著者
KABIR Md. Fazle 高須 晃
出版者
The Association for the Geological Collaboration in Japan
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.19-32, 2021-01-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
54

蓮華変成帯若桜地域に分布する青色片岩には昇温期,ピーク,そして降温期の 3つのステージの変成作用が記録されている.昇温期変成作用は片理を構成する鉱物に包有される鉱物群(緑泥石,緑れん石,フェンジャイト,曹長石,ウィンチ閃石/藍閃石,パラゴナイト,赤鉄鉱,石英)によって定義される.ピーク変成作用は片理を構成する鉱物(藍閃石/マグネシオリーベック閃石,緑れん石,フェンジャイト,緑泥石,チタン石,赤鉄鉱,石英)によって定義される.昇温期とピークの変成温度圧力を Na2O-CaO-K2O-FeO-MgO-Al2O3-SiO2-H2O-O2 (NCKFMASHO)系の相平衡モデル(シュードセクション・モデリング)により推定した.フェンジャイトと緑泥石の組成等値線から,昇温期変成条件は 300-320℃,0.5GPa,また,ピーク変成条件は 350-390℃,1.05-1.2GPa(ローソン石藍閃石片岩相または緑れん石藍閃石片岩相)であることが明らかにされた.片理を形成する角閃石の縁部(ウィンチ閃石~アクチノ閃石)およびピーク変成鉱物を置換する緑泥石とカリ長石の組み合わせより,360-400℃,0.4-0.5GPaの降温期変成条件が得られた.これらの昇温期,ピーク,降温期変成条件の推定より,若桜の青色片岩は変成ピーク後の岩体上昇初期に定温降圧を伴う時計回りP-T経路を経て形成されたことがわかる.このような定温降圧を伴うP-T経路は,ピーク変成条件は異なるが,周防帯に属する江津地域の青色片岩と類似する.