著者
山田 卓生 蓑田 涼生 三輪 徹 増田 聖子 兒玉 成博 鮫島 靖浩 湯本 英二
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.283-289, 2011 (Released:2012-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
5

当科で施行した人工内耳埋込術 72 例について、「人工内耳埋込術後に何らかの追加の治療・処置を必要とした症状」を術後合併症と定義し、術後の合併症の有無について診療録の記載より調査を行った。72 例中 9 例(12.5%)に術後合併症を認めた。保存的治療もしくは経過観察のみで対処可能であった合併症(軽度合併症)は 4 例、観血的治療を必要とした合併症(重度合併症)は 5 例であった。軽度合併症の内訳は、味覚障害が 2 例、遅発性顔面神経麻痺が 1 例、人工内耳埋込部の感染が 1 例であった。また、重度合併症は、インプラント故障が 2 例、人工内耳埋込部の感染が 2 例、インプラントの露出が 1 例であった。このうち埋込部感染を認めた 2 例は、基礎疾患との関連が考えられた。インプラント故障を認めた 2 例においては、頭部打撲が原因であった。インプラントの露出を来した 1 例については、人工内耳埋込部と耳掛けの体外部との接触が原因と思われた。
著者
村上 大造 松吉 秀武 蓑田 涼生 鮫島 靖浩 湯本 英二
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.73-78, 2009-06-30 (Released:2010-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

今回われわれは3例の小児・若年者(19歳以下)甲状腺乳頭癌症例を経験し,主に治療方針について文献的考察を加えて報告する。3症例とも広範な両側頸部リンパ節転移を有し,1例に多発性肺転移,また,残りの2例にも肺野に小結節陰影を認めた。全例に甲状腺全摘出術,両側頸部郭清術を行い,1例は患側の反回神経浸潤を認めたため,神経切除のうえ神経再建術を行った。また,全例,術後にI131大量療法を施行した。多発性肺転移例は現在も肺野に結節陰影を認めているが,治療後16年経過し明らかな増大傾向はない。また,1例に術後鎖骨下リンパ節にI131の集積を認めたが,リンパ節径の増大傾向やサイログロブリン値の上昇がないため,現在は外来にて厳重経過観察を行っている。全例生存し,日常生活に支障を来す合併症は認めていない。小児・若年者甲状腺乳頭癌の場合,腺内転移,リンパ節転移,肺転移の頻度が成人症例よりも高いという特徴がある。そのため,甲状腺全摘出,徹底した頸部郭清術を行い,必要に応じてI131大量療法を施行する必要があると考えられる。
著者
増田 聖子 鮫島 靖浩 湯本 英二
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.203-206, 2012 (Released:2012-08-25)
参考文献数
5

88歳女性. 高度認知症のため食事の際に開口しない状態であり, 介護士がペースト食を経管栄養注入用プラスチックシリンジに充填して口腔内に押しだす方法で食事を与えていた. この時シリンジの先端が口腔底に当たり小さな裂傷が生じた. 数時間後に口腔底の血腫, 咽喉頭の浮腫が生じ, 急速に重篤な気道狭窄がおきた. 緊急気管切開および抗菌薬の投与を行ったが, 3日後に口腔底~顎下部の膿瘍形成がみられ, 切開排膿およびドレナージを行った.口腔底外傷は軽傷でも重篤な気道狭窄や深頸部膿瘍をきたすことがあり, 十分に注意する必要がある. また認知症患者の食事介護においては, 使用する器具に配慮が必要であると考えられた.
著者
定永 恭明 宇野 正志 鮫島 靖浩 増山 敬祐 石川 哮
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.34-44, 1994-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
12

近年社会問題化している, スギ花粉症の発症に及ぼす因子を疫学的に解析するために, 花粉飛散の違う熊本県内の3地区に居住する高校生を対象として, 2度にわたるスギ花粉症アンケート調査, 及びIgEと遺伝的要因としてのHLAを測定することにより発症因子を外因と内因の両面に分けて検討してみた. それによると花粉症の臨床症状は, 花粉飛散 (抗原) 量とよく相関するが, IgEの産生には単に抗原量だけでなく, 社会的因子としてのストレスや大気汚染それに遺伝的素因の及ぼす影響も強いものと想定された.