著者
前野 みち子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、中世において恋愛と奢侈とモラルの結節点となった悪徳の寓意〈ルクスリア〉が、中世的寓意思考に大きな影響を与えた『プシコマキア』の挿絵入り写本を介して文学、教会彫刻、説教などに流れ込み、十二・三世紀の商業都市の興隆を背景に市民への戒めや芸術創造の動機として機能したことを明らかにするとともに、この現象が同時代の恋愛と奢侈を代表していた宮廷文化とどのように関わり、どのようにその関係を変容させていったのかについて考察した。