著者
林 美都子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2019 (Released:2019-10-28)

近年、艦隊や刀、細胞などさまざまなモノが擬人化され人気を博しているが、記銘語を擬人化することにより、記憶は改善されるのであろうか。大学生30名を対象に、漢字2文字の36単語を用いて実験を行った。記銘語の読み方を説明する「読み方説明文」条件、記銘語を本来の意味で用いて短い物語を作成する「物語作文」条件、記銘語を擬人化して短い物語を作成する「擬人化作文」条件を設け、それぞれに12単語ずつ割り振った。練習試行の後、1単語20秒で作文を求め、ディストラクター課題を実施した後、約5分間の自由再生テストを実施した。その結果、擬人化作文の再生数が最も多く、次いで物語作文であり、読み方説明文条件は最も少なかった(F(2,58)=45.41, p<.05; Mse=2.55, p<.05)。記憶の精緻化方略の一種として記銘語を用いて物語を作成する物語法により記憶成績が改善することはよく知られているが、本研究の結果、擬人化方略はこの物語法を上回る効果をもたらすことが示された。
著者
李 知恩 林 美都子 野坂 政司
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.53-62, 2011

本研究では、キネティック・タイポグラフィの感性に着目し、キネティック・タイポグラフィの感性を理解するために一つの方法としてその感性値を統制する尺度が必要であると考え、音楽用感性評定尺度(AVSM)によるキネティック・タイポグラフィ測定を試みることで、キネティック・タイポグラフィ用感性評定尺度としての使用可能性を検討した。本調査では、音楽用感性評定尺度の24項目の形容語によるキネティック・タイポグラフィの印象評価を行った。キネティック・タイポグラフィの調査は2010年5月から8月まで、北海道教育大学函館校の大学生1〜2年生を中心とした。1分の長さに統制した音楽を添えた場合(4種)・音楽を添えない場合(4種)の8種、ユーチューブにアップロードされている既存2種のキネティック・タイポグラフィの音楽を添えた場合(2種)・音楽を添えない場合(2種)の4種、総12種類(総736件)のデータを収集した。キネティック・タイポグラフィのKMOの測度とBartlettの検定を行った結果、総736件の独立変数の要因分析結果に対する解析KMOの標本妥当性の測度は0.862,Bartlettの球面性検定有意確率は0.01以下であった。また、因子数に5を指定して主因子法・プロマックス回転による因子分析を行ったところ、固有値は、6.88,3.78,2.82,2.26,1.56,0.97…というものであり、固有値1以上を採用して5因子構造による分析が妥当であると考えられた。因子負荷パターンはAVSMの24項目の因子分析結果と一致する明確な5つの因子と因子間相関が得られた。なお、回転前の5因子で24項目の全分散を説明する割合は、65.10%であった。また、各尺度の内的整合性を検討した結果、「高揚」下位尺度でα=.92、「強さ」下位尺度でα=.89、「荘重」下位尺度でα=.90、「親和」下位尺度でα=.80、「軽さ」下位尺度でα=.79といずれの尺度においても高い内的整合性を有していることが確認された。さらに、キネティック・タイポグラフィの音楽有無及び、時間の長さ(1分、2分)による相違を分析した結果、いずれもAVSMの24項目の因子分析結果と一致する明確な5つの因子が得られ、いずれの尺度においても比較的高い内的整合性を有していることが確認された。したがって以降の研究において、キネティック・タイポグラフィの感性評価をAVSMで行うことに大きな問題はないと考えられる。
著者
青木 然 川村 純平 後藤 航大 島 奈穂 吉田 拓功 林 美都子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.41, 2022 (Released:2022-04-20)

本研究では公園でのごみのポイ捨て行動について、Dark Triad(マキャベリアニズム、自己愛傾向、サイコパシー傾向の3特性を総称した概念)と呼ばれるパーソナリティ特性からの説明を試みた。大学生130名程度を対象に、実験参加者には9枚の公園の写真を提示し、その写真に対して、“どれだけポイ捨てを行いやすいか”を5件法で回答を求めた。また、Dark Triad尺度であるSD3-J(下司・小塩, 2017)を用いて、上位群と下位群に分け、Dark Triad得点の上位群と下位群における‘‘どれだけポイ捨てを行いやすいか”得点にt検定を行ったところ、サイコパシー傾向とDark Triad全体では、各上位群が各下位群よりも比較的ポイ捨てを行いやすいことが明らかとなった(t(45)=2.37 , p<.05 ; t(40)=1.92 , p<.10 )。Dark Triadの高い者は自分本位であるが故に周囲を気にせずポイ捨て行動をしやすいことが考察された。今後は紙媒体での質問だけではなく、実際のポイ捨て行動からも検討していく必要性があるだろう。
著者
後藤 航大 青木 然 川村 純平 島 奈穂 吉田 拓功 林 美都子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2022 (Released:2022-04-20)

川村ら(2021)は、ポイ捨て写真に対する印象を因子分析を用いて、「辟易」「敬意」「世間の目」に分類したが、それぞれどの程度影響を与えているのかは示されていなかった。そこで本研究では、重回帰分析を用いて明らかにすることを目的とした。実験方法は、川村ら(2021)と同様であった。「ポイ捨てのしやすさ」を従属変数、「辟易」「敬意」「世間の目」を独立変数として、ステップワイズ法による重回帰分析を行った結果、「辟易」と「世間の目」が「ポイ捨てのしやすさ」に関連していることが明らかになった。特に「辟易」の影響が強く、ポイ捨てのしやすさとの間に正の影響が見られ、「世間の目」においては負の影響が見られた(y=1.305+0.121x1-0.042x2)。本研究の問題点として、調整済み決定係数の値が低いため、今後も検討の余地がある(調整済R2乗 = 0.095)。
著者
林 美都子
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.25-32, 2020-08

国際化やIT化が推進される現代社会においては,西暦の利便性が高く,元号の不自由さが強調されることもあるが,元号にどのような心理的機能があるのかについては十分な検討が行われていない。本研究では,林(2020)にて平成生まれの大学生64名を対象に行ったのと同じ,大正,昭和,平成,令和の元号イメージに関する調査を,昭和生まれの社会人24名を対象に,潜在的な好感度を測定するIATと人名に関する好感度アンケートとを用いて行った。本調査の結果,昭和生まれの社会人においても平成生まれの大学生同様(林,2020),自分の生まれた元号は内心特別に好まれ,また,元号によって主観的に「時代」に意味づけやイメージづけがなされており,元号の心理的機能は昭和世代においても健在であることが示唆された。さらに,調査時点で最新の元号である令和に対するIAT値がもっとも高かったことから,「元号には,赤子が生まれたときに名前をつけ,その健やかな成長と未来を願うのと類似の心理的な機能が含まれている」(林,2020)ことがより明確に支持されたと考えられる。
著者
佐藤 あやの 西野 邦彦 西野 美都子 (林 美都子) 仁科 勇太 Yu Sidney
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

これまでに、ゴルジンタンパク質群のひとつであるgiantinをノックダウンすると分泌が上がること、ゴルジ体の構造に変化が起こることを示した。本研究課題では、この現象に関わる分子機構を明らかにすることを最終的な目的とし、電子線トモグラフィーなどを用いゴルジ体の構造を詳細に解析した。また、この間、分泌調節に関わる新規小分子を発見したため、新規分子の特徴付けを合わせて行なった。本研究課題の期間は終了したが、引き続き、これらの解析や新規分子のターゲットの探索を行う予定である。