著者
石本 雄真
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.278-286, 2010-09-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
11

本研究は,教育臨床や心理臨床の領域での視点から捉えた居場所感が青年期の学校適応,心理的適応に対してどのような影響を与えるのかについて検討することを目的とした。「ありのままでいられる」ことと「役に立っていると思える」ことから居場所感を捉える尺度を作成し,家族関係・友人関係・クラス関係・恋人関係といった対人関係の種類ごとに居場所感と学校適応,心理的適応との関連を検討した。大学生188名,中学生384名を対象に関係ごとの居場所感,学校生活享受感,自己肯定意識について測定した。その結果,対人関係の種類ごとに自己肯定意識や学校生活享受感に影響を与える居場所感の因子が異なっていることが分かった。中学生では,自己肯定意識に対して家族関係での居場所感が概ね促進的な影響を与えていたが,大学生では家族関係での居場所感はほとんど影響を与えていなかった。また中学生では,学校生活享受感に対して複数の対人関係における居場所感が促進的な影響を示していたが,大学生ではいずれの対人関係における居場所感についても学校生活享受感に対しての影響がみられなかった。中学生においては,男子はクラス関係での自己有用感の他に家族関係での本来感が学校生活享受感に促進的な影響を示していたが,女子は友人関係での本来感が影響を示していた。これらのことから,年齢,性別ごとに居場所として重要となる対人関係の種類が異なるということが明らかになった。
著者
石本 雄真
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.72-78, 2010 (Released:2015-12-14)
参考文献数
43
被引用文献数
6

本研究は,こころの居場所といった用いられ方をする「居場所」について,一人でいるときの居場所(個人的居場所)と誰かと一緒にいるときの居場所(社会的居場所)の機能の違いを,精神的健康との関連から検討するとともに,居場所の定義や意味内容に関する示唆を得ることを目的とするものである。大学生138名への調査の結果,社会的居場所の確保と精神的健康との間には有意な正の相関がみられたが,個人的居場所の確保と精神的健康との間には有意な相関はみられなかった。このことから,個人的居場所と社会的居場所は機能的に異なるものであることが示された。また,社会的居場所の確保と本来感や自己有用感との間には有意な正の相関がみられたが,個人的居場所の確保と本来感,自己有用感との間には有意な相関がみられなかった。このことから,社会的居場所はこれまで臨床場面等で指摘されてきたように,ありのままでいられるという感覚,自分が役に立っていると思える感覚と関連することが示された。
著者
石本 雄真 久川 真帆 齊藤 誠一 上長 然 則定 百合子 日潟 淳子 森口 竜平
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.125-133, 2009-06-10 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
5

本研究は,青年期女子の友人関係のあり方と心理的適応や学校適応の関連を検討することを目的とした。友人関係のあり方を心理的距離と同調性といった2側面から捉え,学校段階ごとに心理的適応,学校適応との関連を検討した。女子中学生96名,女子高校生122名を対象に友人との心理的距離,同調性,心理的適応,学校適応について測定した。その結果,表面的な友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに不適応的であることが示された。心理的距離は近く,同調性の低い友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに良好であることが示された。心理的距離は近く,同調性の高い密着した友人関係をとる者は,中学生では概して適応的であった。一方,高校生で密着した友人関係をとる者は,学校適応においては適応的であるものの,心理的適応に関しては不適応的な結果も示した。これらの結果から,同じ青年期であっても学校段階ごとに友人関係のあり方が持つ意味が異なるということが明らかになった。高校生においては,心理的距離は近くとも同調的ではない友人関係を持つことが心理的適応にとって重要であることが示唆された。
著者
石本 雄真 久川 真帆 齊藤 誠一 上長 然 則定 百合子 日潟 淳子 森口 竜平
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.125-133, 2009-06-10

本研究は,青年期女子の友人関係のあり方と心理的適応や学校適応の関連を検討することを目的とした。友人関係のあり方を心理的距離と同調性といった2側面から捉え,学校段階ごとに心理的適応,学校適応との関連を検討した。女子中学生96名,女子高校生122名を対象に友人との心理的距離,同調性,心理的適応,学校適応について測定した。その結果,表面的な友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに不適応的であることが示された。心理的距離は近く,同調性の低い友人関係をとる者は,心理的適応,学校適応ともに良好であることが示された。心理的距離は近く,同調性の高い密着した友人関係をとる者は,中学生では概して適応的であった。一方,高校生で密着した友人関係をとる者は,学校適応においては適応的であるものの,心理的適応に関しては不適応的な結果も示した。これらの結果から,同じ青年期であっても学校段階ごとに友人関係のあり方が持つ意味が異なるということが明らかになった。高校生においては,心理的距離は近くとも同調的ではない友人関係を持つことが心理的適応にとって重要であることが示唆された。