著者
毛利 恵美子
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年、様々な機能を付加した微粒子の開発が盛んに行われているが、これらの微粒子の付加価値を高める為には、微粒子から成る高次構造の構築が不可欠である。そこで、本研究では、特に気水界面における高分子グラフト微粒子が形成する2次元構造体(単粒子膜)の構造形成について調査した。昨年までの成果により、グラフト高分子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)用いた際には、その分子量によって単粒子膜構造が大きく変化し、粒子間距離の変化等からPMMA鎖が気水界面で比較的拡がった構造をとっていることが示唆されている。本年度は、この興味深い現象をより詳細に検討する為に、グラフトする高分子の種類を変化させ、高分子グラフト粒子膜の科学に関する一般性を追求した。その結果、メタクリレート系の高分子を粒子表面に導入した際には、PMMAの場合と同様な傾向が観察され、高分子鎖が気水界面で比較的拡がった構造をとることが示唆された。一方、ポリスチレンを粒子表面に導入した場合には、π-A等温線等の結果より、気水界面で高分子鎖がコンパクトな状態で存在していると推察された。表面に高分子鎖を持たない粒子系においては、粒子表面の親水性・疎水性が気水界面での粒子間の反発力を決定付ける大きな要因とされているが、上記の高分子修飾微粒子系においては、粒子間隔を決定している要因は、高分子鎖の拡がりであると考えられる。さらに、これらの高分子修飾微粒子からなる単粒子膜を材料とするため、モノマーを共展開し、気水界面上で光重合を行うことにより、配列構造を含む高分子フィルムの調製をおこなった。このように、本研究課題では、高分子グラフト微粒子の気水界面における構造の一般特性を明らかにするとともに、機能性材料の作成を試みた。