著者
小川 昭正 度會 正人 中村 麗亜 大江 英之 服部 哲夫 城所 博之 久保田 哲夫 加藤 有一 宮島 雄二 久野 邦義
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.55, 2007

〈緒言〉小児における上室性頻拍はしばしば経験するが、乳児期に発症するものは急激にうっ血性心不全が進行し、重篤な状態となる。また年長児では、ときに再発が多く日常生活のQOLが障害される。近年小児でもカテーテルアブレーション治療が行われるようになり年長児の生活のQOLが改善され福音となっている。<BR>そこで、最近7年間に当科で経験した上室性頻拍症の15症例について臨床像、短期治療、長期治療につき検討した。<BR>〈結果〉乳児期発症は9例(男児4例、女児5例)、幼児期以降の発症は6例(男児4例、女児2例)であった。乳児期発症例はすべてが生後3ヵ月以内に発症していた。3例は初診時に著明なうっ血性心不全を呈していたが、残りの6例は、偶然に発見されていた。うち1例は胎内で一時頻拍を指摘されたが出生時は不整脈は認めず生後4日から上室性頻拍発作を発症した。急性期の治療は、1例は治療開始前に自然軽快したが、他の8例は digoxinの急速飽和とATP急速静注をおこない発作は治まった。 幼児期以降発症の6例の年齢は4歳から13歳で、発作時心拍数は毎分160から270であった。症状も腹痛や胸部不快感・動悸で、循環呼吸状態への大きな影響は認められなかった。薬物治療は、ATPの急速静注、又はATPとDigoxinの併用であった。乳児期発症の9例のうち非発作時の心電図から副伝導路の存在が示唆されるものは3例であった。発作予防薬は、digoxinが5例、digoxinとpropranololの併用が3例 頻回に再発した1例はdigoxin,propranolol,disopyramide の併用をおこなった。digoxinは血中濃度に注意して全員が内服した。予防内服の期間は 全例で8ヶ月~1歳までで、内服中止後 発作が再発した例は、なかった。幼児期以降発症例では、1例がmanifest WPWであった。発作予防薬は原則的には無しとしていたが、経過中発作が頻回になった2-3ヶ月間のみ、やむをえず予防内服を行った。2例では、薬物が必要な発作の頻度が高く、年齢が高くなるにつれて生活に支障を来たすようになった。そのため高周波カテーテルアフ゛レーションの適応と考え、施行したが、その後は上室性頻拍発作はなく良好な経過をたどっている。<BR>(結語)□乳児期早期の発症例では重症の心不全に陥る前の発見が重要でその後数ヶ月を良好な発作予防をすることが重要であり、年長児では頻回発作する例ではカテーテルアブレーション治療にもちこむことがQOL改善のため重要であることを再確認した。
著者
宮地 恵美 中内 涼子 鈴木 弘美 高橋 佐智子 宮島 雄二
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.39, 2006

<B><緒言></B>病院における小児の事故としてはベッドからの転落が圧倒的に多く、転落防止指導は非常に重要である。当病棟では、小児病棟の安全管理として、成人用ベッドとは異なる、四方に柵のついたサークルベッド(以下、高サークルベッドとする)を使用し転落防止に努めている。入院時のオリエンテーションでは、付き添い者に口頭で指導を行い、転落注意の警告文を表示したり呼びかけているが、転落は絶えず発生している状況である。今まで以上に具体的な対策を立案し、実施する必要性を感じた。<BR><B><目的></B>転落防止対策としての写真付きシートを作成し、それを用いて付き添い者への指導を行うことで、付き添い者の意識向上を図り、転落件数を減らす。<BR><B><方法></B>高サークルベッドの使用が必要な、付き添い者のいる0-4歳の入院患児を対象に、従来の指導方法:A群と、写真付きシートを使用した指導方法:B群での転落件数の比較検討と、アンケートによる付き添い者の意識調査を行った。写真付きシートは、乳児の人形を用いて、ベッド柵を正しく使用しないことで今にも転落しそうになっている状況や実際に転落してしまった場面の写真を載せた。入院時に持参して説明後、ベッド柵にかけ、退院時に回収した。付き添い者へのアンケートは、自由意志でありプライバシーは守られる事、同意を頂けなかった場合でも治療に影響しない事を記載し、倫理的配慮に努めた。各120例ずつ回収した。<BR><B><結果></B>転落件数は、A群延入院患者数3003人中9件(1件/334人)から、B群延入院患者数2968人中2件(1件/1484人)と有意に減少した。意識調査に関する質問内容については、「入院中注意してベッド柵を一番上まで上げていましたか」に対して、A群:できた39例(33%)・中段までしか上げていなかった21例(18%)・できなかった60例(49%)、B群:できた41例(34%)・中段までしか上げていなかった27例(23%)・できなかった52例(43%)で、有意差は認めなかった。「入院中、何を見て(聞いて)ベッド柵を一番上まで上げておこうと思いましたか(複数回答可)」については、A群:看護師の説明41%・柵についている警告文33%・掲示板に貼ってある警告文11%・看護師の声かけ8%、B群:看護師の説明31%・写真付きシート24%・柵についている警告文23%・掲示板に貼ってある警告文7%・看護師の声かけ9%であった。<BR><B><考察></B>写真付きシートを用いた転落防止指導で、小児の転落事故が有意に減少した。付き添い者が、実際に転落する場面の写真を見ることで、視覚的に危険性をイメージすることができたと考える。また、入院中常にベッド柵に写真付きシートを掲げ、付き添い者の目に留まるようにしたことで、転落防止について常に意識を持つことができ、付き添い者が代わった場合も転落防止の意識付けになったと考える。意識調査から「柵についている警告文」「看護師の説明」も有効であることが伺え、視覚的な指導方法と組み合わせ、看護師が声かけを繰り返すことも事故防止に有効であった。今後の課題として、今回の取り組みのような視覚的に効果のある説明や指導を十分に行っていくと同時に、小児病棟の入院患児の幅広い年齢層に対応できるような具体的な指導を考えていきたい。