著者
今野 幹男 長尾 大輔
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

磁性ナノ粒子(マグネタイト)とシリカを均一に複合化することで、電場と磁場の両者に迅速に応答する単分散な複合粒子を合成した。複合粒子の合成過程では、磁性ナノ粒子をシリカ粒子表面に均一に担持した後に、粒子表面を別のシリカで薄く被覆した。このシリカ被覆により、複合粒子が水溶液でも均一に分散するようになった。さらに、複合粒子の集積状態を光学顕微鏡で容易に観察できるように、複合粒子をミクロンサイズまで大粒径化した。この複合粒子の懸濁液に電場を印加したところ、複合粒子は電場印加方向に対して平行な鎖状構造を形成した。磁場を印加した場合も、類似の鎖状構造を形成した。これらの外場下で形成される複合粒子の鎖は、いずれの外場印加に対してもその強度とともに伸長した。さらに、磁場と電場を互いに直交方向に印加した場合は、複合粒子がヘキサゴナル型に配列したシート状構造体を形成した。このような外場印加を雪だるま型の複合粒子に対しても行った。磁性ナノ粒子を含む雪だるま型粒子に磁場を印加したところ、磁性成分を含む雪だるまの頭部が印加磁場方向に対して並んだ構造を示した。一方、電場作用下での雪だるま複合粒子は、印加方向に対して粒子長軸を平行に向けた鎖状構造を形成した。さらに、磁場と電場の両者を同一方向に印加した場合は、雪だるま粒子の頭部を一方向に向けて配列した構造も観察することができた。これらの結果から、電場および磁場を複合的に利用することで、異方性粒子の配向性も制御できることを示した。