著者
水上 英子 後閑 由香 山口 麻衣 真鍋 厚史 橋本 絵美 荒木 和之 宮﨑 隆
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.164-174, 2015 (Released:2015-05-07)
参考文献数
38

目的 : 本研究では, 9種類の市販歯面コート材を象牙質表面に塗布し, 試作光干渉断層装置 (Swept-source Optical Tomography, 以下, SS-OCT) を用いて象牙質表層の観察を行い, コート材の組成による違いが観察に影響するかを検討した.  材料と方法 : SS-OCTによる観察には新鮮ヒト抜去大臼歯を用いた. ヒト抜去大臼歯隣接面部の象牙質面を平面に露出させ, 耐水研磨紙粒度#600にて研磨した. 次いで, イーライズコンディショナーを用いて歯面処理を行い水洗乾燥後, それぞれのメーカー指示に従ってコート材を塗布した. 光照射が必要なコート材はG-LightPrimaにて光照射した. 実験に使用したコート材はナノシール (以下, NS), MSコートOne (以下, MS), ティースメイトディセンシタイザー (以下, TD), シールドフォースプラス (以下, SF), PRGバリアコート (以下, BA), Gコート (以下, GC), ビスカバーLV (以下, LV), ビューティコート (以下, BC), ホワイトコート (以下, WC) の合計9種類である. 調整完了した試片はただちにSS-OCTを用いて塗布面の観察を行った. 加えて各コート材の塗布前と塗布後の, 反射強度の絶対値の差を求め, 統計学的分析を行った (Tukey-Kramer有意水準5%の条件下).  結果 : 非レジン系コート材であるNS・MS・TDでは, 塗布前と塗布後を比較すると象牙質表層のどの部位においても大きな反射光の変化は観察されなかった. 一方でレジン系コート材であるSF・BA・GC・LV・BC・WCでは, 塗布後の象牙質表層に光の反射強度の減弱が確認された. これら9種の統計学的分析を行った結果, 塗布前と塗布後の反射強度の値の差を比較すると, 非レジン系のNS・MS・TDはレジン系のSF・GC・LV・BC・WCに対し有意差があった (p<0.05). しかし, レジン系のBAのみ非レジン系のNS・MS・TDに比較し, 有意差がなかった (p>0.05).  結論 : レジン系のコート材は塗布後の象牙質表層に光の反射強度の減弱が確認され, また非レジン系のコート材よりも明確に被膜が観察されることが示唆された.
著者
小川 弘美 黒川 千尋 星野 睦代 玉崗 慶鐘 東光 照夫 柴 肇一 真鍋 厚史
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.197-205, 2016 (Released:2016-05-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1

目的 : 歯の漂白法は歯科臨床において不可欠な治療となりつつあるが, 処置後, 有色飲食物や酸性食品の摂取が制限される. 近年, 着色物や酸性物の影響を軽減できるとされるポリリン酸含有の漂白剤が臨床に紹介されている. 本研究は, ヒト抜去歯を用いポリリン酸含有の試作漂白剤の漂白・着色抑制・脱灰抑制効果を検討したものである. 材料と方法 : 35本のヒト抜去歯を漂白効果の検討に使用した. 処理は, 10%ポリリン酸と10%過酸化尿素の混合溶液 (PPa+CP), 10%ポリリン酸 (PPa), 10%過酸化尿素 (CP), Nite White Excel (NWE), 人工唾液サリベート (SA) の5群に分け各試片数は7とした. 各群は1回2時間, これを14回行い, 処理前後のL*a*b*値から色差ΔE*ab値を算出した. 別の35本のヒト抜去歯を着色抑制効果の検討に用いた. 漂白効果と同様の試片を用い, 各群で2時間処理後, ただちに着色液 (珈琲液) に15分間浸漬し着色液浸漬前後のL*a*b*値から色差ΔE*ab値を算出した. 脱灰抑制効果の検討は, 走査型電子顕微鏡 (SEM) 観察で2本, キャピラリー電気泳動試験で3本のヒト抜去上顎前歯を使用し, それぞれ, エナメル質表面をPPa, SAまたは蒸留水で2時間処理した後, 40%リン酸で30秒間処理し水洗したものを試料とした. 処理後のエナメル質表面をSEM観察 (n=2), 処理後の希釈液についてカオチン分析キットを用いキャピラリー電気泳動でCa溶出量を測定した (n=3). 結果 : 漂白後, NWE, PPa+CP, CPの色差ΔE*abは大きな値を示したが, PPa+CPとNWEの間に有意差は認められなかった. 色素沈着の検討では浸漬後, PPa+CP, PPaの色差ΔE*abはCPとSAと比較し有意に低い値を示した. SEM像は, 両群ともにエナメル小柱断面の構造が認められ, PPa群と比較してSA群がより深層まで脱灰されている像が観察された. Ca2+はSA群での溶出量を100%とすると, PPa群では66.3%となった. 結論 : 本研究では, ポリリン酸を含有した試作漂白剤は従来の漂白剤と同等の漂白効果があり, 着色抑制・脱灰抑制効果を有することが示唆された.
著者
小川 竜平 真鍋 厚史 中山 貞男 小口 勝司
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.118-127, 1994-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18

カルシウム (Ca) とリン (P) の吸収, 排泄ならびに実験的骨粗鬆症の骨代謝に対するシュウ酸 (OA) , 酒石酸 (TA) の影響をWistar系雌性ラットを用いて検討した.1または3%のOAあるいはTAを含む飲料水を1~3週間自由に摂取させCa, Pの糞中, 尿中排泄量を測定した.OAおよびTAともCaの糞中排泄をいずれの摂取期間においても明らかに増加させた.Pの糞中排泄もOAおよびTA摂取により増加あるいは増加傾向を示した.一方, CaおよびPの尿中排泄には明らかな変化は認められなかった.すなわちOAおよびTAはCa, Pの腸管からの吸収阻害により糞中排泄を増加させたと考えられる.卵巣摘出 (OVX) による実験的骨粗鬆症に対する影響は, 1%OA (OVX・OA) , 1%TA (OVX・TA) を6カ月間自由摂取させ検討した.大腿骨と脛骨の灰分重量と乾燥重量の比は灰分重量の減少によってShamに比較しOVX, OVX・OA, OVX・TAにおいても低下したが, 3群問に差は認められなかった.大腿骨, 脛骨のCaはOVXで減少を示し, OVX・OAとOVX・TAではこの減少が著明に促進された.骨中PはOVXで有意な減少を示さなかったが, OVX・OAとOVX・TAではSham, OVXに比べて減少を示した.組織学的にはOVX・OA, OVX・TAで脛骨骨幹端部の骨梁の減少および単位骨量の減少を認めた.以上の結果より, OAとTAは腸管からのCaとPの吸収を阻害し骨粗鬆症を悪化させる可能性が示唆された.
著者
真鍋 厚史
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.260-263, 2010-11-30 (Released:2013-03-26)
参考文献数
7

最近アンチエイジング, すなわち若返りや抗加齢ということが注目されている. アンチエイジングには, 大がかりなものからわずかな若返りなど幅があり, また患者個人が独自の考え方で若返りを追求するいわゆるサプリメント療法やエクササイズ等, また特に本人はアンチエイジングなどを気にしていないが他人から観察すると本来の年齢よりも若く写る場合がある. 昭和大学歯科病院は歯, 歯肉の病気や発声等の機能障害, 食事機能障害などの治療を専門としている. そこで患者が簡単にかつ清潔で美しく若返れる方法を実際の症例を例に説明する.
著者
久光 久 真鍋 厚史 山田 嘉重 木下 潤一朗
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

茶褐色の鶏卵面に過酸化尿素を主成分とした漂白剤(ナイトホワイトエクセル)および、過酸化水素を主成分とした漂白剤(ピレーネ)を用いて漂白を行った。漂白に対して実験1ではハロゲン光(PENCURE)とKTPレーザーをそれぞれ別々に使用し、実験2では併用使用をおこなった。実験条件は、3Wの出力KTPレーザーをそれぞれの漂白剤塗後に1分30秒、3分、5分、10分間照射した。ハロゲン光でも同様に、1分30秒、3分、5分、10分間照射し、37℃で半日保存した後、測色をおこなった。結果として、単独使用の実験1ではKTPレーザー照射クループで、ナイトエクセル漂白剤使用の場合に3分以上の照射において漂白効果が確認された。一方ピレーネを使用した場合、5分以上のKTPレーザー照射にて漂白効果が認められた。ハロゲン光照射においては、ナイトエクセル、ピレーネのどちらを使用した場合においても1分30秒照射から漂白効果が確認された。一方実験2の結果では、ナイトホワイトエクセル、ピレーネ共に1分30秒で全ての試料に漂白効果が認められた。この効果はハロゲン光とKTPレーザーの照射順序の違いには影響せず、ハロゲン光とレーザーのどちらを先に照射しても明確な違いは認められなかった。
著者
千木良 尚志 真鍋 厚史 伊藤 和雄 和久本 貞雄 早川 徹
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.194-199, 286, 1989-12-25
被引用文献数
34 33

Glyceryl methacrylate水溶液の,dentin primerとしての効果を象牙質円柱窩洞内での,可視光線重合型コンポジットレジンのコントラクションギャップの計測と象牙質平面に対する引っ張り接着強さの計測によって評価した。被着象牙質面は,pH7.4に調整された0.5M濃度のEDTAによって歯面清掃を行った後,5%から45%までのGlyceryl methacrylate水溶液を塗布し,その後市販のリン酸エステル系ボンディング材を併用して市販の光重合型コンポジットレジンを填塞または接着させた。また,コントロールとして35%HEMA水溶液と5%glutaraldehydeを含む35%HEMA水溶液をprimerとして用い,同様の計測を行った。 その結果,25%と35%の濃度のGlyceryl methacrylate水溶液をdentin primerとして用いた場合に,全試片でギャップが全く認められず,完全な窩洞適合性が得られた。また,24時間後には,25%および35%水溶液で,それぞれ平均19.6および18.7MPaの平均接着力が得られた。