著者
軍司 聖詞
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.305-310, 2013
被引用文献数
1

実習制度活用の先進地域である茨城県八千代町において,事業協同組合監理の実習生を受け入れている農家に対するヒアリング調査を行い,受け入れ農家の営農状況や受け入れに関する諸費用などについて調査を行う。これをJAによる監理と対比することで,監理団体としての事業協同組合の役割が明らかとなる。また,事業協同組合は,管轄区域のあるJAと異なり,地域を超えて実習生を斡旋することが可能であるため,実習生の斡旋を全国的に行っている事業協同組合も少なくない。さらに,実習生の斡旋を行う事業協同組合の多くは,農業以外の業種に対する斡旋も行っており,よってこの多くは都市部に事務所を置いている。そこで本研究では,東京都内の事業協同組合に対するヒアリング調査を行い,事業協同組合における実習生監理の概況を事例的に明らかにするとともに,事業協同組合による実習生斡旋の特徴について明らかにする。加えて本研究では,事業協同組合に実習生を送り出している中国の送り出し機関へのヒアリング調査を行い,事業協同組合に送り出される実習生が,どのようなプロセスを経て日本での実習を行うに至るのかを明らかにする。また,監理機関としての事業協同組合の位置や現況について,送り出し機関の視点から明らかにする。以上によって,事業協同組合監理の実習生を受け入れる農家の営農のありようが理解されるとともに,事業協同組合を利用した実習生の送り出しから受け入れに至る状況が,送り出し機関,事業協同組合,農家の3者から総合的に理解され,外国人技能実習生の受け入れにおける事業協同組合の役割が明らかとなる。