著者
古家 泰三
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-134, 1990-04-15 (Released:2017-10-04)

この究明を通じて,日本の火災統計のうちで,「死因別の火災による死者数の推移」は,その集計過程に問題点があると指摘した, この分析結果から,焼死者発生の問題点は,集積した易燃性可燃物の急激な延焼拡大である.建物内に合板内装材,プラスチック,紙類,繊維類が集積していると,これらに火源から着火して急激に拡大 する。 このような急激な延焼拡大は,必然的に酸素不足の不完全燃焼になるので,出火建物内に高濃度の一酸化炭素を含んだ煙が充満する。この煙に取りまかれた滞在者は,短時問でCO中毒になり,行動不能 で倒れ,避難することができなくなる. この事例研究から,火災による死者発生要因を究明するうえで,消防が行う火災原因調査事務は,重要な役割を果たすことができる、そのためには,調査過程では監察医による死体検案結果をぜひとも参考にすべきである.また,焼死者の煙中における,短時間での行動不能原因についても,究明されるべ きである.