著者
三宅誠
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.86, 1988
被引用文献数
1

過去5年間に当社入院給付金の支払いを受け,新たに加入申し込みのあった事例につき,その給付歴が告知されているか否かを選択方法別に調査した。告知がなされている場合は入院日数が正しく告知されたかについても調べた。調査対象550件中33.8%に告知がなされていなかった。特に告知書扱いは65.5%が無告知であった。健康確認の無告知は19.4%と社医に次いで低かった。入院日数の正当告知は40〜50%になされていたが,告知書扱いは26.4%に過ぎなかった。性別では,男性が何れの選択法でも無告知の割合が高かった。年齢別では年齢が進むにつれ無告知率が増加した。退院後年数別,入院日数別,疾病別にも観察した。今回の結果は告知の全貌を表してはいないにしろ,このように告知義務違反が多く存在した事は,公平性の面から支払いには毅然とした対応を要すると共に告知の必要性のアピールが更に必要である。
著者
中西 幸子 中尾 修一 圓谷 徹彦 中川 和寿 西川 征洋 橋口 隆志 藪内 健三 細田 瑳一 田村 光司 石塚 尚子 笠貫 宏 中村 憲司
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.195-206, 1995-12-15
被引用文献数
16

過去16年間に東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所で,心臓カテーテル検査を行って拡張型心筋症と診断された172例(男139例,女33例,平均年齢50±14歳)について,日本全会社生命表(1984〜'85)死亡率および昭和62年年齢別予定疾病入院率・予定手術率を用いて,死亡指数・入院給付指数・手術給付指数を算出した。観察期間は平均4.1±3.3年(最長15.3年)であった。実死亡数は90例で,その死因は,うっ血性心不全が47名(52%),突然死が35名(39%)であった。累積生存率は,5年生存率50±11%(累積生存率±99%信頼区間),10年生存率28±13%,全期間を通じた死亡指数(99%信頼区間)は1701(1239〜2163),入院給付指数は153(117〜189),手術給付指数は159(97〜245)であった。死亡指数は謝絶契約相当の高い値を示し,保険契約をお引受けできないものと考えられた。経過年度別死亡指数では,各年度の死亡指数間に有意差は認められず,いわゆる恒常性の危険に近いものと考えられた。診断年齢別死亡指数では,若年者群と高齢者群との間に有意差(p<0.0001)を認め,若年発症の群ほど予後不良であると考えられた。心臓カテーテル検査(EF・EDVI・PA・CI)データ別死亡指数では,心機能不良群の死亡指数は有意に高かったが,死亡指数が1万を越えるような飛び抜けて高い群は存在しなかった。リビング・ニーズ特約と関係の深い余命6か月判定では,心臓カテーテル検査の数値データによる判定でも難しいものと考えられた。
著者
岩崎 康孝 黒沢 尚
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.275-279, 1990-12-15

第三次救急施設に搬入される自殺未遂症例100例の保険加入状況を調査した。さらに症例の他の属性(性,精神疾患圏,自殺企図手段,家族の有無,配偶者の有無,子供の有無)との関係を調べた。対象となった自殺未遂者症例の生命保険加入率は33%であり,一般人口に比べ低かった。生命保険加入率と患者の属性との関連では,精神疾患圏,自殺企図手段,家族の有無,配属者の有無,子供の有無とは有意な相関を認めた。性との有意な関連は認めなかった。生命保険加入率の低い群は,精神疾患圏では,精神分裂病圏症例,自殺企図手段では服薬による症例,家族の無い症例,子供の無い症例,配偶者の無い症例であった。特に服薬自殺企図症例は性,精神疾患圏,家族・配偶者・子供の有無などの要因によって生命保険加入率が低いとは言えず,他の方法を選択する自殺企図症例とは異なる母集団を形成している可能性を示唆した。
著者
牧野 安博
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.274-283, 2007-12-17
被引用文献数
2

健全なる保険制度を維持するために保険契約者等に課されているのが告知義務である。一般に告知は告知書を介して実行される。告知制度の実効性を担保するために保険約款に規定されている主たる約款条項が,告知義務条項と責任開始前発病条項である。人口減少が始まり少子高齢化社会へ突入した日本の生命保険市場において,保険商品は死亡保障の主契約から医療保障の主契約へと変化し,2001年以降次々と新たな医療保険が発売されるようになった。市場の潮流の変化により,2006年9月から発売されたオリックス生命保険の七大生活習慣病入院保険(愛称:CURE)も順調な販売実績をあげている。告知義務制度における解除件の留保の問題と関係して,医療保険の支払査定で問題となっている事例として白内障,乳癌,アレルギー性鼻炎の3事例を考えてみた。
著者
清水功基
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.149-156, 1996
被引用文献数
3

主治医の余命判断の信頼性について一般的な傾向を把握しておくことは保険医学上重要である。本研究ではリビング・ニーズ特約における診断書提出例の生命予後を分析し,主治医の余命判断の信頼性に影響を与える因子について検討した。対象は平成6年9月より平成7年12月末までに参考意見書「はい」の診断書が提出された158件である。入院,病名告知,本人余命告知,家族余命告知,麻薬投与,疼痛,IVH実施,胸腹水の8項目についてその有無別の累積生存率を調査分析した。対象全例の6カ月生存率は30.3%,1年生存率は13.9%であった。入院無,本人余命告知有,家族余命告知無の場合に主治医の余命判断の信頼性が低くなる傾向があり,支払可否審査をより慎重に行う必要があると考えられた。疼痛有,麻薬投与有,IVH実施有の場合に主治医の余命判断の信頼性が高くなる傾向があった。癌告知の有無と主治医の余命判断の信頼性とは関連がなかった。
著者
塚本 宏
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.369-385, 1989-12-15

わが国における保険医学の"母"渡辺定の著書「寿命予測と生命保険」(1943年)は保険医学の教科書として,今なお不朽の名著の輝きを失っていない。彼はまた1950年代に,すでに今日の世界最長寿国を予想して「あなたの寿命革命」を世に問うている。保険医学と寿命学は死亡率研究という母から誕生した双子だと言ってもよいだろう。本学会が世代交替の時期を迎えている現在,古典的に過ぎるかも知れないことを承知で,若手会員のために先輩から継承した学問的系譜を「教育講演」の主題に選ぶこととした。話の順序として,まず1693年に発表されたE.ハリーの「ブレスラウ生命表」まで遡り,生命表の原理からはじめたい。近代的な生命保険事業における保険料計算の基礎も,進行中の超長寿社会における国民の平均余命の計算根拠も生命表なくしては成りたゝないのである。人類の寿命史上,奇跡ともいわれる日本人の長寿が何によってもたらされたのか,またどこまで長生きできるのかも興味あるテーマであろう。生命表だけでなく,老化や死亡の法則について先達の努力を跡づけておくことも必要ではなかろうか。そして超長寿社会が生命保険事業に与える影響も一度整理しておかねばならない。いま隆昌の一途をたどる「疫学」の方法論の一つに生命表を用いたコホート研究や介入実験が盛んに行われている。この方法論の先駆者であったわれわれが,蓄積されたデータとノウハウによって,社会へ還元すべき時代に入っていると思う。一例として「健康危険度予測」Health Risk Appraisalによる健康教育の実践をとり上げてみることにした。同時に,寿命予測の手法と相まって標準下体の条件法としての「年増法」の再検討にも触れてみた。
著者
久保田 活
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.367-370, 2014-12

予測モデリングとは,過去の事実やデータを用いて,将来起きる結果や確率を予測するアプローチである。予測モデリングを行うためには,意味のある関係性を特定するため,大量のデータの収集・分析が必要となる。また,予測モデリングを用いることにより,大量の複雑なデータを素早く分析することが可能となり,意思決定が迅速になる利点がある。さらに,人間の認知によるバイアスを減らすという利点もある。すでに海外の保険会社において,予測モデリングを用いて,人々の寿命の予測が行われている。現在,日本の生命保険会社における医学的な査定では,申込者の疾病の有無・既往歴や,血圧・Body Mass Index (BMI)等の身体所見,血液・尿検査等,多くのデータを用いて,危険選択が行われることが多い。したがって,予測モデリングの特性を考慮すると,日本の生命保険の査定においても,予測モデリングの応用は可能であると考える。ただし,予測モデリングを用いて,より良い引受査定を行うためには,質が高く,かつ関連性のある大量のデータが不可欠となる。
著者
吉本 智信
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.79-85, 1996-12-15

高齢化社会への移行は避けて通れない道であり,公的介護保険の導入は時間の問題となっている。従って,介護保険は一保険会社の問題ではなく,国家的な問題となっているが,どのような仕組みが良いかという事は未だ議論の余地があり,今後十分に時間をかけた国民の合意形成が必要とされている。その時,公平な最低補償,利用者のニーズの多様性,将来にわたる国民負担率等の問題を併せて考えた場合,基本的な部分としての公的介護保険と,それに個人が追加する民間介護保険という図式は有力な候補の一つとして浮かび上がって来る。この図式を具体的に考えていく際の基礎資料として1989年発売以来加入者が約13万人となり既に127例に支払い済みの安田火災の介護保険を問題点も含めて検討する。
著者
三宅誠 井上 公俊 新開 健司 長野 有宏
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.87, 1989
被引用文献数
1

米国のMedical Information Bureauをはじめ,一部欧州に於いても,生保会社が医学的情報を交換出来る制度が確立されている。しかし,我国ではこの制度は存在しない。今回,医学情報交換制度の具体的な実施要領をはじめ,種々の問題点,また,はたして我国で当制度が実施可能か否かについて検討した。我国では,行政機関の保有する個人情報の保護を目的とするプライバシー保護法はあるが,民間の保有する個人情報を保護する法律は無いので,当制度構築にあたっては,OECDの個人情報保護に関するガイドラインに基づき,充分な配慮をした。当制度の概略は,「当制度の存在を広く公示し,診査時に被保険者の同意を得た後に,各種医的情報を,生命保険協会内に設置した選択情報登録センターに登録する。また,入院給付金支払い情報も登録する。各社はこの情報を保険契約諾否決定時,保険金給付金支払い時の参考に利用出来るが,この情報のみでの判断,決定はしない事とする。」と,いったものである。当制度最大の問題点は,我国の保険契約時の現状をみる限り,かなりの被保険者が登録に同意しないのではないかという点であり,この不同意を謝絶とした場合,販売サイドより激しい抵抗が予想される点である。当制度は,生命保険制度が健全に運営され公平性を保つためには欠かせない制度である。尤も,一部の不心得な契約者排除の目的の為に,殆ど本人に責任は無く,ある意味ではハンディキャップでもある善良な人々の医的情報を登録される事自体に抵抗は多いと考えられる。しかし,逆選択を防止し的確な選択は,寧ろ善良な契約者の利益であり,プライバシー保護のもと正確かつ完全な情報の収集は,会社の義務であると共に両者の利益でもある。業界としては,まず保険金詐欺を許すべきでないという公共的な要請を惹起させ,当制度の社会的コンセンサスを得た後に,当制度を制定する事が最も望ましいと思われる。
著者
早石 修
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.1-13, 1988-01-20

かつて,アメリカの首都ワシントンにあるジョージタウン大学の薬理学教授ピーター・ラムウェル博士は,「近い将来において,医薬品の2/3以上はプロスタグランジン,またはその類縁化合物によって占められるであろう」と予言した。多少誇張があるにしても,この言葉はプロスタグランジンの重要性を端的に物語っているものである。それではプロスタグランジンとはいったいどのような働きをする物質であろうか。一言で言えば,プロスタグランジンは生物情報伝達物質の一種であるということができる。地球上の総人口はおよそ50億といわれているが,私達は日常種々の情報伝達機構を用いて相互に情報を伝えることにより,健全な社会生活が営まれていることは衆知の通りである。特に最近はいわゆるマスコミュニケーションが発達し,通信衛星・テレビ・ラジオ・新聞・電話・ファクシミリ・その他きわめて多種類の情報伝達機構が働いており,一旦それに異常を来たすと社会には非常な混乱が起こることは私共の日常経験するところである。生物の体内でもこれと同様に多くの情報伝達機構が働いて,細胞と細胞,臓器と臓器の間の連絡をとっている。すなわち,私達の一人一人の体を考えてみると,その細胞数はほぼ地球の人口の1,000倍,すなわち50〜60兆といわれており,脳細胞だけでも150億という多数の細胞から成りたっているが,これらの異種または同種の細胞間でも時々刻々種々の情報が交換され,それによって全体としての臓器や個体の生命現象がうまく維持されているのである。このような生体内における情報伝達機構は,生命現象の基本となる重要な歯車のひとつであり,古くから神経やホルモンが遠距離の情報伝達に役立っていることが知られている。最近,近距離の情報伝達物質として,組織ホルモン・局所ホルモンと呼ばれるいくつかの物質が知られてきた。その中でも細胞を外部環境から守っている細胞膜の構成成分である"リン脂質"から作られるプロスタグランジンが注目を浴びており,1982年にはプロスタグランジンの発見や,特に著名な業績をあげたBergstrom, Samuelsson, Vaneの3人がノーベル医学賞を受賞したのもプロスタグランジンの重要性を示すものといえるであろう。本講演ではプロスタグランジン,ロイコトリエン,リボキシン等関連物質の研究について,その現状を解説し,特に最近の話題である脳神経・免疫・がんの研究について述べる。
著者
糸川 英樹 塚越 茂
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.320-329, 1992-12-15

喫煙状態を示す検査として呼気中一酸化炭素(以下呼気中COと略)濃度,体液中(血液,尿,唾液)におけるチオシアニンとニコチン及びその代謝産物であるコテニン濃度測定が挙げられる。これら検査の感度,特異性及び禁煙後検出可能期間について保険医学的見地から文献的考察をした。コチニン検査が感度・特異性共95%以上と最も高く次にニコチン,COとなりチオシアニンが最も低く感度が80%台であるが特異性が70%とかなり低い値が示された。一方禁煙後検出可能期間については,COやニコチンに比べて比較的半減期の長いコチニンについて幾つかの研究があり,軽度喫煙者で1〜2日,中等度者で3〜5日である。高度喫煙者でも1週間ぐらいの禁煙でおおむね検出不能になると考えられる。以上,今回調査した喫煙習慣判別検査は,被検者が喫煙している限り高い鑑別力を示す(特にコチニン値測定)が,一旦喫煙を中断されると比較的短期間のうちに検出不能となるので選択実務上に問題が残り,保険医学的にみて必ずしも理想的とは言えない。今後この面での更なる研究開発が望まれる。
著者
小林 三世治
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.264-269, 2002-12-17
被引用文献数
2

てんかん治療中の被保険者(23歳女性)が寮のトイレで死亡しているところを発見された。死体検案書には「直接死因てんかん発作」と書かれていた。しかし,死亡の前日に被保険者・勤務先の養護施設に入所していた園生から受けた暴行が原因で死亡したとして,災害関係保険金の支払請求が契約者側からなされ,裁判になった。保険者側は,文献を引用しながら,てんかんによる突然死(病死)を主張した。判決は,急激かつ偶然な外来の事故に基づく死亡とはいえないとして,契約者側の訴えを斥けた。
著者
大橋 茂充
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.98-102, 2000-12-27
被引用文献数
2

第94回日本保険医学会定時総会にて「死亡指数別生命表作成ソフト」について発表する機会を得た。そこでは,条件体における割増保険料の考え方に基づいて,死亡指数の及ぼす影響は恒常的なものと仮定して生命表を作成した。しかし,現実には,保険金削減法に見られるように,死亡危険の評価は保険年度別に可変的に設定されるのが自然であるように思われる。そこで,この保険年度別死亡指数の考え方を生命表の作成に適用して,同一加入年齢の集団をコホートとして観察した場合の死亡指数について検討した。また,この方法を脱退のある場合についても適用し,脱退が死亡指数に及ぼす影響について考察した。とくに,脱退してゆく集団の死亡指数を保険年度別に設定し,あとに残る集団(残存集団)の死亡指数がどのように影響を受けるか検討した。
著者
高島 宏幸 佐々木 光信 小原 甲一郎
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.164-169, 1992-12-15
被引用文献数
4

肥満を評価するため近赤外線分光法による脂肪量測定を行い,諸種の体格指標(丹治指数,BMI, Broca-桂法,明治生命の標準体重表による肥満度)との比較を行った。対象は男性134例,女性38例であった。体脂肪率は16.4%〜47.5%に分布し,男女とも各体格指標と有意な相関を認めた。また測定精度を検証するため,同一測定者による多数回測定と別測定者による測定での変動係数と測定者間誤差の有無を調べたが,精度に問題は認められなかった。危険選択において脂肪量測定が充分可能となった意義は大きい。特に過体重として評価された被保険者について脂肪量の補足データが得られるのは重要な利点である。
著者
岩佐 寧
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.181-190, 2003-06-17

2002年10月20-23日に米国フロリダ州オーランドのディズニーワールド内ディズニーズボードウォークインにて行なわれた第111回米国保険医学会年次総会に出席し,最終日に行なわれたThomas E. Murphy Jr.博士による「非糖尿病者における蛋白尿と微量アルブミン尿」を聴取したので報告する。博士は,蛋白尿と微量アルブミン尿の定義,微量アルブミン尿発症のメカニズム,病的意義,原因,国民ベースでの頻度,全死因死亡率や心血管死亡率の予測因子としての意義について報告された。さらに,高血圧症治療薬であるアンギオテンシンII受容体阻害剤による幅広い治療効果及び微量アルブミン尿検出を保険加入時の検査項目とすべきかについても言及された。
著者
寒河江 悟 杉村 政樹 工藤 隆一
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.364-372, 2003-12-17
被引用文献数
2 2

婦人科がんの最近の動向は,子宮頸がんでは検診の普及により初期がんが増加しているものの,進行がんも依然多く死亡者数は横ばいである。頸がんの治療はその組織型の違いにより放射線感受性が異なるので,扁平上皮がんには放射線照射を中心にし,腺がんには化学療法後に手術を行う。また子宮体がんは明らかに増加しており,早期がんは予後良好であるが,進行がんの予後はここ10年改善されていない。治療方針は拡大手術か縮小手術か議論が分かれているが,術後療法に放射線療法のみでなく化学療法も取り入れられてきた。更に卵巣がんはI期とIIIc・IV期に二極化しつつあり,依然進行がんの5年生存率は30%台で変わっていない。卵巣がんの治療方法の基本は手術であるが,化学療法の併用による縮小手術が行われている。さらには,化学療法の間に腫瘍減量手術を行う工夫もされている。一方絨毛がんは激減し,完全制圧まであと1歩である。これは,有効な抗がん剤の発見のみならず,経腟超音波による胞状奇胎の早期発見やbeta-HCG検査による管理法の進歩による。これら婦人科がんの危険因子は,子宮頸がんでは性感染症によるヒト乳頭腫ウイルス,子宮体がんでは薬剤や動物性脂肪摂取によるエストロゲン優位状態,卵巣がんでは女性の社会的環境の変化による間接的に排卵の無い時期が少なくなったことが挙げられている。婦人科検診では,頸部・体部細胞診,経腟超音波,CA125が実施されるべきである。
著者
横山 哲
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.59-68, 1997-12-15
被引用文献数
5

体格指数の中では身長の影響をうけにくいといわれ国内外で広く用いられているBMI (Body Mass Index)をもちいて,体格を狭長体・標準体・軽度肥満体・中等度肥満体・高度肥満体の4群にわけ各種死亡指数を分析した。(1)診査方法別でみると,全身診査に比べて面接士扱いの肥満体の死亡指数の悪化が男女とも示され,面接士扱いの肥満に対する選択力の弱さを示唆した。(2)年齢階級を29歳以下,30〜49歳,50歳以上の3群にわけ体格別の死亡指数をみたところ,男性では中高齢になるにつれ,狭長体で死亡指数の上昇と高度肥満体で指数の低下が示された。(3)肥満体の過腹囲で死亡指数が悪化するという傾向は,女性および39歳以下の男性にみられたが有意差は示されなかった。また39歳以下の男性では胸囲が腹囲より11cmをこえる中等度および高度肥満体の死亡指数は標準体よりも低かった。
著者
牧野 安博
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.78-87, 2003-03-17

2002年10月20日から23日まで米国フロリダ州オーランドで開かれた第111回AAIMに参加した。聴取した演題の一つアリアンツ再保険会社のRobert Coates医学博士による講演「血液凝固」の内容を資料として報告する。血液凝固の概念,血液凝固の引き金,関与する因子と各々の機能,血液凝固異常をきたす疾患,各疾患の危険評価上のポイントについての講演であった。