著者
岸本 泰士郎 リョウ コクケイ 工藤 弘毅 吉村 道孝 田澤 雄基 吉田 和生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.574-582, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
24

すべての医学領域において,疾患の重症度の評価は重要である。しかし,精神科領域では疾患の重症度を反映するようなバイオマーカーが不足しており,診断,治療,さらに新薬の開発などで問題が生じている。近年,情報通信技術(ICT)の発展が目覚ましく,こういった問題の解決にICTを活用する試みが行われている。その一つにテレビ電話を用いた中央評価があり,評価者によるバイアスを取り除くには有効な手段である。しかし,評価尺度そのものにも妥当性,信頼性などの問題が含まれている。一歩先のアプローチとして,ウエアラブルデバイス等を用いた診断支援技術の開発が複数報告されている。PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry Technology)は日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として始まった。慶應義塾大学を中心に7社が参画し,それぞれの会社の技術を持ち寄り,複数のデバイスから得られる情報を基に精神症状を定量することを目指している。また,UNDERPIN(Understanding Psychiatric Illness through Natural Language Processing)では科学技術振興機構(JST)CRESTの援助の下,静岡大学とのコラボレーションによって自然言語処理を利用した言葉(話し言葉や書き言葉)に現れる精神症状の特徴量の抽出を行い,精神疾患の予防・早期介入が可能になるような技術開発を目指している。
著者
高宮 彰紘 田澤 雄基 工藤 弘毅 岸本 泰士郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.15-23, 2019-01-01

精神科診断は主に患者の訴える症状をもとに行われており,脳画像などの生物学的な検査は診断補助ではなく器質性疾患の除外目的で行われることが多い。近年は主に機械学習といった人工知能技術を脳画像検査に応用し,精神疾患の診断や治療反応に用いるための研究が行われている。人工知能技術は,個別の症例の診断補助となり得るうえ,精神疾患の病態解明に寄与する可能性がある。