著者
松原 永吏子 山崎 孝 伊藤 直之 堀 秀昭 山門 浩太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0110, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】肩関節疾患における理学療法において結帯動作の改善に難渋することは多い.一般的に結帯動作は肩甲上腕関節での伸展-水平伸展-内旋の複合運動とされているが,結帯動作の獲得には肩甲上腕関節の可動域だけではなく肩甲胸郭関節の運動が不可欠である.そこで肩甲胸郭関節に着目し,結帯動作に必要な運動について検討した.【方法】肩関節に異常のない健常成人40名,利き肩40肩を対象とした(男性20名,女性20名,平均年齢24.4歳).端坐位での安静時・L5レベル・Th7レベルでの結帯動作における脊柱と肩甲骨棘三角間距離(以下,棘三角距離),脊柱と肩甲骨下角間距離(以下,下角距離),spino-trunk angle(以下,S-T角),肩甲骨下角の挙上距離(以下,下角挙上)を体表より測定した.検討項目は,安静時からL5と安静時からTh7での肩甲骨の移動距離を男女別と男女間で比較検討した.統計処理は対応のないt検定を用い危険率5%で検定した.【結果】1.男性の肩甲骨の位置安静時・L5・Th7のそれぞれの肩甲骨の位置は,棘三角距離8.6±1.0 → 8.9±1.0 → 8.9±1.0 cm,下角距離10.2±1.1 → 9.6±1.5 → 9.5±1.4 cm,S-T角97.7±4.2 → 93.7±3.3 → 90.7±2.4°であった.安静時からL5と安静時からTh7のそれぞれの下角挙上は2.5±1.1 → 3.8±1.5 cmであった.L5とTh7での肩甲骨の移動距離の比較では,有意なS-T角の減少(p=0.005)と下角挙上(p=0.002)が認められた.2.女性の肩甲骨の位置肩甲骨の位置は,棘三角距離7.9±0.9 → 7.9±0.9 → 7.8±0.8 cm,下角距離9.2±1.2 → 8.6±1.2 → 8.4±1.2 cm,S-T角94.3±2.9 → 93.7±3.3 → 92.4±3.5 °であった.安静時からL5と安静時からTh7のそれぞれの下角挙上は1.4±1.0 → 2.4±1.3 cmであった. L5とTh7での肩甲骨の移動距離の比較では,有意な下角挙上が認められた(p=0.007).3.男女間によるL5とTh7間の移動距離の比較移動距離の比較では男性にS-T角の有意な減少が認められた(p = 0.004).【考察】結帯動作は通常L5レベルとされるが,女性の更衣動作等においてはTh7レベルで行われることもあり様々な高さでの動きが日常生活に必要である.肩甲胸郭関節の運動を男女別に検討したところ,結帯動作における肩甲骨の運動は男女で異なっていた.男性においては肩甲骨の下方回旋と挙上が,女性は挙上が特に重要と考えられた.より高位への動作を行うためには,肩甲胸郭関節の大きな運動が必要であることが示唆されたことから,肩関節疾患における結帯動作の改善のためには,肩甲胸郭関節の可動性も含めた治療が必要と考える.
著者
山崎 孝 伊藤 直之 石田 登貴代 三谷 孝之 菅野 智也 中川 哲朗 松井 文昭 増田 真代 加畑 昌弘 大谷 尚之 堀 秀昭 山門 浩太郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【目的】甲子園大会でのメディカルサポートを皮切りに、高校野球地方大会において各県士会でのメディカルサポートの取り組みが報告されている。しかし、中学生を対象としたサポート報告は少ない。今回福井県理学療法士会は、中学ボーイズリーグの大会期間中に選手のメディカルチェックを実施し、スポーツ障害予防の啓蒙活動を試みたので報告する。<BR>【方法】大会は日本少年野球連盟公認の福井大会で北陸・東海・関西地区から28チーム、906名の選手が参加した。平成18年7月22日~24日に行われ、試合会場は初日が10会場、2日目は4会場であった。サポートは初日と2日目の土・日曜日に、1会場で実施した。その会場で試合があるのは初日が6チーム、2日目が4チームで、メディカルチェックは当日に希望があったチームに試合の合間を利用して実施した。今回サポートに参加したPT は福井県アスレチックリハビリテーション研究会に参加しているPTで、初日9名、2日目13名であった。メディカルチェックの実施項目について、握力測定はOG技研社製デジタル握力計にて行い、肩関節外旋・内旋筋力は2nd肢位にてアニマ社製ミュータスF-1を用いて測定した。ROMは肩関節2nd内旋・外旋、肘関節屈曲・伸展、前腕回内・回外、SLR、股関節内旋の可動域とし、ゴニオメーターを用いて5°単位で両側測定した。FFD、上体おこしは1cm単位で測定し、腸腰筋と大腿四頭筋のタイトネスの有無と、しゃがみ込み動作の可否を調査した。実施方法は筋力・上肢ROM・下肢ROMの3セッションにPTを配置し、所要時間の短縮を図った。選手には測定中に値を伝え、投球側に機能低下がみられた場合は投球障害との関連性について説明し、測定後に集団でストレッチ指導を行った。また、大会参加全チームにストレッチ方法を記載した冊子とオーバーユースによる投球障害ついて説明したリーフレットを開会式の日に配布した。<BR>【結果】1.メディカルチェックを実施できたチーム数は初日4チーム、2日目が2チームで、両日での選手数は76名であった。2.メディカルチェックの結果では肩関節内旋(投球側38°、非投球側56°)、肘関節屈曲(投球側144°、非投球側148°)、肘関節伸展(投球側0°、非投球側4°)、前腕回内(投球側81°、非投球側88°)の可動域が非投球側に比べ、投球側が有意に低下していた。また、投球側の肘関節に-5°以上の伸展制限のある選手が26%にみられ、その半数は投手であった。<BR>【考察】選手・指導者・父兄が多く集まる大会期間中を利用してスポーツ障害予防の啓蒙を行った。甲子園出場を目指して中学から硬式野球をしている選手の4人に1人の割合で投球側の肘関節拘縮がみられていた。これは少年期からのオーバーユースが原因と考えられるため、少年期からの投球障害予防の啓蒙が求められる。今後はスタッフ数を増員し、より多くのチームに啓蒙していくことが課題である。<BR><BR><BR><BR>