著者
溝部 佳代
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.34-41, 2013 (Released:2014-04-05)
参考文献数
15

本研究の目的は,手術中待機している家族のコーピングの実態および属性・看護介入によるコーピングの差異を明らかにすることである.研究参加者は,A病院にて全身麻酔下で手術を受ける患者の家族62名(回収率76.5%)である.方法は,自記式質問紙法による量的記述的研究で,質問項目は1)属性,2)看護介入,3)神村らの3次元モデルにもとづく対処方略尺度24項目とした.結果より,待機中の家族のコーピングは肯定的解釈,気晴らしの順に多かった.また,待機人数,手術時間超過の有無,家族の年齢により,コーピングに有意差が見られた(p<.05).そして,手術中待機している家族へのケアとして,1人で待機する家族,手術時間が予定時間を超過する場合には,特に介入が必要であり,手術に関する情報提供あるいは肯定的な気持ちで待てるような情動的支援が重要であると示唆された.
著者
木下 佳子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.20-35, 2011
被引用文献数
5

本研究は三部構成からなる.第一部では,記憶のゆがみをもつICU入室後患者の体験および対処行動を質的に明らかにした.体験は「被害を与えられた体験」「恐怖感や不愉快な感覚を伴う非現実的体験」「非現実的な光景や音との遭遇」「記憶の欠落」で,対処行動は「ICU体験を否定されずに語りたい」「現実か錯覚・幻覚・夢かと自問する」「記憶の再構築を行う」「非現実的な体験は自分だけではないことを知ろうとする」「体験の意味づけ・理由づけを行う」だった.第二部では,これらを元に「記憶のゆがみをもつICU退室後患者への看護支援プログラム」を考案,試用後完成させた.第三部では,その有用性を半構成的面接法による質的評価および不安抑うつスケール(HADS)と改訂版出来事インパクト尺度(IES-R)による量的調査を統合した方法論的triangulationで検証した.プログラムを記憶のゆがみをもつICU退室後患者20名(適用群)に適用し,非適用ゆがみあり群(N=31)と非適用ゆがみなし群(N=28)と3群間で比較した.質的評価では,18名がプログラム目標を達成し,体験を語れた・説明され理解した・事実を確認した・意味づけができたなどが語られた.量的検証では,非適用ゆがみあり群に対し適用群がHADS,IES-Rで有意に低値を示した.
著者
古賀 雄二 植村 桜 伊藤 聡子 井上 和代 大西 純子 小幡 祐司 杉江 英理子 杉野 由起子 藤野 智子 古厩 智美 茂呂 悦子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.37-48, 2017-03-31 (Released:2017-04-19)
参考文献数
18
被引用文献数
2

クリティカルケア領域のせん妄ケアにおける急性・重症患者看護専門看護師(CCNS)の役割に関する実態調査(研究以外)を目的に自記式質問紙調査を行い,質的帰納的に分析した.その結果,実践29個,相談8個,調整5個,倫理調整2個,教育8個のカテゴリーが抽出された. CCNSのせん妄ケアはせん妄予防ケア・発症後ケア・離脱後ケアの3局面に対して,『せん妄要因のモニタリングと管理ケア(基盤的要素)』・『認知と生活リズムの再構築ケア(核心的要素)』・『Patient-Family empowerment(補完的要素)』により構成され,螺旋的に有機的相互作用を続けながら,せん妄リスクファクターからの解放と患者生活の再構築を促進していた.また,CCNSは家族をケア提供者として捉えてせん妄ケアチームへの参画を促し,せん妄にチームで取り組む体制を構築していた. CCNSのせん妄ケアは,患者ニードの追求とそれに基づく看護ケアに包含され,せん妄ケアの方向性は自己実現のニードの具体形である患者生活の再構築であることから,包括的患者生活管理である.
著者
杉田 久子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.15-25, 2012 (Released:2013-08-03)
参考文献数
56
被引用文献数
3

本研究の目的は,クリティカルケア看護師のexpertiseの概念分析を行い,クリティカルケア看護実践領域への活用に示唆を得ることである.1983年~2007年までの看護学,医学の領域から43文献を分析対象とし,Rodgersの概念分析法を参考にした.結果,属性に〔プランニングプロセス〕,〔ケアリングプロセス〕,〔アドバンスプロセス〕,先行要件に〔動機・資質〕,〔リソース〕,〔文脈上の制約〕,帰結に〔治療の成功〕,〔ヒューマンケア〕,〔ケアの質の向上〕が抽出された.定義には「初期の推論,熟考された明敏な意思決定,および状況的文脈に基づく判断とともに,患者および医療者との相互作用を伴う優れたケアリングを実践し,反省的な実践を繰り返して蓄積される実践的知識の修得プロセス」が導かれ,よりよい患者アウトカムを導く看護師の継続的な態度を表す動的概念として説明された.結果は,クリティカルケア看護師のexpertiseを観察可能な現象として捉えることを可能にし,看護師の実践活動における客観的指標を提供することに貢献するが,実践現場での精錬と検証が課題である.
著者
石塚 紀美 井上 智子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.11-23, 2015
被引用文献数
5

【目的】救命救急領域における家族の代理意思決定時の思いと看護師の代理意思決定支援と思いを明らかにし,よりよい看護支援の検討を行う.<br>【研究方法】参加観察,半構成的面接,診療録調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに準じて分析した.<br>【結果】7家族から〈救命救急という場と状況に影響された決断〉,〈患者の思いを優先した決断〉,〈自身の決断への評価〉,〈今後への受容と不安が交錯する〉,〈情報が欲しい〉,〈患者家族を支援して欲しい〉,〈看護支援は実感しにくい〉,〈看護師が家族の救いとなる〉の8つの側面が,10 人の看護師からは〈時間を内容で埋める〉,〈救命と人生を考える〉,〈家族の力量と現状に応じた関わり〉,〈周囲を調整する〉,〈家族に寄り添う〉,〈同じ見解のもとチームで協働する〉,〈人生と命に関与する困難さ〉,〈知性と感性を養う必要性〉の8つの側面が導き出された.<br>【結論】家族が救命救急という場や状況に左右されず,最善の決断ができるよう支援する必要がある.
著者
宮本 毅治 武田 宜子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.81-86, 2016-03-22 (Released:2016-03-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的:人工呼吸器装着患者の鎮静管理において,海外では看護師による鎮静管理の効果が示唆されているが,わが国での調査は十分ではない.そこで,本研究では包括的指示に基づく看護師による鎮静管理について,目標鎮静度の達成度から,医師による鎮静管理との差異を調査した.方法:人工呼吸器装着患者10 名(医師調整群5名・看護師調整群5名)に対して2時間おき3日間の鎮静度の推移を記録し,2群の差や特徴について記述的に分析した.結果:目標鎮静度から乖離した頻度(割合)は,医師調整群25.4 ± 3.9 回(68.6%),看護師調整群18.0 ± 4.7 回(48.6%)であった.目標鎮静度からの乖離の程度を表す乖離の幅は,医師調整群1.1 ±0.4,看護師調整群0.6 ± 0.2 であり,看護師調整群の方が目標鎮静度から乖離した頻度が少なく,乖離の幅も狭い傾向にあった.結論:医師による鎮静剤投与量調整と比較した場合,包括的指示に基づく看護師による投与量調整の方が目標鎮静度に沿った鎮静管理を行えることが示唆された.
著者
高田 望 平野 かよ子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.67-75, 2015-10-01 (Released:2015-09-30)
参考文献数
20

本研究は,ICU において医師・看護師が終末期医療へのシフトをどのような情報・状況をもとに判断しているのかを明らかにすることを目的とした.ICU に勤務する医師・看護師各4名に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析を行った.その結果,28 コード,9サブカテゴリーから《救命の困難さ》と《治療継続の不適切さ》の2カテゴリーが抽出された.《救命の困難さ》は,【臓器機能の悪化】【治療に対する反応の低下】で構成され,これ以上の治療を継続しても患者の命を救うことが困難であるという情報である.《治療継続の不適切さ》は,【本人および家族の自己決定】【その人らしさの消失】【家族内の患者の居場所の欠如】などで構成され,これ以上治療を継続することは患者の利益にならないことを示す情報である.医師は《救命の困難さ》に重点を置いて終末期医療へのシフトを判断するが,看護師は《救命の困難さ》だけでなく《治療継続の不適切さ》を重視して終末期医療へのシフトを判断していた.この医師と看護師の判断の特徴の背景には,職務上の役割の違いがあることが示唆された.