著者
木嶋 利男
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.14-18, 2011 (Released:2011-09-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1 1

栃木県に伝わるユウガオの株元に長ネギを混植する伝承技術を応用し,ネギ属植物に親和性のある拮抗細菌(Burkholderia gladioli)を接種し,これを混植することで,ユウガオつる割病(Fusarium oxysporum f.sp. lagenariae),キュウリつる割病(Fusarium oxysporum f.sp. cucumerinum),トマト萎ちょう病(Fusarium oxysporum f.sp. lycopersici),などの土壌病害を防除する方法を開発した。防除効果の発現機構としてはB. gladioliの産生するピロールニトルリン,ネギ属植物が産生するアリシンがFusarium属菌を抗菌することが考えられた。また,ネギ属植物と野菜との混植が土壌微生物相を多様化し,土壌病原菌の活動を抑制したと推察した。また,ウリ類をムギ類や雑草などで草生栽培する伝承技術から,うどんこ病に重寄生する重寄生菌Ampelomyces quisqualisを雑草で増殖させ,雑草を重寄生菌のバンカープランツとして利用し,うどんこ病を防除する方法を検討した。
著者
田渕 浩康 河原崎 秀志 桑村 友章 山田 和生 横田 克長 宮島 一人 鈴木 史忠 後藤 正夫 木嶋 利男
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.69-78, 2017-09-30 (Released:2019-05-21)
参考文献数
31

有機農法,自然農法による畑地の連作栽培の可能性とその特性を明らかにすることを目的に,1996年秋作より,有機物のみの連用によるキャベツの連作栽培試験を実施した.その結果,10年間の平均収量は,化学肥料(化肥)区で22,700kg/haに対して,牛糞堆肥(牛糞)区で22,800kg/ha, 草質堆肥(草質)区で22,400kg/haであった.春作における収量推移は開始当初,化肥区に比べて堆肥区で収量が低く,1年目から3年目の間にいずれの処理区も減収していった.4年目からはいずれの処理区も増加に転じ,連作5,6年目には収量が回復しつつ,それ以降は処理区間の収量差はみられなかった.秋作では,開始から5年間の収量は化肥区で16,200-32,700kg/haに対し,牛糞区で25,100-39,300kg/ha, 草質区で18,100-36,600kg/haと比較的安定し,春作のような1~3年目の減収はみられなかった.6年目以降の収量は全体的に低下していき,堆肥区に比べて化肥区で低いことが多かった.主な発生病害は,春作ではRhizoctonia solaniによる株腐病,秋作ではSclerotinia sclerotiorumによる菌核病であったが,連作7年目に激発した菌核病被害が8年目以降はほんどみられなくなる「発病衰退現象」が観察された.土壌化学性では,有機物の連用により可給態窒素や有効態リン酸含量の増加が確認された.牛糞堆肥の連用ではカリウムの蓄積による塩基バランスのくずれ等に配慮が必要であることが示唆された.
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.p570-575, 1987-10
被引用文献数
2

1985年5月, 栃木県今市市の鉢植えおよび苗床のエキザカム (Exacum affine Balf.) で菫葉に萎ちょう, 枝枯れを生じ, 株枯れを起こす未記載の病書が見出された。病株では地際部より発病枝に至る茎内部に褐変が認められた。この褐変部より分離された糸状菌は PDA 培地上で白〜白橙色の菌そうを形成し, 分生胞子は Verticillium 型および, Gliocladium 型の分生子柄から生じるフィアライド上に形成され, 子のうはこん棒〜円柱状で, 2胞の子のう胞子を8個含んでいた。これらの性状より, 本菌は Nectria gliocladioides Smalley et Hansen と同定した。また本菌によりエキザカムに原病徴が再現されたので, 本病をエキザカム株枯病 (stem blight of exacum) としたい。本菌による植物病害はこれまで記載されていないが, 今後土壌病原菌としても十分な注意が必要と考えられた。
著者
奈良 吉主 加藤 孝太郎 河原崎 秀志 田渕 浩康 後藤 正夫 寺岡 徹 有江 力 木嶋 利男
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-41, 2008-04-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
35
被引用文献数
1

様々な植物を利用して,土壌から分離した植物内生細菌をトマトに接種し,青枯病発病抑制効果と生育促進効果を指標に選抜を行った。その結果選抜された3株のうち,イチゴを用いて捕捉したKSR01を種子処理した場合に,トマトの生育促進効果と青枯病発病抑制効果を併せ示すことを見出した。KSR01は青枯病菌に対する抗菌物質を産生しなかったので,青枯病発病抑制効果は,抵抗性誘導によることが示唆された。KSR01は種子処理した場合にトマト茎部から再分離されるため,組織に内生的に定着することが確認された。菌体脂肪酸組成,16S rRNA塩基配列の解析および細菌学的性質の調査から,KSR01をHerbaspiyillum huttiensisであると同定した。
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.531-539, 1987-10-25
被引用文献数
2

Fusarium wilt of bottle gourd (Lagenaria siceraria Standl.) caused by Fusarium oxysporum f. sp. lagenariae is a serious and wide-spread soil-borne disease in Japan. In some fields of Tochigi prefecture, welsh onion (Allium fistulosum L.) has been mix-cropped customarily as an associate crop with bottle gourd. Those fields showed little occurrence of the disease, in spite of continuous cropping of bottle gourd. This phenomenon suggested the relation between mix-cropping with welsh onion and control of the disease. From the subterranean parts of the welsh onion, Pseudomonas gladioli were isolated frequently, and some of these bacterial isolates showed antifungal activity to F. oxysporum f. sp. lagenariae on BPA plates. But as they were usually pathogenic to roots of welsh onion, we had to select, for practical use, isolate that antagonized strongly to F. oxysporum f. sp. lagenariae, had no pathogenicity to welsh onion or other plants, and multiplied well on subterranean parts of welsh onion. Such an isolate P. gladioli M-2196 (isolated from Miltonia sp.) was selected from 90 isolates of Pseudomonas spp. from 20 kinds of plants. For the purpose of biological control of Fusarium wilt of bottle gourd, we cultured P. gladioli M-2196 on BP broth up t0 10^9 cells/ml, dipped the root systems of associate crop (welsh onion or chinese chive) in the cultural suspension for five min., and then bottle gourd was mix-cropped with associate crop in infected soil. With this treatment, occurence of Fusarium wilt was districtly suppressed. This mix-cropping using associate crop with P. gladioli M-2196 seemed to be a beneficial technique for biological control of soil-borne fungal diseases.
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.531-539, 1987
被引用文献数
9

ユウガオつる割病はユウガオの重要な土壌伝染性病害であるが,その連作にかかわらず,発生が認められない圃場が存在し,これらの圃場ではユウガオと共にネギの混植が慣行的に行われている例が多かった。そこで,この原因を調べたところ,現地のネギ地下部からは高率に<i>Pseudomonas gladioli</i>が分離され,これらはユウガオつる割病菌(<i>Fusarium oxysporum</i> f. sp. <i>lagenariae</i>)に対して高い抗菌性を示した。そこで,<i>Pseudomonas gladioli</i>を中心に,20種の植物より分離した<i>Pseudomonas</i>属細菌4種90菌株について,つる割病菌に対して強い抗菌性を有し,かつネギの地下部に定着性のある菌株を探究したところ,<i>P. gladioli</i> M-2196が選抜された。ネギおよびニラの地下部に本菌株を浸根接種し,ユウガオつる割病汚染土にユウガオと混植したところ,つる割病の発病が著しく抑制され,その実用性が確認された。以上の結果,抗菌性を持つ細菌と定着植物を用いた土壌病害の生物的防除の可能性が明らかになった。