著者
川口 清泰 川口 清泰
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.95-103, 2009

以下は、ハーリー・グランヴィル・バーカー著『シェイクスピア劇への序文』第3巻『ハムレット』(1937年出版)のなかの、3つの項目「ハムレット」、「ハムレットの外観と行動」、「ハムレットとガートルード」の翻訳である。バーカー(1887〜1946)は、イギリスの演出家・俳優であり、彼自身が演出や演技をする上で生じた様々な問題を解こうとしてこの書物を書いた。現在のシェイクスピア学からすれば首をかしげたくなる記述もあろうが、全体としては非常に鋭い指摘に満ちている。決して読みやすい英文ではないが、味のある文章である。以下の翻訳では、ハムレットが周囲の人物との関係を悪化させていく過程が描かれる。
著者
川口 清泰
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和短期大学紀要 (ISSN:02862360)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.302-292, 1996-12-10

シェイクスピアの問題喜劇『尺には尺を』の主要人物三人、アンジェロ、イザベラ、公爵には、人物としてさまざまな欠陥が感じられる。とりわけ、性に対して否定的であるという共通点を持つ。ルーシオ、オーヴァーダンなど性に深くかかわるコミカルな人物たちは、あまりに放埒である。劇の後半から登場するマリアナは、「ベッド・トリック」に賛成することによって性にかかわり、愛するアンジェロと結婚するが、彼女こそ作者の共感を得ている唯一の人物である。真撃な愛ゆえに夫の助命を願う彼女には、理屈の勝り過ぎた主要人物や無法にもなり得るコミカルな人物たちには向けぬ作者の暖かい目が注がれる。