- 著者
-
大原 繁男
- 出版者
- 名古屋工業大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2011-04-01
Yb化合物研究では、純良単結晶を得にくい問題がある。我々は新物質YbNi_3Al_9及びYbNi_3Ga_9の純良単結晶育成に成功し、強相関Yb化合物の研究において極めて有用であることを明らかとした。X線回折、比熱、抵抗率、帯磁率、de Haas-van Alphen(dHvA)効果、光電子分光、X線吸収、圧力効果の測定から以下のことがわかった。①三方晶ErNi_3Al_9型構造(空間群R32)を持ち、カイラル体である。②YbNi_3Al_9はYb価数がほぼ+3価の重い電子系ヘリカル磁性体(T_N=3.4K)であり、YbNi_3Ga_9はYb価数が+2.5価の価数揺動体である。③YbNi_3Ga_9は低温で近藤ピークを示し、伝導電子(c)とf電子が強く混成している。④YbNi_3Al_9、LuNi_3Al_9、LuNi_3Ga_9は類似したフェルミ面を持つが、YbNi_3Ga_9はcf混成のためフェルミ面が異なる。YbNi_3Al_9及びYbNi_3Ga_9ではサイクロトロン有効質量が増大している。反転対称を持たないため、いずれもフェルミ面が分裂している。⑥YbNi_3Ga_9では価数揺動から磁気秩序状態まで圧力により連続的に電子状態を調節でき、磁気臨界圧力で超伝導を示すかどうか興味がもたれる。YbNi_3Al_9は4GPa、YbNi_3Ga_9は9GPaで強磁性に転じる。⑦Yb(Ni_1-xCu_x)_3Al_9及びYb(Ni_1-xCo_x)_3Ga_9(x0.33)が合成でき、置換により基底状態が調節できる。発展として、R(希土類)Ni_3Al_9の合成を行い、4f電子系カイラル磁性の研究を進めている。そのほか、Gaを組成比に多く含むCe_2TGa_12(T=Ni, Pd, Pt)及びCe_2Pt_6Ga_15についても単結晶を育成し、電子物性測定を行った。