著者
芦田 雪 檜森 弘一 舘林 大介 山田 遼太郎 小笠原 理紀 山田 崇史
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-95_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】伸張性収縮(Ecc)は他の収縮様式に比べ,効果的に筋肥大を誘引すると考えられている.ただし,その根拠となる報告の多くは,ヒトの随意運動を対象としており,収縮様式の違いによる運動単位の動員パターンの差異が,筋肥大効果に影響を及ぼす可能性を否定できない.一方,実験動物の骨格筋では,最大上刺激の神経-筋電気刺激(ES)を負荷することで,すべての筋線維が動員される.さらにESでは,刺激頻度により負荷量を調節することが可能である.そこで本研究では,刺激頻度の異なるESを用いて,収縮様式の違いが筋肥大効果に及ぼす影響を詳細に検討することを目的とした.【方法】Wistar系雄性ラットを等尺性収縮(Iso)群とEcc群に分け,さらにそれらを刺激頻度10 Hz(Iso-10,Ecc-10),30 Hz(Iso-30,Ecc-30),100 Hz(Iso-100,Ecc-100)の計6群に分けた.実験1では,ESトレーニングが筋量に及ぼす影響を検討するために,各群(n=5)のラット左後肢の下腿三頭筋に表面電極を貼付し,ES(2 s on/4 s off,5回×4セット)を2日に1回,3週間負荷した.なお,Iso群は足関節底背屈0°で,Ecc群は足関節を20°/sで背屈させながらESを負荷した.右後肢は,非ES側とした.実験2では,単回のESが筋タンパク質合成経路である mTORC1系に及ぼす影響を検討するために,各群(n=6)に実験1と同じ刺激条件のESを1回のみ負荷した.その6時間後に腓腹筋を採取し,mTORC1系の構成体であるp70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルを測定した.【結果】すべての刺激頻度において,ESによる発揮トルク及び力積はIso群に比べEcc群で高値を示した.体重で補正した腓腹筋の筋重量(MW/BW)は,Ecc-30,Iso-100,Ecc-100群において,非ES側と比較しES側で増大するとともに,Ecc-30およびIso-100群に比べEcc-100群で高値を示した.p70S6Kのリン酸化レベルは,30 Hzおよび100 Hzの刺激頻度において,Iso群と比較しEcc群で高値を示した.また,全ての個体における発揮トルク及び力積と,MW/BWの変化率,p70S6KおよびrpS6のリン酸化レベルとの間には高い相関関係が認められた.【考察】本研究の結果,EccはIsoに比べ,筋に対して強い物理的ストレスが負荷されるため,タンパク合成経路であるmTORC1系がより活性化し,高い筋肥大効果が得られることが示された.また,この考えは,刺激頻度を変化させ,負荷強度の異なる群を複数設けたことにより,より明白に示された.【結論】筋肥大効果は,収縮様式の違いではなく,筋への物理的な負荷強度および負荷量により規定される.【倫理的配慮,説明と同意】本研究におけるすべての実験は,札幌医科大学動物実験委員会の承認を受け(承認番号:15-083)施設が定める規則に則り遂行した.
著者
山田 隆治 福満 智代 黒木 祐輝 園田 睦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】中枢神経障害である脳卒中患者では自覚的視性垂直位(subjective visual vertical)が真の重力方向から偏位していることが多く,臨床的バランス指標の低下やプッシャー症状といったバランス障害との関連が指摘されている。脳卒中患者の立位姿勢は姿勢の動揺や,より非麻痺側下肢に体重が乗った非対称な荷重に特徴づけられる。この不安定な立位姿勢に影響するものとして運動麻痺,体性感覚障害,非対称な筋緊張,空間認知の変化などがいわれている。臨床において視覚のフィードバックを利用した立位姿勢や歩行の獲得,矯正を行う際に姿勢鏡をよく用いるが,垂直指標の条件を変えることで脳卒中片麻痺患者の自覚的姿勢垂直位と下肢荷重量がどのような関係にあるか検討することを目的とした。【方法】対象は発症から6カ月以上経過している慢性脳卒中外来患者12名(男:女=7:5),年齢68.4±8.3歳,身長160.5±11.9 cm,体重62.9±13.4 kg,疾患は脳梗塞9名,脳出血3名,左麻痺8名,右麻痺4名,罹病期間62.0±50.1カ月,下肢のBr. StageはIII:5名,IV:1名,V:1名,VI:5名,表在・深部感覚障害は軽度鈍麻3名,重度鈍麻3名,短下肢装具使用は6名であった。なお,骨折等の既往により運動機能障害を有する者,および半側空間無視などの高次脳機能障害を有する者は除外した。測定は外部刺激の影響を考慮し個室を利用し行った。測定条件は壁,壁に垂直線を引いたもの(以下:壁line),姿勢鏡,姿勢鏡に垂直線を引いたもの(以下:姿勢鏡line)の計4条件とした。壁の条件は部屋を横断的に白い布を貼り視覚に垂直線が入らないよう設定した。姿勢鏡を利用した条件では視覚的垂直指標を可能な限り削除するために,姿勢鏡(高さ192cm,鏡面150×90cm)の枠に曲線のフレームを取り付け,その上から白い布を貼り鏡面を8の字にくり抜き垂直となるものが視覚に入らないよう配慮し作成した。姿勢鏡に映る被験者の後方にはバックスクリーンを貼り垂直なものが映りこまないよう配慮した。また垂直の指標とならないよう上着前面にファスナー,ボタンを有するものを着用の場合はプルオーバーのジャージを重ね実験を行った。下肢荷重量の計測には足圧分布計(PDM-S,zebris Medical社)を使用し,各条件における静止立位を30秒間計測した。壁から足圧分布計までの距離は110cmとし,姿勢鏡からの距離はバックスクリーン以外の物が映らないよう各被験者の視野に合わせ微調整した。静止立位は裸足で装具や杖などを使用せず実施した。学習効果の影響を避けるために測定はランダムに実施し各条件1回とした。立位姿勢は上肢を下垂し,足部を肩幅に開き目線の高さを直視し姿勢保持するよう指示した。得られた下肢荷重量30秒間の平均値から,麻痺側下肢荷重率を求め,左右対称の指標となる50%に対する乖離率を算出し比較を行った。統計処理には統計ソフトR version2.8.1を使用し,反復測定の一元配置分散分析を用いて有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は対象患者に主旨および測定方法を説明し同意が得られた上で実施した。【結果】各患者データから麻痺側下肢荷重率50%に対する乖離率を求め,各条件における平均値は壁15.0±8.4%,壁line12.9±10.1%,姿勢鏡11.42±9.2%,姿勢鏡line7.3±5.8%であった。得られた結果から反復測定の一元配置分散分析において有意差(P=0.0408)を認めたが多重比較においては各条件間に有意差は認められなかった。【考察】今回の研究において,各患者の麻痺側下肢荷重率50%に対する乖離率を求め,各条件における平均値は姿勢鏡line,姿勢鏡,壁line,壁の順に低かった。これらの結果から今回の対象患者では姿勢鏡の垂直指標を無くした条件でも視覚フィードバックによる姿勢調整が行え,さらに垂直線を入れることにより下肢荷重量の左右差を減少させる傾向を示すことがわかった。脳卒中後の非対称な下肢荷重に関連する因子として運動麻痺,感覚障害,痙縮,発症後期間,半側空間無視などが関係しているといわれている。本研究では関連因子との分析は行っていないが,今回は自覚的姿勢垂直位がどの程度下肢荷重量に影響を及ぼしているかについて研究を行い視覚フィードバックに必要な要素が増えることで,より垂直認知が高まることがわかった。脳卒中における下肢荷重量の違いは,立ち上がりや歩行等の動作獲得に影響を及ぼすと考え,姿勢鏡を用いて垂直認知を高めた運動学習が効果的になると思われた。【理学療法学研究としての意義】脳卒中患者において姿勢鏡や垂直指標などの視覚フィードバックを用いることで下肢荷重量を左右対称に近づける傾向があり,これらを用いた運動学習が効果的であると考える。
著者
杉崎 宏哉 児玉 真史 市川 忠史 山田 圭子 和田 英太郎 渡邊 朝生
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.57-68, 2013 (Released:2014-06-11)

安定同位体比を用いた海洋の生態系構造の解析では,基礎生産者の安定同位体比の特定が困難なことが食物網解析の障害となっている。本研究では,摂餌過程における炭素・窒素安定同位体濃縮の歴史的経緯をまとめた上,生物種の安定同位体比を同位体マップ上に整理し,食物網構造や栄養段階の推定手法を紹介した。食物網に沿って炭素・窒素同位体比の関係は線形一次式で表せ,摂食過程における炭素・窒素の同位体分別をそれぞれ3.3‰,2.2‰,その比を1.5に設定することで対象とする動物の同位体比から同位体マップ上に食物網の直線を描くことが可能となった。その結果を用いて三陸沿岸と沖帯の食物網同位体予測モデルを提示した。さらに試料採取法・処理法について再考察し,安定同位体精密測定法の今後の展望についても触れた。
著者
阪本 弘子 佐野 恂子 山田 令子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.149-157, 1988

愛知県・岐阜県に在住する女子短大生の母親424名を対象に, 和服の着用に関するしきたり, 結婚支度として和服を調製する程度, 衣裳みせの風習の3行動について調査し, 因襲にとらわれた日本の伝統的慣習がいかに受けとめられているかを考察した.方法としては, 和服に対する一般的態度とのクロス集計, 数量化第II類, 重回帰分析 (Fishbeiaの予測式) を行ったが, その結果は次のようにまとめられる。<BR>1) 和服着用に関するしきたりについて<BR>この行動意図は, 行動に対する態度よりも主観的規範の影響を強く受けて生起し, その結果, しきたりは改めたほうがよいという者が約半数であった.しかし, 残る半数は現状の肯定者であり, 古くからのしきたりは無視できないと考えられる.和服に対する一般的な態度との関係は, 好意的な者ほど現状を肯定しており, 主観的規範の影響も非好意的な者より強く受ける傾向が認められた.<BR>2) 結婚支度に和服を調製する程度について<BR>この行動意図は, 主観的規範よりも行動に対する態度の影響を強く受けて生起し, 「人並み」という中立的な者が大半を占める結果をみた.この行動も, 和服に対する一般的態度が好意的な者ほど, 「入並み~人並み以上」に調製しようとしている.また, 数量化第II類で分析した結果, この行動に強く影響を与えるアイテムは, 和服着用程度, 居住地, 世帯主職業, 世帯の全収入であった.<BR>3) 衣裳みせの風習について<BR>この行動意図は, 行動に対する態度と主観的規範が同程度に影響して生起するという特徴があるが, 結果としては衣裳みせはしないという者が大多数であった.和服に対する一般的態度との関係は, 好意的な者ほど, 衣裳みせを肯定している傾向が, わずかばかりみられた.<BR>今回の調査で取り扱った三つの行動は, いずれもその行動意図を形成する過程において, 自分の意志以外に世間体を配慮していることが明確である.このように本音と建前という相反する意識が交錯して実行に移るという一連の概念は, Fishbe海の予測式に示される (態度+規範=行動意図) に適合していると考えられた。さらに彼の予測式を特徴づける重回帰分析を適用することにより, 態度と規範の行動意図へのかかわり方を, 数量的に把握することができたといえよう.
著者
山田 慎一
出版者
信州医学会
雑誌
信州医学雑誌 (ISSN:00373826)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.279-288, 2019

信州医学雑誌 67(5): 279-288(2019)
著者
山田晶著
出版者
創文社
巻号頁・発行日
1977
著者
山田 敏弘
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.61-67, 2016-09-30 (Released:2019-04-03)

The number of palaeobotanists in Japan is decreasing since the 2000s, despite the discipline is irreplaceable to understand the history of our biosphere. We, animals, intuitively think character of the plants is difficult to interpret, but most plants actually have a quite simple body plan consisting basically of roots, stems and leaves. There are abundant plant fossils with their tissues preserved, because plant cells have walls resistant to degradation. Developmental process of a plant tissue could be reconstructed based on cell arrangements of the tissue, because plant cells are immobile. These characteristics often enable us to study biological aspects of a plant fossil even if it is a common, not rare, plant fossil. In this review, I give examples of palaeo- and neo- botanical studies to lower the emotional barriers for plants which many paleontologists might subconsciously possess.
著者
山田 実 樋口 貴広 森岡 周
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C1O2012-C1O2012, 2009

【目的】<BR> 肩関節周囲炎のような運動器疾患患者の多くは、疼痛や関節可動行制限によって、自ら患側肢の能動的な運動を制限してしまう(学習された不使用).このことが、関節可動域改善の妨害因子となることは明らかであり、何らかの対応が求められる.一方、運動イメージを簡便に想起させる手段の一つに、身体部位のメンタルローテーションを用いる方法があり、CRPSのような難知性疼痛患者に対する介入としても臨床応用されている.学習された不使用は、皮質レベルでの機能変化であるため、CRPS患者と同様に、その他の運動器疾患患者においても、メンタルローテーションを用いた介入が有用である可能性がある.そこで本研究では、学習された不使用状態にある肩関節周囲炎患者に対するアプローチとして、簡易型メンタルローテーション課題(簡便に運動イメージ想起を行う手段)を考案し、その有用性を検討した.<BR>【方法】<BR> 対象は、片側罹患の肩関節周囲炎患者40名(年齢; 54.8±10.5歳、日整会肩基準; 64.1±6.3点)であった.なお、明らかな石灰沈着や腱板損傷を認めた場合は除外した.対象者には紙面および口頭にて、研究の説明を行い署名にて同意を得た.対象者は、無作為に介入群20名と対照群20名に分けられた.介入期間は1ヶ月であり、両群ともに、標準的リハビリテーションを週に2~3回の頻度で行った.加えて介入群には、簡易型メンタルローテーション課題が課された.この課題は、回転(0°、90°、-90°、180°)してある左右側それぞれの上肢および手の写真をみて、それが右手なのか左手なのかを回答するものである.120枚の写真(上肢、手)を入れた、はがき用のクリアファイルを用いて、毎日15分程度、1ヶ月間行うよう指導した.1ヶ月間の介入前後には、日整会肩基準、屈曲角度、外転角度、1st外旋角度を測定し、アウトカムとした.統計解析には、二元配置分散分析およびpost hoc testを用い、介入効果の検証を行った.<BR>【結果および考察】<BR> 介入前のベースラインの比較では、年齢、発症より介入開始までに要した期間、日整会肩基準、屈曲角度、外転角度、1st外旋角度の全てで有意な群間差を認めなかった(p>0.05).二元配置分散分析の結果、日整会肩基準、屈曲角度、外転角度、1st外旋角度の全てで交互作用を認め、介入群で有意な改善を認めた(p<0.05).なお両群ともに、すべての指標の介入前後で有意な改善を示していた(p<0.05).これらのことより、標準的リハビリテーションだけでも肩関節機能の改善は期待できるが、加えて、簡易型メンタルローテーション課題を用いたトレーニングを行うことで、より機能改善に有用であることが示唆された.<BR>【結語】<BR> 肩関節周囲炎患者において、簡易型メンタルローテーション介入を行うことは、機能改善に有用である.
著者
望月 亮 福島 竜也 岩渕 浩昭 山田 良男 加藤 孝男
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.43-48, 2009
参考文献数
2
被引用文献数
1

Ku帯電力増幅FETとして世界最高出力となる50W級窒化ガリウム系高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)を電力増幅部に用いた、固体化電力増幅器(SSPA)を開発したので報告する。GaN FETは、増幅特性が非線形領域となる範囲が広く、3次相互変調積(IM3)の改善が欠かせないが、本装置では、バイアス条件の最適化によって、14.0〜14.5GHzの広帯域における送信出力50dBm(100W)のIM3が-25dBc以下となる性能を、-10〜45℃の周囲温度環境で達成している。また、多段のFETをカスケード接続したことによって生ずる温度利得変動を、補償する機能を具備している。
著者
梶原 千世里 藤本 寛子 山口 嘉一 水田 菜々子 伊藤 純子 山田 宏 山口 修
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.43-46, 2013-01-01 (Released:2013-04-23)
参考文献数
6

症例は,54歳,男性。1型糖尿病,慢性腎不全で腹膜透析を導入していた。入院当日,自宅前で倒れているところを発見され,当院に救急搬送となった。来院時は軽度の意識障害があり,血液検査上,血糖値1,452 mg/dl,血清Na濃度 107 mmol/lと高血糖,低Na血症があり,代謝性アシドーシスと炎症反応マーカーの上昇を認めたことから,感染を伴う糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis, DKA)と診断し,全身管理目的でICU入室となった。透析中の無尿症例であるため,一般的な初期治療として推奨される輸液負荷は危険と考え,心臓前負荷の評価を行い,維持輸液量で治療を開始した。また,1時間毎に血液ガス分析で,電解質,血糖値を測定し,緩徐に電解質,血糖値の是正を行い,第3病日から血液透析に移行した。慢性腎不全患者のDKAに対し,初期治療の結果を頻回に評価して電解質および血糖値を緩徐に補正することで,神経学的合併症なく軽快退院できた。
著者
山田 信夫
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.660-666, 1956-08-15 (Released:2013-03-05)
参考文献数
71
著者
岡井(東) 紀代香 薙野 晴美 山田 香 岡井 康二
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.359-368, 2006-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
23 32

ビタミンB群はこれまでいわゆる抗酸化ビタミンの範疇に分類されていなかったが, 最近一部の研究者がビタミンB群の抗酸化ビタミンの可能性を示唆する研究結果を発表している. そこで著者らはB群に属する6種類のビタミン(B1, B2, B6, B12, 葉酸, ニコチン酸)についてそれぞれのビタミンのリノール酸の過酸化脂質の生成に対する効果を塩化アルミニウム法によって分析した. その結果これらのビタミンの作用は大まかに三つのタイプに分かれ, 第一のタイプ(B1, B2, 葉酸, ニコチン酸)は過酸化脂質の生成の初期反応を促進し, その後の生成反応を抑制した. 第二のタイプのB12は初期反応に有意の効果を示さないが, その後の生成反応を抑制した. 第三のタイプのB6はすべての期間の生成反応を抑制した. 以上の結果より, ビタミンB群において過酸化脂質の生成に対してビタミンの種類や実験条件の違いによって抗酸化作用と酸化促進作用の両方の作用を示す可能性があることが示唆された.