著者
濱野 貴通 高橋 俊行 中島 翠 佐野 仁美 須藤 章 福島 直樹 西川 秀司 武内 利直
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第37回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.158, 2009 (Released:2009-10-21)

好酸球性胃腸炎は,消化管壁への著明な好酸球浸潤による消化器症状を認め,末梢血好酸球が増加する稀な疾患である。 今回,抗アレルギー剤の投与にて治療しえた小児好酸球性腸炎の1例を経験した。 症例は5歳女児。半年前からの繰り返す水様性下痢を主訴に当科を受診した。検査所見にて著明な好酸球増加(WBC 18800 /μl, Eos 54 %),鉄欠乏性貧血,低蛋白血症,便潜血陽性を認め,好酸球性胃腸炎の疑いで入院となった。 入院後,IgE RASTにて卵白,リンゴが陽性であり食事制限を行なったが,症状の改善はなく,検査所見にてWBC 21200 /μl(Eos 76 %) と増悪傾向を認めた。消化管内視鏡検査にて十二指腸球部の粘膜に発赤があり,病理像にて著明な好酸球の浸潤を認めた。 好酸球性胃腸炎と診断し,トシル酸スプラタスト投与を開始したところ,水様性下痢は消失し,7日後にはWBC 11800/μl(Eos 33.0 %)と改善傾向を認め,外来経過観察とした。 経過観察中,再びWBC 13300 /μl(Eos 42.0 %)と上昇傾向を認め,クロモグリク酸ナトリウム投与を追加した。投与2ヶ月後,WBC 5600 /μl(Eos 6.0%)となり,鉄欠乏性貧血,低蛋白血症状も改善した。投与4ヶ月後,便潜血陰性となった。 抗アレルギー剤の投与によって本疾患を治療しえたことは意義があると考え,報告する。
著者
生田目 紀子 江川 潔 須藤 章 石川 丹
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.373-379, 2019 (Released:2020-01-17)
参考文献数
20

【目的】Down症候群患者の発達と患者背景, リハビリテーション, 合併症との関連性を検討することを目的とした. 【方法】1997年1月から2016年12月に初診し当院で療育を行ったDown症候群患者の患者背景, 当院のリハビリテーション, 合併症の有無と, 粗大運動および有意語の獲得時期, IQ/DQについて診療録を元に後方視的に調査し, 関連性について検討した. 【結果】成人期初診例, モザイク症例を除いたDown症候群患者58症例を対象とした. 調査時年齢は9.8±4.8歳, 初診時月齢は22.3±15.5か月であった. 合併症は54例 (93%) で確認でき, 心疾患37例, 眼疾患17例, 甲状腺疾患11例, 難聴9例, 血液疾患5例, 消化器疾患3例, てんかん2例であった. 難聴, てんかん合併群は粗大運動発達, 有意語獲得時期ともに遅い傾向にあり, IQ/DQもより低値であった. 患者背景とその他の合併症は概ね発達に影響を及ぼさなかった. 生後12か月以前に理学療法を開始した群の独歩獲得までの理学療法期間は, 生後24か月以降に開始した群に比し有意に短かった. 【結論】てんかん合併群は発達遅滞がより顕著となる傾向にあり, 治療, 療育の早期介入が重要である. 難聴合併群も同様の傾向が疑われるが他の合併症の影響も否定できず, 今後詳細な検討が必要となる. Down症候群における理学療法早期開始は早期の独歩獲得に有用である.