著者
深谷 達史 戸部 栄子 立見 康彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.414-428, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
30
被引用文献数
3

説明行為に関する知識である説明スキーマは, 説明的な文章の読解と表現に共通して働く知識である。例えば, 説明的な文章が主に「問い-説明-答え」の要素からなるという知識に基づき, 説明的文章の内容を整理して読んだり, 書いたりできると想定される。本研究では, 小学4年生の1学級を対象に, 説明スキーマに基づく方略使用を促し, 論理的な読み書き能力を育成することをねらいとする, 2つの説明的文章の単元の実践を行った。2つの実践では, 単元の前半に説明スキーマを明示的に教授し, 問いの文を同定した上で, 説明と問いへの答えをまとめるなど, 説明スキーマを活用して教科書の教材を読み取らせた。単元の後半では, 問い-説明-答えの要素に基づき, 授業時間外に読んだ関連図書の内容を説明する文章を作成した。また, 実践においては, ペアやグループで読んだことや書こうとしていることを説明, 質問しあう言語活動を行い, 内容の精緻化を図った。質問紙やテストによる調査結果から, 実践後には説明スキーマを活用する態度やスキルを表す得点が高くなったことが示された。今後, 他教科や探究的な学習においても説明スキーマに基づく指導を展開していくことが期待される。