著者
平田 オリザ 石黒 浩 橋本 慎吾 吉川 雄一郎 宮下 敬宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,現代口語演劇理論に基づき,人間型ロボットやアンドロイド(人間と同じ見かけを持つロボット)を人間の俳優とともに役者として演劇に登場させる「ロボット演劇」の創作を通じ,特定のシーンにおいてロボットが人と関わる振舞を実現する枠組みを構築した.期間内に国内26件,国外31件(15カ国)の公演を成功させ,聴衆を対象とした大規模かつ文化比較的なアンケート調査により,提案する枠組みにより親和的なロボットの振舞が実現できることを確かめた.また実現された演出事例の分析から,ロボットの振舞のルールが抽出できることを示し,その効果を確かめた.
著者
坊農 真弓 吉川 雄一郎 石黒 浩 平田 オリザ
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.326-335, 2014-04-01 (Released:2014-04-01)
参考文献数
42

人間の「社会性」とは何か.この問いに対し,ロボット・アンドロイド演劇プロジェクトは一つの答えを示してくれる可能性がある.本解説記事では,まず本プロジェクトの経緯と背景を説明する(2.).次に,ロボット・アンドロイド演劇をエスノグラフィ及び会話分析することの意味を,演出場面に実際の起こったやりとりの事例分析に基づいて明らかにする(3.).続いて,ロボット・アンドロイド演劇のロボット工学・認知科学における意味を,制作の実態と世界公演に対する評価などから議論する(4.).最後に,ロボット・アンドロイド演劇の演劇としての意味を,社会におけるこの試みの位置付けを明らかにすることから考察する(5.).
著者
植田 智之 中西 惇也 伴 碧 倉本 到 馬場 惇 吉川 雄一郎 石黒 浩
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.227-238, 2021-05-25 (Released:2021-05-25)
参考文献数
14

Experimental tasks depicting a bullying scene are being studied to elucidate the causes of bullying and to verify methods for resolving bullying. Bullying involves not only victims, bullies, reinforcers, who are complicit in the bullying, and defenders, who mediate the bullying, but also bystanders, who ignore the bullying. Bystanders comprise the largest group involved in bullying and can play an important role in resolving bullying. However, in previous experimental tasks depicting a bullying scene, participants could not perceive bystanders’ behavior as different from the behaviors of the victim or bully. The present study aimed to contribute to the development of solutions to bullying by creating experimental tasks, including a measurable behavior representing bystanders. In this research, we introduced a new option of behavior representing bystanders in a “catch-ball task” that can express the reinforcing and defending behavior in a bullying scene. Results of our questionnaire survey showed that the newly implemented behavior representing bystanders was perceived as bystander’s behavior by participants. Moreover, according to the results of another questionnaire survey, the improved experimental tasks with one bystander were perceived to be closer to a bullying scene compared with previous catch-ball tasks.
著者
植田 智之 中西 惇也 倉本 到 馬場 惇 吉川 雄一郎 小川 浩平 石黒 浩
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2019-HCI-184, no.16, pp.1-8, 2019-07-15

いじめにおいて,傍観者はいじめを止めたいという道徳観を持ちながらも,いじめに巻きこまれる懸念や気恥ずかしさといった理由から,積極的に仲裁を行わないという問題がある.そこで,チャットグループ内の一人の傍観者を装ってチャットボットが仲裁する発言を代替し,装われた傍観者に半強制的に仲裁を行わせる手法を提案する.これにより,仲裁を装われた傍観者に仲裁者としての自らの役割を半強制的に自覚させる効果が期待される.この効果を検証するため,被害者に協力する仲裁行動,被害者を攻撃する加担行動の両方を被験者が自由に取ることができるシステムを作成し実験を行った.提案手法により被験者の仲裁行動が増加し,加担行動が抑制する様子が観察された.このことから,チャットボットが仲裁を装うことで被験者に仲裁をする役目を自覚させ,いじめを縮退させる行動へ誘導できると考えられる.
著者
島谷 二郎 Palinko Oskar 吉川 雄一郎 陣内 寛大 小川 浩平 石黒 浩
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.369-380, 2020-11-25 (Released:2020-11-25)
参考文献数
24

During classroom-type lectures, some students feel difficulty in asking questions, although it is considered to improve the lecture quality and students’ understanding. We propose a system called Robot-Assisted Questioning System (RAQS) that can promote teacher-student communication in the lecture. It allows students to post questions and opinions on an online messaging interface. The messages were sent to a robot to be posed to the teacher, with or without the voting procedure. In this paper, we report a case study of the field experiment in a lecture which was assisted by RAQS. Students found RAQS efficient and useful for improving their communication with the teacher. For the practical use, the results suggest a future improvement of the system to add the function for controlling the number of robot utterance to avoid interference with the teaching process.
著者
石黒 浩 中村 泰 西尾 修一 宮下 敬宏 吉川 雄一郎 神田 崇行 板倉 昭二 平田 オリザ 開 一夫 石井 カルロス寿憲 小川 浩平
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人と関わるロボットの自律動作と遠隔操作の機能を統合することで,人間やロボットが存在する社会的で現実的な場面において, 発話やジェスチャーなどの社会的振る舞いを行い, 社会に参加できるロボットシステムの実現を目指すとともに, 社会的な対話の認知心理学的な理解とモデリングに取り組んだ.今年度は, 以上の取り組みを開始したところであったが, 本提案をさらに発展させた, 人間に酷似したロボットであるアンドロイドの機構の改良や BMI の導入を含む基盤研究 S "人のような存在感を持つ半自律遠隔操作型アンドロイドの研究" が採択されたため,5月31日をもって,本研究課題を廃止し, 基盤研究 S の一部として研究を推進している.本研究課題実施時の具体的な研究内容としては, 1. 対人状況における注意制御機能と遠隔操作機能の統合の一部として, 学習アルゴリズムに基づくロボットの自律制御に関する研究, 及び, 2. 社会的状況における対話の認知科学的モデル化の研究の一部として, ロボット演劇中のロボットが人にアプローチするシーンの演出データからの社会的振る舞いの抽出に取り組んだ.現在, 基盤研究 S として, 物理的なインタラクションをも自然にするための電磁リニアアクチュエータを用いたアンドロイドの開発,複数人による雑談などの具体的な社会的状況における対話とそれに伴う行動の記録と分析に基づく対話モデルの構築や, 遠隔操作の記録を基にしたアンドロイドの自律化に取り組んでおり, 今後,行う予定のブレインマシンインターフェースによる遠隔制御の導入などとともに, 人との多様な相互作用を行うアンドロイドの開発, 社会的存在としての機能の実現, 現実社会におけるアンドロイドの社会参加の実現に取り組む.
著者
吉川 雄一郎 浅田 稔
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.231-236, 2009 (Released:2016-04-19)
参考文献数
26

ヒトの乳児は周りの大人とのどのような相互作用を通じて,またどのような仕組みで,大人が話す言葉を獲得するのか.本稿では,この問題に対して,従来の観察に基づくアプローチを補うことが期待されている認知発達ロボティクスでの取り組みを取り上げる.はじめに,親との相互模倣を通じて乳児が母音を獲得していく過程を構成する研究について紹介し,親が乳児を模倣することの役割と仕組みについて議論する.次に,乳児に対する物の提示や物の名前の教示などの働きかけを含む,より自然な養育者の振る舞いのもとで音声模倣および語彙を獲得する過程を構成する研究を紹介し,これらの共発達を可能にする仕組みについて議論する.
著者
高橋 英之 伴 碧 近江 奈帆子 上田 隆太 香川 早苗 石原 尚 中村 泰 吉川 雄一郎 石黒 浩
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2019-HCI-181, no.13, pp.1-7, 2019-01-14

心に働きかけることで,人間の暮らしを豊かにするヒューマンエージェントインタラクションの研究が多数行われている.一方で既存の研究は,ユーザーとエージェントとが特定の状況で短時間だけ相互作用することを想定する場面設定が殆どであり,従来のエージェントを長時間使用した際には,かえってユーザーがその存在に飽きてしまったり,“あざとさ”を感じてしまったりするリスクがある.本稿では,五感刺激を組み合わせて空間に提示するシステムとロボットを連動させることで,心に持続的に影響を与える続ける空気感エージェントのデザイン原理とそれに期待される価値についての議論を行う.
著者
石黒 浩 開 一夫 板倉 昭二 西尾 修一 宮下 敬宏 神田 崇之 中西 英之 中村 泰 吉川 雄一郎 松本 吉央
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、 人間に酷似した遠隔操作型アンドロイドのシステムを開発し、実験室実験と実環境における実証実験により、その効果を確かめた。特に、遠隔操作する操作者と、 アンドロイドと関わる訪問者の双方がアンドロイドシステムに適応できることを、認知科学的・脳科学的に確かめた。また、得られた知見を基に、人と親和的に関わることができる遠隔操作型アンドロイドのミニマルデザインを考案し、その効果を確かめた。
著者
杉山 弘晃 目黒 豊美 吉川 雄一郎 大和 淳司
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

現在の雑談対話システムでは、雑談で観測される幅広い話題の間の連続性を正しく認識することが容易でないため、文脈とつながらない話題を発話し対話を破綻させてしまう問題がある。一方、ロボットを複数体化することで、ユーザ発話中の話題に対する応答義務が緩和されるため、話題の連続性に対する要求を低減させ、破綻を回避できると予想される。本研究では、このロボット複数体化による対話破綻回避効果について分析を行う。
著者
飯尾 尊優 吉川 雄一郎 石黒 浩
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

ロボットの複数体化により子供に高度な対話感を与えることによって,子供の学びがより促進されるのではないかという仮説を検証するため,複数ロボット対話システムを構築し,複数ロボットとの対話と単体ロボットとの対話の影響を比較する実験を行った.その結果,被験者は複数のロボットとの対話の方が,ロボットが被験者の意見を正しく理解し,ロボットの対話で分からない部分が少なく,勉強になったと感じたことを明らかにした.
著者
中野 吏 吉川 雄一郎 浅田 稔 石黒 浩
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.814-822, 2011 (Released:2011-11-15)
参考文献数
26

In this paper, we propose a method for simultaneous learning of multi-modules for joint attention: gaze-driven attention and word-driven attention. Inspired from child language acquisition, mutually exclusivity bias is utilized for mutual facilitative learning both in an intra- and inter-module manner by extending a modified Hebbian learning rule. Experiments on a human-robot interaction and on the computer simulations, we analyzed that the proposed method enabled mutually facilitative learning of a mapping for gaze-following and a label-to-object mapping by which the learner performs multimodal joint attention with its caregiver. Finally, through a computer simulation resembling mother-infant interaction, we argued a possibility of the proposed learning mechanism as a constructivist model for infant's cognitive development.
著者
吉川 雄一郎 松本 吉央 熊崎 博一 上出 寛子 内田 貴久
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

発達障害者の孤立が社会問題となっている.これに対し本研究では,人が遠隔地から操作するロボットの傍に別の自律型ロボットを配置し,これら2体のロボットが生み出す対話にロボットの周囲にいる人々を引き込むことで,発達障害者がコミュニティの人々と交流できる対話システムを実現する.このために,人々との過去の対話内容を基に新たな対話をし続けられる自律型ロボットを開発し,これを発達障害者が操作する遠隔操作型のロボットと連携させることで,継続的な対話を生み出す対話支援システムを開発する.そしてこれを発達障害者のコミュニティに設置し,継続的な交流支援を実現する.
著者
高橋 英之 島谷 二郎 小山 虎 吉川 雄一郎 石黒 浩
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-176, no.21, pp.1-4, 2018-01-15

自分があらかじめ記述した考えをロボットが代わりに述べ,それを論破するという自己客観視システムを構築した.このシステムを用いた予備実験から,一定数の被験者がロボットを通じた自分自身との対話を通じて考え方や価値観を変化させることが示された.本研究ではこのようなシステムが持つ意義について考察したい.
著者
三野 星弥 吉川 雄一郎 伴 碧 石黒 浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.IDS-I_1-14, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
39
被引用文献数
2

The goal of this study is to realize a non-task-oriented dialogue agent that is accepted by people in the long term. One approach is using a dialogue strategy in which an agent shares information about other users who are not participating in the current dialogue. This study aims to develop a chatbot that is capable of sharing information about others and to examine its usefulness as well as its problems such as privacy concerns using a long-term empirical experiment in a real-world environment. The result of a 14-day experiment with 120 participants suggested that the usefulness of this dialogue strategy lies in its ability to maintain users’ motivation to interact with the agent and prevent them from having the impression that the agent is mechanical. However, irrespective of the presence of this dialogue strategy, it was suggested that the users were concerned about their privacy to the agent that collected their information on a daily basis. Based on these results, we discussed the relationship between the interestingness of the shared information and the users’ privacy concerns.
著者
石原 尚 若狭 みゆき 吉川 雄一郎 浅田 稔
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.100-113, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
48
被引用文献数
1

Maternal mind-mindedness is known to be a tendency of caregivers to interpret their socially immature infants as social agents and researchers have indicated this is one of promotion factors of infant social development. In this paper, we focused on such caregiver's tendency in mutual imitation of vowels and modeled infant vowel development to investigate the effect of caregivers on infant development. Computational simulation results in our previous study of caregiver-infant mutual imitation showed what we call auto-mirroring bias of the caregiver has a guiding effect in vowel development. This hypothesized bias is the tendency to interpret infant's utterances as more accurate imitations of the caregiver's precedent utterances and considered to be one of behaviors of the mind-mindedness. To verify this bias, we further examined how adult's interpretation was biased by measuring their imitations of synthesized vowels. The result of this subject experiment indicated the bias was enhanced by the anticipation to be imitated. These results of our studies imply the possibility that the way caregiversimitate their infant based on their interpretation of their infants lets them learn caregiver's way of interpreting others, i.e. sociality.
著者
吉川 雄一郎 篠沢 一彦 石黒 浩 萩田 紀博 宮本 孝典
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1284-1293, 2007-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
5

人間同士のコミュニケーションにおいて,視線は意図の伝達や会話の調節など,重要な役割を持つことが知られている.人間と対面するロボットやスクリーンエージェントの従来研究においても,それらの視線をどのように構成するかに注目が集まっているが,相手の視線の動きを考慮した枠組みの研究は少ない.しかし,相手の視線が自分の視線に対してどのように変化しているかを見ることは,人間が相手の視線を認識するうえで重要な手がかりになっていると考えられる.そこで本研究では,対面相手の視線に基づいて自身の視線を動かすことのできるロボットを構築し,応答的視線によってより強い被注視感を相手にいだかせることができることを示す.In face-to-face communication, eyes play a central role, for example in directing attention and regulating turn-taking. For this reason, it has been a central topic in several fields of interaction study. Although many psychology findings have encouraged previous work in both human-computer and human-robot interaction studies, so far there have been few explorations on how to move the agent's eye, including when to move it, for communication. Therefore, it is this topic we address in this study. The impression a person forms from an interaction is strongly influenced by the degree to which their partner's gaze direction correlates with their own. In this paper, we propose methods of controlling a robot's gaze responsively to its partner's gaze and confirm the effect of this on the feeling of being looked at, which is considered to be the basis of conveying impressions using gaze in face-to-face interaction experiments.