著者
佐久間 重
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-21, 2003-04-01

異文化コミュニケーションに於いては言語が非常に重要な役割を果たすが,そのことを強調すると言語以外の要素が隅に追いやられてしまうことがある.そのために,言語面での意思の疎通は出来ていても,コミュニケーションが全体として不成功に終わることがある.そこで,本論では,言語以外に,異文化コミュニケーションで必要な要素として,(i)メッセージの速度,(ii)コンテクスト,(iii)空間,(iv)時間,(v)情報の流れ,(vi)行動連鎖,(vii)インターフェースなどを取り上げることにした.これらの概念は,文化人類学者である,エドワード・ホール及び彼の妻のミルドゥレッド・ホールが提示しているもので,本論の説明は彼らのものに依拠している.世界の文化は,ロー・コンテクストとハイ・コンテクストの文化に大別できる.人間関係や情報を区分化しているのがロー・コンテクストの文化で,ゲルマン系(アングロ・サクソン系を含む)や北欧系の文化がそれに当たる.他方,日常から人間関係を幅広くし,情報を多く持っているのがハイ・コンテクストの文化で,ラテン系や日本の文化がその代表である.このような二つの文化の間でコミュニケーションがなされる場合には,それぞれの文化の特徴を理解し,それに適応したメッセージのやり取りをしなければならない.また,時間の捉え方でも世界の文化を単時系と複時系に大別できる.概ね単時系の文化はロー・コンテクストの文化に対応し,複時系の文化はハイ・コンテクストの文化に対応する.本論では,こうした文化的な特性を理解することが異文化コミュニケーションを円滑に進めることが出来ると言う視点に立ち,文化を特徴付ける主要な概念を説明し,異文化を結びつけること(interfacing)の重要性について論じた.
著者
佐久間 重
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.49-58, 2014-03-31

本論は,ラインホールド・ニーバーが彼の著作『人間の本性と運命』の中で歴史の終わりをどのように解釈しているかを詳述したものである.ニーバーの解釈を通じて,キリスト者にとっては歴史がどのように捉えられるのかを明らかにすることを狙いとしている.ニーバーは,歴史の終わりを終末と目標という視点で捉え,終末の時点で目標を達しているか,つまり,歴史が達成されていることとはどういう事かを論じる.ニーバーによると,人間は精神的に自由であり,理知的であるために,歴史を成就できると考えがちであるが,実際には成就できない.人間のそうした未完成の部分を神の力で完成させ,人間の罪を神の審判により浄化することにより歴史は成就されることになる.ニーバーの結論は,人間の運命についての知恵は,人間が自分の知識や力の限界を謙虚に認識できるかに依存しているということである
著者
兒玉 直紀 築山 能大 有馬 太郎 市川 哲雄 窪木 拓男 佐久間 重光 新谷 明喜 高津 匡樹 津賀 一弘 坪井 明人 中野 雅徳 成田 紀之 波多野 泰夫 藤澤 政紀 船登 雅彦 鱒見 進一 松香 芳三 皆木 省吾
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.222-227, 2009 (Released:2012-03-29)
参考文献数
8

目的:顎関節症患者に対する受診ごとの診療時間に関する報告はない。今回,大学病院顎関節症外来ならびに一般開業歯科医院を対象に顎関節症のスプリント治療に要する時間について調査を行い,その特性を明らかにすることを目的とした。 方法:大学病院顎関節症外来14施設および一般開業歯科医院33施設にて2か月間の調査を行った。スプリント治療を選択された顎関節症患者を対象に,スプリントの種類,各診療内容および要した時間を調査項目として施設間で比較検討した。 結果:1回当たりの診療時間に関して,大学病院顎関節症外来受診患者(以下,大学群と略す)のほうが一般開業歯科医院受診患者(以下,開業医群と略す)に比べて有意に長かった。また,初診時の診療時間についても大学群のほうが開業医群に比べて長い時間を要した。しかし,スプリント装着および調整に要する時間について有意差は認められなかった。 結論:顎関節症患者の1回当たりの診療に要する時間は両施設ともに比較的長時間であることがわかった。スプリント装着に30分以上要する割合は大学群においては44%であり,開業医群においては22%であった。スプリント調整に20分以上要する割合は,大学群においては48%であり,開業医群においては33%であった。
著者
佐久間 重
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.33-42, 2013-03-31

本論は,ラインホールド・ニーバーが彼の著作『人間の本性と運命』の中で正義をどのように解釈しているかを詳述したものである.ニーバーの解釈を通じて,キリスト者は社会的正義をどのように捉えているかを明らかにすることを狙いとしている.ニーバーは,歴史的状況の中で人間が正義を実現するための手段や,正義が確立した理想的な社会を提示することはない.社会の中で同胞愛の理想を求めながらも,歴史から戦争や悪政を取り除くのは不可能であるとしても,より高度の正義の実現に努力することが重要であるとしている.ニーバーにとって,正義の樹立に近づける現実的な状況が諸勢力の均衡状態である.
著者
山口 賀大 佐久間 重光 遠渡 将輝 坂口 晃平 田口 慧 小林 里奈 足立 充 伊藤 裕 田口 望 日比 英晴
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.126-134, 2016-08-20 (Released:2016-10-14)
参考文献数
34

運動療法は,施術直後より関節可動域を増大し,疼痛を早期に軽減させ病悩期間を短縮するものの,その効果について定量的な評価を行った研究は少ない。本研究では,術者が行う顎関節可動化療法と患者が行う自己牽引療法を1つの運動療法プログラムとして捉え,非復位性関節円板前方転位症例に実施した際の短期的治療効果を検討した。顎関節機能に中等度以上の障害が認められた45例を対象として運動療法を施行し,初診時とその約2週間後の初回再来時における臨床症状(最大開口域,安静時痛,開閉口時痛,咀嚼時痛および日常生活支障度)について評価した。その結果,最大開口域,開閉口時痛,咀嚼時痛および日常生活支障度において有意な改善を認めた(p<0.001)。これら症状の改善は,運動療法により関節可動域が改善され,関節腔が拡大されることで下顎頭の動きが改善したものと考える。したがって,本運動療法プログラムは,非復位性関節円板前方転位に伴う諸症状を短期間に軽減させる有効な保存療法になる可能性が示唆された。
著者
佐久間 重
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.55-61, 2010-03-31

本論は,ラインホールド・ニーバーが彼の著作『人間の本性と運命』の中で展開しているキリスト者としての近代文化の捉え方を詳述したものである.ニーバーの解釈を見ると,ルネサンスや宗教改革についての一般的な解釈とは異なった,キリスト者の解釈が鮮明になる.ニーバーは,宗教改革の思想に対してルネサンスの思想が圧倒する形で近代文化が成立したが,近代文化の中には中世以来の聖書的な視点が連綿として続いていることを明らかにしている.つまり,精神運動としてのルネサンスは,人間の無限の可能性を肯定し,歴史に意味があるという概念を再発見することであったが,個人や歴史の成就というルネサンスの概念は,古典思想や中世のカトリックの合理主義に遡ることが出来る.これは,カトリック的神秘主義や修道院の完全さを求める姿勢の中に表されていた.こうした思想がプロテスタントの敬虔主義や近代の進歩思想の基礎となった.また,近代の進歩思想には,聖書の終末論にある希望が大きな影響を与えたが,20世紀に入り進歩思想の限界が明らかになり,思想的混迷が生じており,これを打破するにはルネサンス思想と宗教改革の思想を弁証法的に再検討する必要がある,とニーバーは述べている.
著者
佐久間 重
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.9-14, 2001-04-01

21世紀を迎え,20世紀を様々な角度から振り返る試みが行われているが,本稿では,20世紀においてキリスト教が欧米社会の中でどのような展開をしたのかを考察することにする.欧米社会の中で,信仰と言う面ではキリスト教の力が衰退してきていることは否定できないであろう.このことは,日曜日毎に教会に行く人の数の減少によっても明らかである.それでも,欧米社会にキリスト教の精神的・物理的遺産は確固として残っている.一神教であるキリスト教の下で,欧米人は一つの尺度で明確な善悪の判断をする価値観を身に付けた.この価値観の下では曖味な領域は排除される.ここでの最大の課題は,この絶対的だとされる尺度が欧米人以外にも合理性を有するかである.産業革命以降,欧米社会が物質的に他の地域を圧倒したために,欧米の価値観で他の地域の問題が判断された.さらには,欧米の価値観が普遍的なもので,他の地域の人々も受容するものであると考える人が多くなった.こうした姿勢は20世紀中間ぐらいまで続いたが,1960年代以降,欧米社会の中に欧米社会が持つ優越性の自負について疑問視する人達が出てきてから,他の社会の価値観にも注意が払われるようになった.この時期は,欧米社会においてキリスト教の影響力が後退していった時期と重なり合う.こうしたキリスト教の20世紀における欧米社会での展開を概観した後、21世紀にはキリスト教がどのような課題を持っているかを考察することにする.