著者
吉良 芳恵 井川 克彦 村井 早苗 久保田 文次 斎藤 聖二 櫻井 良樹 久保田 博子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1、宇都宮恭三氏から拝借した宇都宮太郎(陸軍大将)の資料(日記15冊と書類約1700点、書簡約4600通、写真約300点等)をもとに、宇都宮太郎関係資料研究会を立ち上げ、平成15年度から1点毎の資料整理を行って、書類と書簡の目録・データベースを作成した。2、全日記の解読・翻刻(入力作業)を行い、書類や書簡と照合しながらその内容の分析を行った。その過程で、中国での情報収集活動をもとに、宇都宮が陸軍のアジア政策を立案し、中国革命への種々の関与・工作を行ったこと、諜報活動資金を陸軍機密費だけでなく岩崎久弥からも得ていたこと、二個師団増設問題で妥協工作を行ったことなど、新しい歴史事実が明らかとなった。中でも、朝鮮軍司令官時代の3・1独立運動時の対応(堤岩里事件等)や、「武断政治」的統治策を批判して「文化政治」的懐柔工作を行ったことなどは、従来知られていなかった事実でもあり、日本の植民地研究に大きく寄与することになるだろう。また陸軍中央の人事についても具体的背景が判明したことは収穫であった。3、書簡の一部(特に上原勇作書簡)の解読・翻刻を行い、「長州閥」と「反長州閥」との闘いの実態を明らかにすることができた。4、日露戦争期における英国公使館付武官としての役目や行動を、英国調査や書類の解読で明らかにすることができた。特に、英国の新聞に英国陸軍軍制改革案を投稿したことや、明石工作などの対露情報工作資金の実態が判明したことは、今後の日露戦争研究に寄与することになるだろう。5、佐賀県での調査により、宇都宮太郎の父の切腹事件が幕末維新期の佐賀藩の藩政改革に関係していることを確認できた。6、書類中の任命関係資料により、人物辞典等の誤りを訂正することができた。7、平成17年2月26日に日本女子大学で国際シンポジウム「宇都宮太郎関係資料から見た近代日本と東アジア」を開催し、招聘した英国や中国の研究者等と共に、宇都宮太郎関係資料の歴史的価値を、そのアジア認識を含めて、広く学会に紹介した。8、岩波書店から2007年4、7、11月に3巻本として宇都宮太郎日記を刊行することになった。
著者
櫻井 良樹
出版者
麗沢大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究での基礎データとなる、関東地方7府県における、(1)1899年から1939年までに11回行われた府県会議員総選挙データの収集、および(2)1902年から1942年までに15回行われた衆議院総選挙データの収集は、95パーセント程度完了した。残りの5パーセントはデータの基礎となる公文書・新聞などが失われてしまったため、あらたな史料が発見されない限り収集は不可能と思われる。県別に述べると、群馬・埼玉・東京・神奈川については、当落選者の各郡単位ごとの得票数をほとんどを把握することができた。栃木については1904年衆議院総選挙での候補者の郡ごとの得票数が不明、千葉は明治時代における県会議員総選挙での落選者データおよび1912年衆議院総選挙での候補者の郡ごとの得票数が不明であり、茨城は明治時代の県会議員選者での落選者データおよび6回分の衆議院総選挙での候補者の郡ごとの得票数が不明である。各候補者の所属政党についても、異説は存在するが、ほぼつかむことができた。以上の作業は、各県の公文書館や県立図書館での調査によった。データのパソコンへの入力を現在続行中であり、これは収集したデータのほぼ半分まで進んでいる(茨城・栃木・群馬・千葉が完了)。しかし、まだ確認作業などにしばらく手間取ることと思われる。したがってデータを使用した分析については、これからの課題となる。ただし作業の過程で、県単位の分析よりも郡単位の分析が有効と思われること、所属政派については政友派・憲政民政派・第三勢力・中立その他の4カテゴリーに分けて行うのが適当であることに気がついた。また県会議員の所属政派が時代を下るにしたがって明瞭になっていく傾向があることを実感することができた。なお東京について、収集したデータをもとに4月1日に首都圏形成史研究会で報告する予定である。これから数年かけてデータベースの整理と分析を続ける予定である。