信サイトでは様々な動画カテゴリが存在するが,動画カテゴリ別によるYouTuberとVTuberの配信スタイルに対する視聴者の印象の違いについてはこれまでほとんど調査されてきていない.そこで本論文では,実写の顔出しの動画と2D CGアバタ,3D CGアバタを利用した動画を用意し,視聴者の印象の違いを調査した.比較実験を行い,動画カテゴリによって配信スタイルに対する視聴者の印象が異なることを確認した.
著者
今福 輪太郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.053-060, 2019-02-25 (Released:2019-08-05)
参考文献数
41

医学教育研究は, 採用する理論的枠組みや理論的考察を記述することが国際的に求められてきている. 本稿では, その理論の選定や研究手法の決定の前段階にある「真実の在りか (存在論) 」「現実のとらえ方 (認識論) 」「現実へのアプローチの仕方 (方法論) 」といった哲学的前提の検討や研究パラダイムの明確化に焦点を絞り, そこからどのように体系的に研究をデザインしていけばいいのかを概説する. 「哲学的前提-研究パラダイム・理論-方法論-研究手法」の流れを意識することで, 研究計画に一貫性を持たせ, 分析結果から実践的な示唆だけでなく理論的な貢献ができるようになると考える.

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著者
柳田 國男
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.125-135, 1927-04-25 (Released:2010-06-28)
被引用文献数
1