著者
伊藤 驍 渡辺 康二 北浦 勝 塚原 初男 長谷川 武司
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

3年間にわたって資料収集・調査観測した結果について整理し、成果の取りまとめを行った。雪の観測と並行して研究を進めているため現在も一部作業継続中のものがあるが,今年度の主要実績は次の通りである。(1)前年度行った秋田県の雪崩危険箇所の調査解析に引続き,今年度は宮城県の場合について資料収集を行い,発生要因8つを抽出して日本海側と太平洋側に面した両県の危険度や地域的特徴について多変量解析を適用して比較検討した(伊藤)。(2)雪崩と同様,地すベりについても宮城県の危険箇所に関するデータを収集し,両県における危険度や地域特性を整理した。特に危険度の大きいところはいずれも特別豪雪地帯に位置し,比較的高標高地で長大な斜面をもつところに集中するということが判明した(伊藤)。(3)地すベり冠頭部での雪気象観測を引続き行った。またこの観測における問題点を解決し,データ収集のテレメタリングシステムを確立させた。本研究によって開発された観測システムは次年度より横手市で採用されることが内定した(長谷川,伊藤)。(4)雪崩発生要因の一つとして斜面雪圧を重視し観測を行ってきた。この雪圧は斜面上の局所的凹凸地形に大きく影響され,山形県内ではこの地形のところで地すべりと雪崩危険箇所が重複していることが確認された(塚原)。(5)積った雪が融けて融雪水をもたらし脆弱な地盤を形成するが,この融雪機構を熱収支法や気象作用等によって説明し,地盤にいかに浸透するかを積雪層タンクモデルを使って解明した。この数値シミュレーションは実際の観測と良く合うことを検証し,福井等北陸地方の融雪地すベり発生機構のモデルとして整理した(渡辺)。(6)石川県内の雪崩事例を対象に雪崩の運動論を適用し,雪崩防護工に作用する衝撃力や雪崩の通り道について数値シミュレーションを行い良好な結果を得た。特に雪崩抵抗係数を慎重に取ること,雪崩の到達地点は地形の拘束を強く受けることなどをモデルを使って明らかにした(北浦)。