著者
清田 洋正 小池 貴徳 東 栄美 佐藤 靖 折谷 隆之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.96-99, 2001-02-20
被引用文献数
1

ジャスモン酸メチルは植物の成長抑制に働くアブシジン酸様の植物ホルモン様物質である.その代謝不活性化は, 11位或いは12位の水酸化から始まると推定されている.実際, 単離或いは合成された11-(或いは12-)水酸化体は不活性である.この代謝をブロックし, より高活性なアナログを開発する目的で, 11位のモノフルオロ置換体を設計した.合成(ラセミ体)は, 既に報告した12-OH体の合成経路に準じ, ノルボルネンを出発原料として用いて行った.鍵段階のフッ素化反応にはDASTを用いた.イネ芽生えの第二葉鞘伸長阻害試験では, このアナログはジャスモン酸メチルの約10分の1の活性であった.ハツカダイコン芽生えの根伸長阻害試験でも活性は弱かったが, 低濃度では逆に伸長を促進した.12-OH体も同様の効果を示すことが知られている.これらの結果から, 導入したC-F結合は, 望むC-H結合のミミックではなく, C-OH結合のミミックとして働き, 活性が低下したものと考えた.