著者
角南 隆史 杠 岳文
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.195-199, 2012-03-15

はじめに 「健康日本21」の中では,多量飲酒者を減らし「節度ある適度な飲酒」を普及させることなどを呼びかけているが,これまでアルコール依存症の患者に対する断酒治療以外に,具体的な対策はほとんど取られてきていない.ちなみに「健康日本21」を含めて,通常わが国における多量飲酒者は,純アルコールで1日60グラム以上(具体的には1日に日本酒約3合,あるいはビール中瓶3本以上)の飲酒者を指す. このため筆者らは,将来アルコールが健康被害を起こす可能性の高い多量飲酒者,あるいは既に健康被害が及んでいる多量飲酒者に対する早期介入のためのプログラムとツールから成るパッケージ「HAPPYプログラム」を作成した.これは,AUDIT(The Alcohol Use Disorders Identification Test)を用いて飲酒問題の重症度を評価し,教育ビデオや補助教材等を用いる早期介入プログラムである.アルコール問題の早期介入に用いられるブリーフ・インターベンションについては,その有効性を示す数多くの報告が海外でなされているが,わが国ではまだ研究が始まったばかりである. 本稿では主に,多量飲酒者への早期介入と,その技法としてのブリーフ・インターベンションについて述べる.
著者
村上 優 杠 岳文 比江島 誠人 遠藤 光一 西村 直之
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.206-211, 2000-05-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
9

薬物依存の専門医療機関の必要性は国の政策医療として取り上げられるところであるが, 現在では国立に専門病棟が1ヵ所で, アルコールとの併用を入れると国立には2ヵ所, 公立で3ヵ所, 民間を入れても10ヵ所にも満たないのが実情である. 医療的には薬物依存もアルコール依存の治療システムの延長線上に位置していると考えられるにもかかわらず, これまでその特殊性が強調される傾向にあった. 肥前療養所においてアルコール依存の治療システムに追加する形で薬物依存の治療を検討し, 薬物依存リハビリテーションプログラムDRPをアルコール病棟に併設した. そうすれば薬物依存への専門治療を担いうる施設は飛躍的に増加することが期待できるからである. この際に薬物依存治療における思春期心性への配慮と, 処罰モデルから治療モデルへの移行(ダイバージョン), 自助グループの重要性を強調した.