著者
加藤 征史郎 土井 守 楠 比呂志
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

世界自然保護連合が危急種に指定し、ワシントン条約では付属書Iに記載されるチーター(Acinonyx jubatus)は、ネコ科の野生動物の中では飼育下での自然繁殖が難しいと言われている。本研究の目的は、家畜などで確立された種々の研究手技を用いてチーターの飼育下個体の繁殖生理を明らかにするとともに、その人工繁殖技術を開発することにある。姫路セントラルパーク、姫路市立動物園、群馬サファリバーク、アドベンチャーワールドおよび浜松市動物園などの協力のもと、雄19頭、雌19頭,合計38頭のチーターを材料に用いて、当該研究期間に得られた主な研究成果は以下の通りである。1. チーターの精液性状は劣悪で、特に形態異常精子率が高いことが判明した。2. 精子の先体染色法にはナフトールイエローS・エリスロシンB染色が適当であった。3. 精子の保存用希釈液には、TEST-yolk液が米国で使用されているラクトース液(PDV)よりも好適であった。4. 雌の血中プロジェステロンは、9〜12週間隔で周期的に変動することを明らかにした。5. 妊娠判定に、腟スメア検査が有用である可能性を示唆した。6. 卵胞発育と排卵の誘起に、PMSGとhCGの投与が有効であることを、腹腔鏡下での観察により明らかにした。7. 子宮角内への精子注入カテーテルの非外科的経腟挿入を試みたが、子宮頸管より奥への挿入は物理的に困難であった。8. 卵核胞期の未熟卵母細胞は、低率ながら第一成熟分裂終期まで体外成熟できる可能性が示唆された。