著者
米田 哲也
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

MRI位相情報は組織が受ける静磁場変化に鋭敏であるため、今回開発した磁化率強調画像化法(PADRE)により、組織の磁気応答を表すことができる画像を作成可能にした。PADRE画像は、従来の位相画像技術である磁化率強調画像化法(SWI)にくらべても様々な種類の組織コントラストを作成することができるだけでなく、自由に強調度を変化させ、診断画像として最適なコントラストを作成者側がコントロールできるなど、様々なメリットを持つ。臨床応用には、すでに脳幹部の微細構造の高コントラストを背景に、パーキンソン病をはじめとする様々な変性疾患の画像診断に応用が始まっている。
著者
伊藤 英臣 菊池 義智 佐野 友紀
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では魚類腸内細菌叢の機能解明モデル開発に向け、優れたモデル魚類のメダカに着目し、その腸内細菌叢に関する基礎情報を得ることを目的とした。室内飼育メダカと野生メダカの腸内細菌叢の群集構造を比較解析した結果、人工的な飼育環境下では本来の野外環境下とは大きく異なる腸内細菌叢が形成されることが示唆された。またメダカの、エラ、表皮粘膜、背ビレ、腸、腸内容物、そして卵の細菌叢を比較解析した結果、各組織にはそれぞれ特異的な細菌叢が形成されることが示唆された。
著者
咲間 妙子
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

レム睡眠行動障害(RBD)は,約80%がパーキンソン病やレビー小体型認知症などのアルファシヌクレイノパチーに発展する.本研究では,中枢性過眠症であるナルコレプシーへのRBD合併率を明らかにした.また,RBD患者においてレビー小体型認知症の中核症状である幻視と類似現象である錯視がみられることを明らかにした.次いで,錯視誘発検査と嗅覚検査・認知機能検査をナルコレプシーおよびRBD合併型ナルコレプシー患者に実施し,RBD/アルファシヌクレイノパチー関連所見がどの程度みられるのかを検討し,ナルコレプシー合併型RBDは特発性RBD例とは異なり同所見は認められず病態が異なることを明らかにした.
著者
蒔田 真司
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

【目的】閉塞性動脈硬化症患者の虚血肢に人工炭酸水による足浴を連日行い、足浴時血流量増加反応や下肢虚血症状への影響を検討した.【方法】閉塞性動脈硬化症(Fontaine分類11度)と診断された患者8例の虚血肢8肢を対象とし、人工炭酸水による足浴(約15分間、下腿遠位1/3まで浸水)を1日1回3週間連日で行った(炭酸水群).炭酸水は三菱レイヨン・エンジニアリング社製人工炭酸泉製造装置で作製し、CO_2濃度約1000ppm、水温35℃とした.足浴開始日と、1、2、3週間後に、症状優位側の下肢で足浴時皮膚血流量の変化を測定した.測定は、レーザードブラ血流計(アドバンス社製、ALF-21)を用いて足背部で行った.下肢の自覚症状は冷感・しびれ感を対象とし、血流量測定時10イントスケールで症状の強度を評価した.また、同温の淡水を用いた足浴を8例で行い同様に評価した(淡水群).【結果】炭酸水群では足浴時に最大277-800%(平均429%)の有意な皮膚血流量増加がみられた.また、冷感、しびれ感などの自覚症状が全例で軽減し、症状の強度は、1週間後6.2点、2週間後3.8点、3週間後2.8点(平均)で有意に低下した(p<0.01).初回足浴時の血流量増加率は平均で270%であったが、2週間後には341%、3週後には362%と有意な増加がみられた(p<0.05).一方、淡水群では、足浴中の最大皮膚血流増加率が173%と小さく、症状の改善度は低かった(3週間後平均8.5点).【結語】人工炭酸水の足浴で血流増加反応が得られた,また、炭酸水足浴治療の継続が、閉塞性動脈硬化症患者の冷感、しびれ感などの安静時虚血症状を改善させることが示唆された.
著者
石川 敬史
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

移動図書館は,単に図書を運ぶ手段ではなく,図書館の理念を実現するための一つの手段であった。同時に,何らかの移動手段によって図書館資料を運び,図書館員によるサービスを展開していた。戦後初期における日本の移動図書館は,図書の貸出のみならず,映画会などの文化を地域に運び,地域と図書館を確実につないでいた。「移動」する「図書館」活動は,多くの人々を巻き込み,地域や図書館のエンパワーメントにつながる。
著者
鬼頭 良輔 西尾 信哉 宇佐美 真一
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

突発性難聴は特定疾患(難病)に含まれ、患者のQOLを著しく低下させるため疾患の克服が期待されている。信州大学医学部耳鼻咽喉科の管理する難治性内耳疾患の遺伝子バンクに集積された突発性難聴患者のサンプル192例(患者群)およびコントロール群を対象に、過去に騒音性難聴や心筋梗塞、動脈硬化との関連が報告されている酸化ストレス関連遺伝子の遺伝子多型(31遺伝子39SNPs)を中心に、患者群とコントロール群とでの遺伝相関解析を行い、酸化ストレス関連遺伝子であるSOD1が突発性難聴の発症に関与することを見出した。
著者
佐々木 基樹
出版者
帯広畜産大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は、レッサーパンダの後肢足根部位のCT撮影をおこなった。CT撮影には、左後肢を用いた。脛骨長軸と足底面が垂直な状態、および、その位置から足を可能な限り回外させた状態の2通りの条件で足根関節部位のCTスキャン撮影を行った。さらに、得られたCT画像データを三次元立体構築して、足根関節の可動状況を観察した。また、肉眼解剖によって、後肢構成筋の形態を検索した。肉眼解剖の結果では、前脛骨筋の筋質はクマ科動物に比べると発達していなかった。さらに、膝窩筋の付着部位は、脛骨の近位に終止し、脛骨遠位端から膝窩筋終止部までの距離を脛骨の全長で割った比率は0.58とマレーグマの0.25-0.34、ジャイアントパンダの0.34-0.35、ホッキョクグマの0.45-0,56、ヒグマの0.49-0.56に比べるとホッキョクグマやヒグマに近い値を示した。この膝窩筋の付着範囲の結果から、レッサーパンダでは効率的な下腿の回内は見られないと考えられる。しかし、レッサーパンダの足根関節のCT画像解析の結果では、距踵中心関節において距骨頭の舟状骨関節面を中心足根骨が大きく回転し、さらに、踵第四関節において第四足根骨が、踵骨の立方骨関節面を大きく内腹側方向にスライドしていた。その結果として足の内側縁がほとんど垂直に挙上し足底が完全に内側を向いていた。これは、マレーグマで観察された足根関節の可動域よりも大きかった。レッサーパンダは生態学的には十分樹上性に適応しているが、筋による樹上適応は認められなかった。しかし、足根関節の樹上適応は明らかに認められた。大型のクマ科動物とは異なり、体重の軽いレッサーパンダにとって、関節の可動域が十分に確保されさえすれば筋を発達適応させなくても木登りは十分可能であると推測される。
著者
横田 洋
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は明治末期から大正初期の映画の取り締まりの様相について、調査研究を試みたものである。東京の警視庁では明治42年と43年に内規を作成し、映画取り締まりの方針を定めていたことが明らかになった。そこでは映画の特に子供の観客への悪影響を懸念していた点、また映画館が浅草公園のような興行街だけでなく、市内各所へ拡大していった点を警察が警戒していたことが理解できた。警察の取り締まりの重点事項は、既存の芸能には見られなかった映画の特質、あるいは映画の持つ魅力を同時に示しているものでもあっただろう。
著者
隠塚 俊満 中山 奈津子 伊藤 克敏 持田 和彦
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

作用機序の異なる11種の除草剤の珪藻キートセロスおよび鞭毛藻ヘテロシグマに対する急性毒性を検討した結果、珪藻はブロマシルなど光合成の光化学系Ⅱ阻害剤に対してより高い感受性を示した。また、近年赤潮が頻発している福山港の環境水中除草剤濃度を測定した結果、環境水中濃度は毒性値より50倍以上低い濃度であった。さらに、福山港表層の微細藻類計測値から微細藻類の多様度変化検討し、多様度を説明する環境パラメータを検討した結果、ブロマシル濃度は多様度変化と有意な相関が認められた。そのため、除草剤は実環境中で鞭毛藻赤潮の発生を含む微細藻類の群集構造に影響を及ぼしている可能性が想定された。
著者
重原 一慶
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

咽頭と尿路のHPV感染の疫学調査では、尿道炎男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、HPV検出率を検討した。HPV検出率は、咽頭18.3%、尿検体22.1%であった。次に、一般男性における尿路性器HPV感染率についての疫学調査では、823例の一般健常者を対象、亀頭擦過検体および尿検体HPV陽性率は、亀頭22.8%、尿5.8%であり、尿路に比較し亀頭のHPV感染率が高かった。最後に、80例のMSM患者(HIV陽性率93%)における肛門・尿路HPV感染の疫学調査では、HPV検出率は肛門検体88.7%、尿検体48.0%であった。男性においてもHPV感染は蔓延していると考えられた。
著者
江口 聡
出版者
京都女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度はコンピュータの集団的な利用による「責任の曖昧化」の問題を検討した。Therac-25に代表される高度な技術や、コンピュータ・ウィルス、ネットワークによる投票、P2Pファイル交換ソフトウェア等はどれも誰がどのような行為を行なったのかという点を不明確にし、それゆえ責任の所在がわかりにくくなる原因となる。このような問題を扱うには「責任」の本来的な意味が「賠償責任」であるのか、最近一部の論者によって提出されている「応答責任」なのかを明確にする必要がある。報告者の分析によれば、通常提出されている「応答責任論」は「責任を問う」ことと「責任がある」ことの違いを見失っている可能性がある。この点は上で述べたような集団責任の問題をとりあげれば明白になる。集団的な責任においては、(1)責任を問うべき個人が誰であるか明らかでなく、(2)個人を見た場合その落ち度はささいな場合が多く、(3)他人の行為について応答するということの意味が不明確である。報告者の主張では、われわれは責任の問題をあつかうにあたって、伝統的な目的論的な解釈をおこなうべきである。「責任」という概念の中心にあるのは「非難」であり、社会的に望ましくない結果を抑止あるいは予防し、加害者の教育や被害者の救済その他の目的のための手段としてプラグマチックに解釈するべきである。つまり責任という制度は、そのような制度を採用することの帰結によって正当化されるような擬制にすぎない。より詳細な研究成果は、平成18年度に各種学会および刊行物で公開する予定である。
著者
宮本 達也 中込 宙史 武田 正之
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

膀胱上皮細胞にPiezo1が発現しており、膀胱伸展刺激を感知し、尿意や蓄尿機能の調節を担っているのではないかと考え、研究を行った。マウス膀胱上皮にはPiezo1が発現していた。またPiezo1は伸展刺激に応答して細胞内にCa2+の流入させることが分かった。またPiezo1阻害薬であるGsMTX4は、膀胱上皮におけるPiezo1を阻害し、伸展刺激反応を鈍化させ、蓄尿に有利に働くことが分かった。
著者
藤井 正徳
出版者
京都薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,脳ニューロステロイドであるアロプレグナノロン(ALLO)とアトピー性皮膚炎における痒みとの関係を明らかにし,新規掻痒治療薬ターゲットを創出することである。特殊飼料給餌によりアトピー性皮膚炎様症状を発症したマウスにALLOを全身投与すると掻痒様行動が顕著に増加した。このALLO誘発掻痒には,脳内GABAA受容体機能亢進作用が関与することを明らかにした。また,ALLO合成酵素阻害薬finarsterideの投与によりエタノール誘発性掻痒が抑制されたことから,内因性に産生されたALLOが痒みを誘発する可能性が示された。
著者
馬渕 浩司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

琵琶湖の20m以深の深層には、比較的純粋に近い日本在来系統のコイの集団が生息することを、核ゲノムの解析により明らかにした。解析にあたっては、日本在来の系統とユーラシア大陸からの導入系統を区別できるような一塩基変異7つを核ゲノム中から見出し、交雑の解析に用いた。この7つのDNAマーカーはさらに、湖岸のある地点に産着されていた卵の解析にも使用し、その結果、この場所の産着卵の大部分は在来・導入両系統の中間的な交雑状態のものであることが判明した
著者
山岡 雅子
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,運動後のグルコースあるいはフルクトース溶液摂取が中心ならびに末梢循環応答に及ぼす影響について検討した.運動後低血圧時にグルコースを摂取すると,消化管の血管拡張に対して,体肢の血管応答をすばやく変化させ,さらなる血圧低下を防ぐよう調節されることがわかった.安静時にフルクトース溶液を摂取すると,血圧は上昇するが,運動後にフルクトース溶液を摂取すると,運動由来の体肢での血管拡張持続によって,血圧上昇の程度が抑えられることがわかった.これら両糖質溶液摂取時の血圧や局所の血管応答の違いに,両糖質溶液の胃から十二指腸への排出速度(胃内容排出)は関与していない可能性が示唆された.
著者
三浦 奈都子
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

静脈注射を行っていく上で少なからず経験するであろう点滴漏れに対するケアは冷罨法や温罨法と様々であり,統一性がないのが現状である.本研究では,点滴漏れ時のケアを確立することを目的に,実験動物(ラット)を用いて抗生物質製剤を中心とする基礎的研究を実施した.静脈注射を行っていく上で少なからず経験するであろう点滴漏れに対するケアは冷罨法や温罨法と様々であり,統一性がないのが現状である.本研究では,点滴漏れ時のケアを確立することを目的に,実験動物(ラット)を用いて抗生物質製剤を中心とする基礎的研究を実施した.その結果,パンスポリン^<【○!R】>(セフェム系抗生物質製剤,pH5.7〜7.2,浸透圧比1)が漏れた直後に冷罨法(16〜20℃)を30分間施行すると,皮下組織への炎症性細胞の浸潤が抑制され,温罨法(40〜43℃)を30分間施行すると,炎症性細胞の組織浸潤,筋壊死が促進されることを明らかにした.また,パンスポリン^<【○!R】>が漏出した際の組織傷害の種類は,表皮の壊死を伴わない真皮層の炎症(以後,起炎症とする)であることが明らかとなった.次に,pHの違いによる組織傷害の程度と種類,罨法の効果を明らかにするために,異なる薬剤を用いた実験を行った.その結果,セフェム系抗生物質製剤であるファーストシン(8)(pH7.5〜9.0,浸透圧比1)とグリコペプチド系抗生物質製剤である塩酸バンコマイシン^<【○!R】>(pH2.5〜4.5,浸透圧比1)による組織傷害の程度に違いは認められなかったが,パンスポリン^<【○!R】>と同様,起炎症性の薬剤であることが明らかとなった.これらの薬剤が血管外に漏出した場合,温罨法を実施することにより,皮下組織の炎症性細胞の浸潤が促進されることを明らかにした.全ての実験において罨法を実施するために用いた素材は,吸水ポリマーを使用した凍結タイプの保冷剤であり,皮膚へ密着しにくい特徴があったため,現在不凍タイプの素材にて同様の実験を行い検討中である.また,薬剤漏出直後に実施する罨法の適切な継続時間を10分から60分の間で検討中である.
著者
神代 健彦
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、戦後日本の教育研究をリードした教育学者勝田守一(1908-1969)について、彼の主張した教育学説の詳細を明らかにするとともに、現代教育学における勝田教育学の意義を検討することを目的としていた。勝田教育学は、1990年代以降、ポストモダン思想の影響を背景に厳しく批判されてきたが、本研究はその批判に耐えうる勝田教育学の今日的意義について明らかにした。とくに、2018年度より完全実施となった「特別の教科 道徳」について考える上で、勝田守一の教育学が極めて有効な視座を提供することが明らかとなった。
著者
伴 琢也
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

エリコイド菌根菌は子嚢菌門および担子菌門に属し,ツツジ科果樹の細根に菌根を形成する.本菌根は土壌中の栄養塩類の吸収と宿主植物への輸送などの機能を有し,ツツジ科植物の条件不利地域における自生を可能とするものである.本研究では我が国で自生または栽培されているツツジ科果樹(ブルーベリーおよびナツハゼ)を対象とし,根系における菌根菌の感染状況の把握と菌種を同定した.その結果,これらの根系には菌根菌が共生しており,特にブルーベリーについては,二次根と比較して一次根の菌根化率が高いことが明らかになった.また,菌相については栽培地域の環境要因が影響することが示唆された.
著者
中村 紫織
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)」は認知症の前段階とされ、Clinical Dementia Rating (CDR)でCDR0.5の「認知症疑い」に相当することがその診断基準の主要項目とされている。本研究は、先行研究でCDR0.5と判定された高齢者を追跡調査し、認知症に進行した人の割合を算出し、早期診断やハイリスク群の予測ができるかを検討する目的で実施した。本研究は疫学研究の要素を含むため、「疫学研究に関する倫理指針」(平成14年文部科学省・厚生労働省告示第2号)及び平成14年6月17日付け14文科振第123号文部科学省研究振興局長通知に定める細則に沿って東京慈恵会医科大学の倫理委員会の承認を得た。平成10年度に新潟県糸魚川市の高齢者への健康調査でCDR0.5と判定された252名のうち、生存者193名を対象とした。本人と家族に対し、本研究の目的、方法、意義、対象者への人権保護の配慮(守秘義務等)について十分に説明した文書と調査への協力の依頼状を送付し、賛同を得られた111人に対して精神科医師と保健師が訪問調査を実施した。その結果、33人はMCIにとどまっていると判断されたが、78人が認知症と診断され、アルツハイマー型認知症55.1%、血管性認知症29.5%、その他の認知症15.4%であった。7年間でMCIから認知症に進行した人の割合は70.3%、前回調査の時点で「直近一年間で進行性の認知機能変化がある」と判断された群では87.2%、「一年前とは変化がない」と判断された群では60.0%であった。CDR0.5に該当するというだけではなく、短期間における進行性の認知機能低下を認める場合にハイリスク群として経過を追うことが早期診断をする上で有効と考えられた。本調査の結果は第13回国際老年精神医学会、世界精神医学会国際会議2007で報告した。
著者
小高 信彦
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

絶滅危惧種ノグチゲラは、スダジイの優占する沖縄島北部、やんばる地域の森林に固有のキツツキである。近年、ノグチゲラがリュウキュウマツ枯死木に営巣し、繁殖に失敗する事例が観察されるようになった。リュウキュウマツ枯死木は、主に人工植栽とマツ材線虫病の侵入によって人為的に創出されたものである。リュウキュウマツ枯死木に営巣したノグチゲラの巣立ち成功率は、やんばる地域の照葉樹林の優占樹種であるスダジイの場合よりも低いにもかかわらず、ノグチゲラは営巣木としてリュウキュウマツ枯死木に対する選好性を示した。これらの結果は、マツ材線虫病によって発生したマツ枯死木はノグチゲラに対してエコロジカルトラップとして作用するという仮説を支持する。