著者
酒井 潔 水元 修治 田中 昭一 荒木 重雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-68, 1969-01-01

従来,卵巣の内分泌能をみるのに,尿中に排泄される性ホルモンを定量する方法が広く行われてきた.しかし,より直接的に卵巣の内分泌能をみるには,血中のホルモン動態をしらべるのがよい,我々は,^3H-estradiolを人間に静注し.その血中よりの経時的減少から.Taitのtwo-compartment modelに従つてestra-diolのmetaboloc clearance rateを測定した.対象は月経整順な成熟婦人6名であり,いずれも黄体期と考えられた.^3H-estradiol(20.3μCi/μg)ethanol溶液10μCiを生理食塩水で稀釈し,対象に静注した.その後経時的に採決し,血漿10mlをとつて放射能測定の材料とした.これをetherで抽出し,非結合型^3H-estradiolのみをcolumn cgromatographyで分離し.liquid scintillation spectrophotometerにより放射能を測定した.^3H-estradiolの血中濃度を時間の経過に従つて片対数グラフ上にとると.注射直後より約30分までの急激な減少とそれ以後の比較的なだらかな減少との2相性の直線をなすことがわかつた.従つて.これに対してTaitのtwo-compartment modelを適用してestradiolmetabolic clearance rateや生体poolの大きさなどの計算を行つた.その結果,estradiolのmetabolic clearance rateは697-1065l/日,平均856l/日であり,inner poolの大きさは17.9-35.7l,平均25.2l,またinner pool outer poolをあわせた生体内poolの大きさは41.8-69.0l,平均56.5lという値が得られた