著者
山脇 直司
出版者
日本共生科学会
雑誌
共生科学 (ISSN:21851638)
巻号頁・発行日
vol.9, no.9, pp.76-81, 2018 (Released:2019-06-17)

This article aims at clarifying and enriching the philosophy for inclusive society, opposing eugenic thought, which discriminates human beings by the inequality of ability. For that purpose, I emphasize first the value of fundamental human rights for all people, which Utilitarianism tends to neglect, and second other public values such as cohappiness, compassion and WA that includes the idea of restorative justice.
著者
山脇 直司
出版者
日本共生科学会
雑誌
共生科学 (ISSN:21851638)
巻号頁・発行日
vol.11, no.11, pp.52-58, 2020

本稿は、システム論と呼ばれる学問の潮流が共生科学にとってどのような意義と限界を持つのかを探る一つの試みである。そのために筆者は、まず筆者なりに理解する共生科学の概念と方法論を提示し、次にシステム論と呼ばれる代表的な二つを取り上げ、それがどのような内容を有し、かつ論争を引き起こしたかを紹介した上で、共生科学にとってのシステム論ならびにその対抗ヴィジョンである規範的社会理論の利点と限界を定式化し、最後に、筆者がここ20年間提唱している「グローカル公共哲学」によって、共生科学の方法論を強化したいと思う。
著者
高橋 哲哉 山脇 直司 黒住 眞 北川 東子 野矢 茂樹 山本 芳久 古荘 真敬 信原 幸弘 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

旧約聖書の「殉教」物語の検討から、ユダヤ教的「殉教」観念が靖国思想に酷似した犠牲の論理から成り立っていること、キルケゴールがアブラハムによるイサク犠牲の物語に読みこんだ「悲劇的英雄」と「信仰の騎士」の区別は厳密には成り立たないことを確認した。ニーチェがナザレのイエスに見た「根源的キリスト教」は、罪からの解放のためにいかなる贖いも求めない「犠牲の論理なき宗教」だという結論を得た。
著者
小林 傳司 山脇 直司 木原 英逸 藤垣 裕子 平川 秀幸 横山 輝雄 副田 隆重 服部 裕幸 沢登 文治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

現代社会における科学技術が、知的、物質的威力としてのみではなく、権力や権威を伴う政治的威力として機能していることの分析を行い、科学者共同体において確保される知的「正当性」と、科学技術が関連する社会的意思決定において科学知識が果たす「正統性」提供機能の錯綜した関係を解明し、論文集を出版した。また、このような状況における科学技術のガバナンスのあり方として、科学技術の専門家や行政関係者のみならず、広く一般人を含む多様なステークホルダーの参加の元での合意形成や意思決定様式の可能性を探求した。特に、科学者共同体内部で作動する合意形成様式の社会学的分析に関する著作、幅広いステークホルダー参加の元手の合意形成の試みのひとつであるコンセンサス会議の分析に関する著作が、その成果である。さらに具体的な事例分析のために、参加型のテクノロジーアセスメントにおける多様な試みを集約するワークショップを開催し、現状の成果と今後の課題を明らかにした。課題としては、全国的なテーマと地域的なテーマで参加手法はどういう違いがあるべきか、参加型手法の成果を政策決定とどのように接続する課などである。同時に、「もんじゅ裁判」を事例に、科学技術的思考と法的思考、そして一般市民の視点のずれと相克を記述分析し、社会的紛争処理一般にかかわる問題点や課題を明らかにした。本研究の結果到達した結論は、人々の現在及び将来の生活に大きな影響を与える科学技術のあり方に関しては、政治的な捕捉と検討という意味での公共的討議が必要であり、そのための社会的仕組みを構想していく必要があるということである。こういった活動の成果は、最終年度にパリで開催された4S(Society for Social Studies of Science)国際大会でセッションを組んで報告された。
著者
山脇 直司
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.19-24, 1999-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
26

本稿は, 自然科学とも文芸批評とも異なる社会科学の学問的特徴 (=学問性) を, 学問史的考察と基礎的諸概念をもとに浮き彫りにする試みである。
著者
松本 茂 山脇 直司 青沼 智
出版者
日本コミュニケーション学会
雑誌
スピーチ・コミュニケーション教育 (ISSN:13470663)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.33-58, 2007-03-31 (Released:2017-11-30)

これまでコミュニケーション教育(教育におけるコミュニケーションを含む)の実践に関する哲学的・理念的討議があまりに少なかったという認識に基づき、「CAJコミュニケーション教育研究会」は、コミュニケーション教育が立脚すべき理念・哲学・理論の可能性を、コミュニケーション学および隣接する学問分野の専門家との対話によって模索しております。コミュニケーション教育科目を担当する講師が、それぞれの経験則に基づいて無批判に話し上手・聞き上手を育てていくということの繰り返しを省察し、理念的・哲学的・理論的な討議を通じ、地に足の着いたコミュニケーション教育の実践のための基盤作りを目指しております。今回の特別パネルでは、公共哲学の第一人者の山脇直司氏をお迎えし、公共の概念、公共哲学が目指しているものなどについて語っていただいた後に、指定討論者、そして参加者の皆さんとともに、「公共性」「パブリック」という視点から公共哲学とコミュニケーション教育との接点を探りたいと考えました。大学等でPublic Speakingを教えている方に、publicをどう捉えたらよいのかといったことを考えていただくきっかけにもなると考えました。また、コミュニケーション研究者およびコミュニケーション教育実践者であるわれわれが、公共哲学の第一人者とパブリック・コミュニケーションを実践する場としても捉え、特別パネルを開催しました。