著者
柳沼 宏寿
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.417-424, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
13

本研究の目的は,現代社会の様々な領域に指摘される「ヴァルネラビリティ(脆弱性)」に対して,映像メディア表現がそれを乗り越え,「レジリエンス(回復,復元力)」へつながる構造を開示することである。本論では,昭和中期に興った映画鑑賞に関する実践「本宮方式映画教室運動」に焦点を当てる。それは,劣悪な教育環境下にあった戦後の日本において,学校・保護者・地域社会が連携して構築した教育システムである。その原動力は,母親を中心として組織された「青いえんぴつの会」であった。本論では,まず,当時本宮小学校教諭として実践を推進した岡部司(おかべ つかさ)の著書や,当時の母親達から情報を得ながら,「本宮方式」の方法論やその教育的意義を浮き彫りにした。また,それをマクルーハンのメディア論の視点から分析し,ヴァルネラビリティからレジリエンスを引き出す手がかりを得ている。