著者
垰田 高広 原 康 増田 弘行 根津 欣典 山王 なほ子 寺本 明 竹腰 進 長村 義之 多川 政弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-7, 2006-01-25

正常ビーグル犬における下垂体切除後の飲水量と尿量の顕著な増大を主徴とする尿崩症様症状は, 術後2週間以内に自然消退することが報告されているが, その機序についての詳細は明らかにされていない.そこで, 健常犬に対して下垂体切除を行い, 下垂体切除が高張食塩水負荷による血清ナトリウム濃度, 血清浸透圧の上昇に対するアルギニンバソプレッシン(AVP)分泌動態に及ぼす影響について調査した.さらに下垂体切除後の間脳視床下部組織における室傍核および視索上核のAVP産生および分泌細胞である大細胞性ニューロンの細胞数を計測することにより, 下垂体切除がAVP産生能に及ぼす影響についても検討した.高張食塩水負荷試験の結果では, 下垂体切除後においても血漿AVP濃度は食塩水負荷に反応してわずかな上昇を示したが, その割合は対照群と比較して大きく低下しており, 1ヶ月および3ヶ月間の観察期間内では臨床的に尿崩症様症状を抑制するものの, 急激な食塩水負荷に反応できるほど回復していないものと考えられた.間脳視床下部の室傍核と視索上核の免疫組織化学的調査では, 下垂体切除によってAVP陽性細胞数が減少する傾向が示された.これらの結果から, 下垂体切除により大細胞性ニューロンの機能的, 数的減少が認められたこととなり, 術後におけるAVP分泌能の回復は臨床的な術後尿崩症様症状の改善と関連していないことが示唆された.