著者
中澤 公孝 西村 幸男 荒牧 勇 野崎 大地
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は「ヒトの中枢神経が有する障害後の再編能力を解明すること」を最終目的とし、①パラアスリートの脳の構造的・機能的再編を明らかにすること、②モチベーションが脳構造と可塑性に与える影響を明らかにすること、を大目した。当該年度は前年度に引き続き、下肢切断と脊髄損傷の研究を継続するとともに、先天性上肢欠損、高次脳機能障害、脳性麻痺を対象とした研究を実施した。下肢切断に関しては、断端周囲筋を収縮させる際の同側運動野の活動が運動経験に関連して増大することが明らかとなった。この結果は、パラアスリートに観察された同側運動野の活動を説明するものであり、高レベルの義足操作に同側運動野活動が貢献することを示唆する。脊髄損傷者の脳構造・機能解析も進み、完全対麻痺者において特異的脳部位の構造的特徴が明らかとなった。この結果は、障がい後の代償反応と使用依存的可塑性発現によって説明することができる。先天性上肢欠損は一例ではあるが、先天的障害に対する代償反応としての下肢支配領域の特異的拡張を見出し、学術的価値が高いことから国際誌に掲載された。高次脳機能障害者に対しては上肢トレーニングに伴う機能的変化と脳構造・機能の変化を縦断的に調べた。その結果、上肢機能改善と共に脳支配領域の拡張、半球間抑制の低下、皮質脊髄路興奮性の上昇などを認めた。脳性麻痺については、パラリンピック金メダリストの解析を進め、水泳トレーニングによる脳再編、脊髄反射の関与に関する新たな知見が得られたことから学術的価値が認められ、国際誌に掲載された。
著者
鈴木 迪諒 西村 幸男
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.584-587, 2017-08-10 (Released:2017-08-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
田添 歳樹 西村 幸男
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.236-241, 2017 (Released:2018-01-06)
参考文献数
24

脊髄の神経膨大を電気刺激や磁気刺激によって活動させると, 複数筋群の協調的活動による把持や歩行などの日常動作にみられるような機能的運動が誘発できる. 近年では, これを利用して身体麻痺のある者の脊髄に機能的刺激を施し, 麻痺した身体の随意運動機能を再建する試みが行われている. 本稿では, われわれの研究で開発した人工神経接続と呼ばれる神経細胞 (ニューロン) の働きをするコンピューターを用いた閉回路システムによる脊髄刺激の研究を紹介し, 身体麻痺のある者が自身の意思で脊髄刺激を制御することで随意運動機能を再建することを可能にした成果について報告する.