著者
土屋 みさと 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.141-149, 2005-07-01
被引用文献数
1

高校生の制服に対する意識をもとに, 今後の被服教育における「着装」の指導の方向性について検討した結果, 以下のような示唆を得た。1.制服校では, 男子は, 「スクール・アイデンティティ(学校らしさ)」や「男らしさ」といった他者から与えられるイメージを, そのまま求め受け入れている傾向があった。また, 女子は「流行」という, 戦略的に創り出すこともできる服装を重視し, 流行にとらわれやすいといった傾向をみることができた。2.自由服校の生徒は, 「自分らしい」着装を心がけていた。これらの生徒の意識をふまえた上で, 自分を表現する手段だけでなく, 自分に合った服装を考えられるような指導が必要である。3.自由服校では, 男子が「高校生らしさ」を否定し異性によく見られようしているのに対し, 女子は「高校生らしさ」を容認し服装における男女差をもっとも嫌っているといったように, 男女がそれぞれ相反する考えをもっていた。4.生徒たちが, 「自分を表現する」ことを学ぶために, 制服の意義や役割を確認するとともに, 「自分らしさ」「高校生らしさ」「男らしさ」「女らしさ」といった服装規範としての概念についてとりあげ, 生徒同士が意見を交わし合うといった授業の工夫ができる。
著者
土屋 みさと 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.141-149, 2005
参考文献数
4
被引用文献数
1

高校生の制服に対する意識をもとに, 今後の被服教育における「着装」の指導の方向性について検討した結果, 以下のような示唆を得た。1.制服校では, 男子は, 「スクール・アイデンティティ(学校らしさ)」や「男らしさ」といった他者から与えられるイメージを, そのまま求め受け入れている傾向があった。また, 女子は「流行」という, 戦略的に創り出すこともできる服装を重視し, 流行にとらわれやすいといった傾向をみることができた。2.自由服校の生徒は, 「自分らしい」着装を心がけていた。これらの生徒の意識をふまえた上で, 自分を表現する手段だけでなく, 自分に合った服装を考えられるような指導が必要である。3.自由服校では, 男子が「高校生らしさ」を否定し異性によく見られようしているのに対し, 女子は「高校生らしさ」を容認し服装における男女差をもっとも嫌っているといったように, 男女がそれぞれ相反する考えをもっていた。4.生徒たちが, 「自分を表現する」ことを学ぶために, 制服の意義や役割を確認するとともに, 「自分らしさ」「高校生らしさ」「男らしさ」「女らしさ」といった服装規範としての概念についてとりあげ, 生徒同士が意見を交わし合うといった授業の工夫ができる。
著者
堀内 かおる 花岡 美紀 小笠原 由紀 太田 ひとみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

【目的】  中学校技術・家庭科家庭分野の「A家族・家庭と子どもの成長」は、家庭分野の導入として、ガイダンスの位置づけとすることになっている。しかしこの内容に含まれている「自分の成長と家族とのかかわり」は、中学校入学当初のみならず、家庭分野の学習を通して生徒に見つめさせていきたい内容である。中学生の時期に自立の概念をとらえ、今後の自分の人生を展望することは極めて重要であり、キャリア教育の視点も加味しつつ、家庭科学習との関わりで自らの成長を振り返る契機としたいと考えた。以上の授業観に基づき、中学生が自らの成長を家族との関わりを可視化することを通して考える授業を設定し、その効果と課題を明らかにすることを目的として、「絵本」を教材とした授業実践とその分析・考察を試みた。【方法】 2012年10月に、国立大学附属K中学校第1学年4クラスの生徒を対象として、家族と家庭生活に関する内容の絵本を教材とした授業を試みた。授業は2時間続きで行われ、1時間目には本授業のために制作されたオリジナルのデジタル絵本『「なりたい自分」になるために必要なこと』を、2時間目には、レイフ・クリスチャンソン:文(にいもんじまさあき:訳)、ディック・ステンベリ:絵の『じぶん』(岩崎書店、1997年)という絵本を使用し、他者とのかかわりの中で、相手意識をもって「自分に何ができるのか」を考えるように促した。 授業の中では、現在に至るまでの、家族とのかかわりに着目させることとし、自分の成長の背景には、家族をはじめとする身近な大人たちの存在が不可欠であり、そうした人々との関わりを通して今の「自分」を形成してきたのだということに生徒たちが気づくための手立てを考え、授業の内容が組み立てられた。本授業における生徒の気づきをワークシートや授業後の感想から読み取り、分析を行った。【結果と考察】1.生徒にとっての「自立」: 1時間目の授業の冒頭で、教師は「自立」のイメージマップを生徒たちに書かせた。その結果、「自立」という言葉から直接枝分かれして書かれている言葉は、「一人暮らし」「視野が広がる」「自分の意思をもつ」「自分の力で生活する」ということであった。自立には、生活的な自立、精神的自立、経済的自立があることをとらえていることが分かった。しかし、「自分の力で生活する」と言う言葉から派生しているのは、「自分のことは自分でやる」ということであって、「一人でできるようになる」ということが自立の根本的な考え方として捉えられていた。「誰かと共に助け合って生活する」「誰かのために役立つ自分になる」という「共生」の概念は、この「自立」のマップからは見取ることができなかった。2.「共生」というコンセプトについての生徒の理解: 1時間目の授業では、「自立」の概念に続いて、「共生」の意味についても生徒に提示している。「共生」の概念を押さえたうえで、2時間目の「いまの自分・これからの自分と家族とのかかわりについて考えてみよう」という小題材へと学習は展開した。「自分の成長と家族とのかかわり年表」は、自分の成長とともに家族それぞれも年齢を重ねていくということを可視化させる手がかりとなり、家族とのかかわりを見つめ直した様子がうかがえた。3.教材としての絵本の効果: 授業後のアンケートにより、生徒たちの絵本教材に対する意識を把握したところ、約4割の者が絵本に対する関心を持っていた。しかしほぼ同率で「あまり関心がない」と回答する者もおり、授業にあたり、絵本それ自体に対しては、自発的な興味・関心を抱いている学習者ではなかった。しかし、それにもかかわらず、今回使用したデジタル絵本に対しては肯定的な評価が得られ、約6割が「わかりやすかった」と回答し、約4割が「いまの自分のことを考える手がかりになった」「文章(言葉)がよかった」と回答している。「将来の自分のことを考える手がかりになった」という回答も約4割見られ、これからの自分の生活を考える視点を持つきっかけになったと推察された。
著者
堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.8, 2010

〈目的〉2006年に実施された「家族の法制に関する世論調査」(内閣府)によると、家族の役割として最も大事だと考えられることとして、「心の安らぎを得るという情緒面」と回答した者が最も多く44.4%を占め、「子どもをもうけ,育てるという出産・養育面」と回答した者は29.2%である。家族の役割として情緒面の充実が求められる今日、「心の拠り所としての家族」という認識は多くの人々の共感を得ていると考えられる。本研究者は、2009年度より、多様な家族の姿を描いた絵本に着目し、家庭科教材としての有効性を検討してきた。日本家庭科教育学会2009年度例会では、父親と子どもとの関わりが描かれている絵本を分析した結果を報告した。今回は、アメリカで出版されている同性カップルと子どもによる「家族」を取り上げている絵本に着目した。日本人の作家による同性カップルを描いた絵本はいまだ見られないことを鑑み、先行するアメリカの状況において、これらの絵本がどのように評価されているのかを調査するとともに、絵本の構造を分析し、絵本の中に込められたメッセージを明らかにするとともに、家族の在り方を問う家庭科教材としての可能性について検討することを本研究の目的とする。<BR>〈方法〉1.アメリカで出版された同性カップルとその家族を描いた児童書・絵本の変遷について、インターネットや文献資料から明らかにする。2.日本では無名であるが45冊を超える絵本を刊行しているアメリカ在住の著名な絵本作家であるパトリシア・ポロッコによる絵本<I>"In Our Mothers' House"</I>, Philomel Books, New York, 2009を取り上げ、登場人物の描かれ方と内容のメッセージについて考察する。3.家庭科教材として「多様な家族」を取り上げる際の着眼点について検討する。<BR>〈結果及び考察〉1.同性カップルとその家族を描いた児童書・絵本としては、1981年にデンマークで出版され1983年に英語で翻訳出版されたスザンヌ・ボッシュによる<I>"Jenny lives with Eric and Martin"</I> が最初である。その後、1989年にアリソン・ワンダーランド社より<I>"Heather has two mommies"</I>が出版され、続いて同社から1990年に<I>"Daddy's Roommate"</I>、1996年には続編となる<I>"Daddy's Wedding"</I>が出版された。これらの図書は、論争的テーマの作品として話題になり、政治論争にまで発展した。<BR>2.パトリシア・ポロッコによる作品<I>"In Our Mothers'House"</I> は、23のシーンから構成されており、女性の同性カップルが生後間もない3人の養子を次々に迎え、子どもたちとともに様々なイベントを楽しみ、地域の中で近隣の人たちと親しく暮らしている様子が描かれている。地域の人々の中には一人だけ、彼女たちを敵視する女性がいるが、この女性は例外的存在となっている。年月を経てカップルの女性たちが年老いて亡くなってからも、子どもたちの拠り所として、「母さんたちの家」はいつまでも位置づいている。子どもたちが成長しそれぞれの配偶者を得てからの姿までも描いているところに、本書の特色がみられ、「家族」は時とともに形を変えながら次世代に継承されていくという暗喩が示唆される。<BR>ストーリーは、「同性カップルによる家族」というテーマのみならず、人種や民族がそれぞれ異なる3人の子どもたち、インターナショナルな文化的背景を持った地域の人々との共生という「多様性」が主題となっている。「多様性」を前提とした「共生」について、示唆を与えうる絵本であることが確認された。同時に、「家族」が成立する必要十分条件として不可欠なのが「愛情」であるというメッセージが込められていた。<BR>3.絵本を「教材」として取り上げようとすると、教師には、その絵本に内在するメッセージ(イデオロギー)に対する解釈が問われることになる。特に、論争的なテーマに関しては、その教材を使用することによって「何を伝えたいのか」ということをめぐり、慎重な検討を要する。一つの家族形態のみを提示するのではなく、「多様な家族」の形を示す複数の絵本を提示し、それらの「家族」の共通性に焦点を当てるという方法が考えられる。
著者
岡部 雅子 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>〈研究の目的〉 <br></b>&nbsp; 小学校家庭科の教科書には、汎用性の高い基本的な手順や知識と、個々の状況により加減が必要な時間等のめやすが記述されている単元が多いが、子どもたちはそれらを区別して読み取ることができず、すべて教科書に書かれたとおりに行えばうまくいくと考えている。<br>&nbsp; そこで本研究では、炊飯の単元において、実習を通して学んだことや、自分の経験から言えることを、自分たちの言葉で表現し、教科書の炊飯のページに吹き出し型に付け加えていく形でまとめて、オリジナルの教科書ガイドを作ることを試みた。そして、子どもたちにどのような炊飯のときにもあてはまる内容と、状況によって加減する必要のある内容とが書かれていることに気づかせたいと考えた。その後グループで、作ったガイドをもとに「どんなごはんが炊きたいのか」という思いを共有し、それらを実現する具体的な方策を考え、次時の実習に臨ませた。そうすることで学習がより子どもたちの生活に生き、考えながら実践し続ける態度につながると考えたからである。こうした活動を通して、教科書を子どもたちの生きた教材として使いこなす方策を探ることを本研究の目的とする。<br><br><b>〈方法〉<br></b>&nbsp; 授業実践は国立大学法人附属小学校5年生3学級において平成28年2月に行った。そのうちA組(児童数32名)での実践を報告する。単元名は「いつものごはんを見直そう」で、授業数は全10時間、授業の流れは次のようである。<br> ・「いつものごはんとは」について考え、話し合い、学習課題を確認する。(1時間)<br> ・ビーカーと文化鍋で炊飯をする。(各2時間)<br> ・実習したことなどをもとに、グループでオリジナル教科書ガイドを作る。(2時間)<br> ・オリジナル教科書ガイドを発表しあい、次時のおにぎり作りに向けて自分たちの作戦を立てる。(1時間)<br> ・作ったガイドを生かして炊飯をし、おにぎりを作る。(2時間)<br><br><b>〈結果と考察〉</b> <br>&nbsp; 単元の導入では、「いつものごはんとは」について考えさせた。考えを交流する中で、子どもたちは、ごはんの炊きあがりを左右する炊飯の要素がさまざまあること、また、おいしさの基準は人によってちがうこと等に気づいた。その上で単元を通して「どうすれば自分の思い通りのごはんが炊けるのか」を追究することを確認してから、2回の調理実習を行った。<br>&nbsp; 単元最後のおにぎり作りの実習の前に、炊飯の実習を通して学んだことや自分の経験から言えることを、自分たちの言葉で表現し、教科書の炊飯のページ(開隆堂「小学校私たちの家庭科」pp.46-47)に吹き出し型に付け加えていく形でまとめて、グループで一枚のオリジナル教科書ガイドを作った。ガイドの吹き出しには、米や水のきちんとした計量、洗米の仕方、浸水時間の保障といった汎用性の高い知識に関する追加記述のほかに、水の量や火加減の調節など、自分の思いや米による違い等によって加減する必要のある作業があることについての記述が見られた。また、まとめのおにぎり作りの実習時には「どんなごはんが炊きたいか」という思いと具体的な方策を考えて臨んだグループがほとんどであり、これまでの実習に向かう姿勢との違いが見てとれた。<br>&nbsp; このように、教科書をカスタマイズして作ったオリジナル教科書ガイドは、あいまいさや加減の要素を併せ持つ生きたテキストになり、教科書を教材化する有効な方策であるということができた。<br> (なお、本研究は、小玉亮子お茶の水女子大学教授と堀内かおる横浜国立大学教授との共同研究の成果の一部である。)
著者
土屋 みさと 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第45回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2002 (Released:2003-04-02)

(目的)近年、制服のブランド化など「制服のファッション化」が進む一方、私服を制服のように着こなす高校生も増えている。高校生の服装規範意識の変化に対応し、被服教育も新たな教育的意義が問われている。そこで本研究では、制服や日常着にみられる服装規範と高校生のファッション観を明らかにし、今後の被服教育への示唆を得ることを目的とした。(方法)制服や服装規範に関するアンケート調査を2001年6月∼7月及び10月に実施した。対象は首都圏の高校生男女2002名である。有効回収率は88.5%、データはパーソナルコンピュータに入力し、集計ソフトSPSSを用いて分析した。(結果と考察)現在の高校生のファッション観の特徴として、(1)今だからこそできる自由な服装への指向、(2)自由さをあえて制限するような「枠」への依拠、の2点が認められた。高校生たちは、「自己主張」の一表現形態としておしやれをとらえながらも、準拠枠となる一定の服装規範を必要としていた。「枠」によって制限され服装が無個性化した中で、あえてその服装をわずかに変えることで個性を表現しようと試行錯誤している姿が見いだされた。したがって今後の被服教育においては 自分らしさを表現する力の育成が重要である。生徒の個性を表現しようとする意欲を尊重し、自らを主張する力の育成を通して、生徒が自己を見つめ直し、ひとりひとりが独自の自己表現力を身につけることが必要だと考える。
著者
堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.25-33, 1995
参考文献数
34
被引用文献数
1

The objective of this study was to clarify the process on the controversy concerning abolishment of Homemaking in elementary schools in early postwar period, Japan. GHQ/SCAP recordswere analyzed and it was found that Ambrose, E. V. , the elementary Educationists working at Education Division of CIE was the person who suggested the reform on Homemaking Education in elementary schools. One of the problems in regard to abolishment was the treatment of Homemaking teachers. Ambrose recognized that Homemaking teachers were afraid that they may be dismissed if Homemaking Education was abolished.
著者
薩本 弥生 川端 博子 堀内 かおる 扇澤 美千子 斉藤 秀子 呑山 委佐子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

[目的] 現在の衣生活は、旧来の家庭で衣服を作る時代から、既製服を選んで購入する時代となった。日常着が洋装化し、既製服が普及した今日、きもの文化に触れる機会もめっきり減り、これらの技術や文化が若者に理解されにくくなりつつある。一方で、2006年に改正された教育基本法に「伝統や文化を尊重し、我が国と郷土を愛するとともに、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が新たな教育の目標として規定されたことを受けて、新指導要領が2008年に告示され、中学校の技術・家庭科の衣生活分野では「和服の基本的な着装を扱うこともできること」が盛り込まれたため、和服の着装の体験を含めた教育プログラムを模索することは必要不可欠である。そこで本研究では、和服の中でももっともカジュアルで取り組みやすいゆかたの着装を含む体験的学習を通し、きもの文化を次世代に継承する家庭科の教育プログラムを開発し、その学習効果の検証することを目標とし、特に浴衣の着装実習において大学教育学部で事前に浴衣の着装指導に関してトレーニングを積んだアシスタントティーチャーを活用して技能の理解・習得に力点を置いた授業実践を試行的に行い、技能の理解・習得を目標に着装体験することがきもの文化への興味・関心を喚起するかを明らかにすることを目的とする。 [方法]2011年6月から9月に、Y大学附属K中学校において、家庭分野担当教員の協力を得て教育実習の一環で大学の実習生が2年生4クラスを対象とした浴衣を教材とした3時間(50分×3)の授業を実施した。実習直後および夏休み明け(事後)に着装感や技能習得意識に関する項目(23項目)について5件法で調査を実施した。23項目の直後・事後調査のデータがそろっている4クラス分の男女生徒159部(90.9%)を対象として、分析結果から得られた内容をもとに、授業の成果と生徒の意識変容について考察する。 [結果と考察] (1)因子分析によって抽出された全5因子を相関分析した結果、「興味関心因子」と「理解習得因子」に高い相関があることがわかった。(2)共分散構造分析の結果、「理解習得因子」から「興味関心因子」へのパス係数が有意であった。このことから「技能の理解・習得を目標に着装体験することがきもの文化への興味・関心を喚起する」という仮説が成り立つことが立証された。さらに男女による差異、帯結び部分練習の有無による差異を検討した結果、有意に差が見られた。以上の結果から、男女でのゆかたの色柄の違いや着付けの難易度の違いがある中で男女ともに、きもの文化に対する興味関心や理解習得を肯定的にとらえるために授業のさらなる工夫の必要性が明らかになった。着付け技能の理解・習得をめざした授業作りのために部分練習をすると理解習得意識が高まり、それが興味関心喚起に結びつくことがわかった。授業時間数が縮小傾向の中での時間数の確保が課題である。[まとめ]これまでの実践を通して教師自身の「きもの」文化に関わる意識啓発と知識・技能の力量形成が重要であることが明らかとなってきたので、大学で着付けの技能を中心に「きもの」文化に対する意識啓発と技能習得のためのトレーニングを積んだ学生をATとして活用したのが本研究の特徴である。ATの活用により教員に余裕が生じ、生徒への示範や指導が行き届き、授業が円滑に進行し、着装技能の理解や習得意識が向上し、きもの文化に対する興味関心の喚起にも有効であることが明らかになった。附属学校という地域のリーダー的な実践校での実践であり、設備や教材などの学習環境、教師の実践力向上に向けての周りの支援、さらに生徒の質の高さ等々が整っているため出来た実践という面はある。しかし、一般校でも、地域か、保護者の協力を仰ぐ体制づくりを整えて行くことで可能となると思う。
著者
堀内かおる
出版者
国際基督教大学
雑誌
Gender and sexuality : journal of Center for Gender Studies, ICU (ISSN:18804764)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.79-91, 2011-03-31

This study examines how picture books provide children with an opportunity to be aware of issues of gender and sexuality by focusing on foreign picture books dealt with a homosexual couple and their children. It explores the possibilities and limits of the works' messages concerning "the diversity of family" through analysis of images of "family" in picture books. Published in 2009, Patricia Polacco's In Our Mothers' House has gained reputation as an important work itself without being subjected to homosexual bashing. Although this reflects current changes in the public's social background and awareness, this research note demonstrates that the couple in this work is depicted in a relationship with stereotypical concepts of the family, following the conventional family norm, even though it deals with homosexual couples. The study also suggests that picture books are a medium that provides children encounters with new knowledge that can enforce the traditional norm of family.
著者
天野 寛子 堀内 かおる 伊藤 セツ 森 ます美 天野 晴子 斎藤 悦子 松葉口 玲子 伊藤 純 水野谷 武志
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.739-745, 1996-08-15
被引用文献数
10

著者らは、1975年, 1980年, 1985年, 1990年の東京における雇用労働者夫妻の生活時間調査にひきつづき, 5回目の調査を1995年10月, 東京都世田谷区在住の子どもと同居している夫妻を対象に実施した. 本稿では目的, 方法, 調査概要を述べる. 本調査の主な目的は, 家事労働のみならず収入労働をも含めてその不払い労働の実態を明らかにすることである. 調査協力者は, 区発行の広報を通じて公募した. 合計162カップルが応募し, 有効回答はそのうち136カップル(272名)であった. (1) 過去の調査と比較して, 夫妻ともに収入労働により多くの時間を費やしていた. (2) 夫の火事労働時間は平均して微増していた. (3) 夫妻ともに生理的生活時間, 社会的・文化的生活時間は短かった.