著者
鴻上 圭太
出版者
大阪健康福祉短期大学
雑誌
創発 (ISSN:13481576)
巻号頁・発行日
no.7, pp.175-183, 2008-03

急速な高齢社会を歩んでいる日本社会において、介護専門職による介護の質が問われている。介護現場では介護専門職に低賃金、長時間労働などの厳しい労働条件が課せられ、専門性とは何かを現場から問い続けることが非常に困難な状況にある。その様な状況で「生活とリハビリ研究所」主宰者、三好春樹が発信する介護方法論に関する講座やセミナー、著書が多くの介護専門職から支持されている。三好は「当たり前の生活を当たり前に行うこと、ここに介護の専門性があるのだ」と論ずる。また三好は、医療の分野で起こった「病気を見て人を見ず」といったひずみが介護に持ち込まれたと批判、介護においても問題行動や障害を見て人を見ていないと主張している。当たり前の感覚で当たり前の生活行動への援助方法を論じている。しかし、三好の論理は介護の専門性としての普遍性や援助の継続性が無く、介護の専門職としての責任を果たすべきものにはなっていない。介護専門職の専門性とは、科学に裏付けられた継続性のある方法論をもって介護を通して社会に責任を持つことである。