著者
関 耕平
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、1)鳥取・岡山両県の県境に位置する人形峠におけるウラン鉱山から排出された放射性廃棄物(ウラン残土)残置問題の解決過程の分析、2)これまでの産業廃棄物の不法投棄事件との異同を明確化すること、3)放射性廃棄物の保管・処理や移動・撤去をめぐる地域紛争の現状と政策課題を明らかにすること、である。とくに福島原発の事故以降、各地で放射性廃棄物の中間貯蔵施設建設・立地をめぐって地域紛争が生じている状況に対し、残置状態から完全撤去へと至った人形峠ウラン残土問題の解決過程を踏まえて分析し、コミュニティ再生の重要性とその政策課題について明らかにした。
著者
竹田 有加里
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では膵β細胞の長鎖脂肪酸レセプターGPR40刺激によるインスリン分泌増強作用、及び腸管ホルモンGLP-1レセプター(R)との同時刺激によるインスリン分泌相乗作用機序の解明を目的とする。長鎖脂肪酸EPA及びGPR40シグナル伝達系下流因子PKCの活性化薬は、β細胞株INS-1のインスリン分泌を増加させた。またGLP-1R (cAMP系)との同時刺激によりインスリン分泌を相乗的に増強させ、その作用はPKA阻害剤で完全に抑制されたことからGLP-1RとGPR40シグナル伝達系のクロストークが示唆された。理論研究の結果IP3Rがそのクロストークターゲットの主要因子であると示唆された。
著者
秦 邦生
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

この研究課題では、従来の文学史・文化史の修正を目指して、1930年代から50年代のイギリス文学・文化を「後期モダニズム」ならびに「後期帝国主義」の観点から研究した。その具体的な研究対象は、ジョージ・オーウェルのディストピア小説、ディケンズ小説翻案、スパイ小説と映画など、多岐にわたった。この研究課題はこれらの文学・映画テクストを、(1)戦後福祉国家体制の成立、ならびに(2)第二次世界大戦から冷戦へと至る、イギリスをとりまく国際関係の変容、という文脈に置くことで、それらが現実との葛藤のなかで形成されるプロセス、ならびに、社会批判やユートピア的な可能性がそれらの作品に記録される過程を浮き彫りにした。
著者
中村 謙太郎
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、コマチアイトの広範な組成とその時代変化が蛇紋石化反応に与える影響を明らかにすることを目的として行われた。その結果、(1)変質による水素の発生量は、MgO含有量20~25 wt%で明瞭に切り替わり、これ以上では10mmol/kgオーダーの水素が生ずるのに対して、これ以下ではサブmmol/kgオーダーの水素しか生じないこと、(2)コマチアイトのAl組成は、自然に存在が知られているバーバートンタイプからゴルゴナタイプまでの範囲では、水素発生量に大きな影響を与えないこと、(3)カンラン岩は300℃で水素発生量が最高値に達して、それより高温では水素発生量が急激に減少するのに対して、コマチアイトは350℃で水素発生量が最高値に達し、400℃でもあまり下がらないことが明らかとなった。
著者
高橋 栄造
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アエロモナスが産生する菌体外メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼの性状解析を行った。メタロプロテアーゼは中間体として菌体外に放出されたのち、成熟体へと移行する。その中間体の性状解析のため、大腸菌でメタロプロテアーゼを発現させたが、中間体は検出されなかった。また、セリンプロテアーゼは37℃より25℃の方が産生量が多く、またその産生は培地中に添加したスキムミルクで増強されることがわかった。
著者
沓掛 展之
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、真社会性ハダカデバネズミを対象に、群れ生活の維持に重要な役割を果たす集団的意思決定(個体が協調して複数の選択肢からひとつの選択肢を選ぶ意思決定)を研究する。同種は、複数個体が協調した労働行動によって地下トンネル内に複数の部屋を形成し、それぞれの部屋をネストや巣材溜め場に使い分ける。本研究では、この決定過程における決定個体、労働コストとの関連、個体間コミュニケーションを実験的に検証する。また、シミュレーションを用い、個体の行動ルールと集団的意思決定の関係を検証する。理論と実証の併用により、カースト制という複雑な社会的特徴を持つ真社会性哺乳類における集団的意思決定の理解を進める。
著者
深本 花菜
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

増殖死を指標として昆虫細胞への放射線照射の影響を調査した。その結果、低線量照射ではほとんど影響は認められなかった。それ以上の線量では線量依存的に細胞増殖率が減少したものの、高線量照射区でも細胞数の変化は認められず、死細胞数の増加も観測されなかった。生存率-増殖曲線から求めた各パラメータ値は予想より低いものの哺乳類細胞と比較して高く、改めて昆虫細胞が放射線に高い抵抗性を有することが証明された。
著者
村山 絵美
出版者
武蔵大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題は、ユタの「口寄せ」に注目し、「死者の声」を聞くと観念される行為が、依頼者のグリーフワークに与える影響について検討することを目的とするものである。平成26年度は、最終年度であるため、過去2年間の研究成果を踏まえた上での追加調査に重点が置かれた。具体的には、①平成26年6月に実施したフィールド調査、②追加資料の文献調査が挙げられる。まず、フィールド調査では、これまでに聞き取り調査を実施した関係者に、追加での聞き取りを行い、不明箇所を確認することができた。また、沖縄戦の慰霊の日である6月23日に、これまでの調査対象者に関連する慰霊祭に参加し、参与観察を行った。文献調査では、継続的に調査を行ってきた沖縄県立図書館郷土資料室を中心に追加調査を実施した。これにより分類作業のなかで明らかとなった不明箇所を確認することができた。今年度はフィールド調査、文献調査共に予定していた追加調査を実施することができたが、調査結果をまとめる予定であった後半の期間に療養を要する事態となり、これまでの成果を十分にまとめることができなかった。回復を待って、今後、随時成果をまとめ、公表していきたい。本研究課題の調査を通して、沖縄の戦後におけるユタの「口寄せ」に関する社会的な需要の状況を確認することができた。体系的な資料の整理などは、沖縄のシャーマニズムと近代化との関係を考える上でも、重要な成果といえる。ユタと依頼者とのやり取りのなかで「口寄せ」などのグリーフワークの役割を検討した研究は少ないため、研究の端緒を開くことができた意義は大きい。
著者
花村 一朗 仁田 正和 飯田 真介 谷脇 雅史 後藤 麻友子 JOHN Shaughnessy
出版者
愛知医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒト骨髄腫細胞株を用いた検討では、染色体1q21領域の増加/増幅の多くは1番染色体そのものまたは長腕の増多に伴って起きたものであり、jumping/tandem translocationといった複雑な転座様式をとったものは約30%であった。未治療MM例とは異なり細胞株においては1q21の増加の有無や増幅様式の差と、13q14欠失、17p13欠失、Ig領域との染色体転座で脱制御されるCCND1やFGFR3、c-MAF、MAFBなどとの間に有意な相関は認めなかった。このことは、細胞株は進行期の病変から樹立されることが多いためと思われるが、MMにおいて1番染色体長腕その中でも特に1q21は特異な領域であることが改めて示唆された。
著者
吉田 朗彦
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小円形細胞肉腫とは、小型の円形細胞の増殖からなる肉腫の総称である。この中にはユーイング肉腫など既知の腫瘍型も複数含まれるが、5-10%ほどの症例は現在の診断基準では分類できず、そうしたなかに再認可能な腫瘍型を同定することが、最適な治療法の選択や開発に不可欠である。我々は、次世代シーケンスをはじめとした遺伝子解析や臨床病理学的解析を用いて分類不能小円形細胞肉腫を詳しく調べ、CIC遺伝子融合陽性肉腫やSMARCA4欠損型胸部肉腫といった、新しい腫瘍型の臨床病理像や遺伝子異常を明らかにした。
著者
清水 誠
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

TGR5は胆汁酸をリガンドとするGタンパク質共役受容体であり、その活性化は抗肥満・抗糖尿病効果を示すことが知られている。本研究では、TGR5を活性化する食品成分のスクリーニングを行い、ノミリンを含む複数の食品成分を同定した。動物実験の結果から、ノミリンは肥満や耐糖能異常を改善する事を明らかにした。また、TGR5を活性化する他の成分(成分A)に関しても、高脂肪食による体重増加を抑制する効果がある事を明らかにした。
著者
中村 友也 一條 裕之
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

過度の幼少期ストレスが成長後の不安やうつを惹起するメカニズムを明らかにするため、生後10-20日のマウスの仔を母親から毎日3時間分離し,成長後の個体の行動とストレス関連部位の外側手綱核、海馬、扁桃体の神経回路変化を調査した。幼少期ストレスを与えた群では、コントロールと比較して外側手綱核特異的に抑制性のParvalbumin陽性細胞数が減少し、ストレス下の興奮性神経細胞の活動性が上昇し、不安様行動とうつ様行動がみられた。本研究では不安やうつを引き起こす幼少期ストレスが外側手綱核特異的に抑制性回路を改変して高次機能に影響を及ぼすことを明らかにした。
著者
高城 徳子
出版者
日本薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

脂質過酸化反応において、産生される反応産物は酵素による生体反応とラジカルや活性酸素による酸化ストレスで生じる反応産物も同じものとして測定している。そこで、これらを区別することが、抗酸化剤による酸化ストレス防止には重要であると考えられる。リポキシゲナーゼによる酵素的反応と、ラジカル発生剤による化学的反応、紫外線照射による物理的反応において産生される物質と生体内のアミノ酸等との反応で産生される反応産物で相違があるか検討を行った。結果としては、酵素反応、化学的反応および物理的反応で生じる反応中間体、反応産物に相違は認められなかった。
著者
八木 直樹
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、戦国大名大友氏と室町幕府・朝廷との関係を明らかにすることである。成果として、戦国期の大友氏当主が室町幕府・朝廷から獲得した守護職などの幕府官職と官位などの栄典について、彼らがいつ何を獲得したのかを明確にした。大友義長は3つ、大友義鑑と大友義鎮は8つの幕府官職と栄典を獲得していた。これらには、大友氏が申請のもの(主に守護)と幕府側より与えられたもの(主に栄典)があった。戦国大名大友氏と室町幕府・朝廷との交渉の頻度は、保守的なイメージとは異なり多くはなかった。本研究により遠国の戦国大名と室町幕府・朝廷との関係のあり方を提示することができた。
著者
熊崎 美枝子
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

煙火組成物として過塩素酸アンモニウムと塩化マグネシウムの混合物を用い、水分による劣化機構の解明と物理的変化の評価を行った。調湿環境下での挙動を把握するため、調湿環境の整備と反応量の測定手法を確立した。測定から、水分吸着による可逆過程と水分との反応による不可逆的な変化が発生することがわかった。水酸化ナトリウムの生成のほか、酸性条件下では過塩素酸の還元過程が存在することが示唆された。体積膨張によるクラックのほか、体積・密度変化が観察されたが、体積膨張速度より吸湿による重量増加速度が大きいことがわかった。劣化前後の燃焼試験で組成変化による燃焼速度・燃焼温度の変化が観察された。
著者
川上 純一
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

【目的】緊急安全性情報や厚労省からの通達によって、インフルエンザ脳炎・脳症の発症とその重症化への一部の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の関与が指摘されている。本症の特徴は、脳内でウイルスが検出されないこと、血清・脳脊髄液中において高濃度の炎症性サイトカインが検出されること、脳血管の損傷が認められることであり、脳血管透過性の上昇や血液脳関門(BBB)の破綻と密接な関わりがあると考えられる。本研究では、in vitroのBBBモデルのtight性に対する炎症性サイトカインやprostaglandin E_2 (PGE_2)の作用とそれに及ぼすNSAIDsの影響について検討した。【方法】ウシ脳毛細血管内皮細胞とラットアストロサイトをTranswell^<TM>に共培養させたBBBモデルを作成した。IL-6を単独またはTNFα・IL-1βと併用添加し、経時的にTranscellular endothelial electric resistance (TEER)値を測定した。PGE_2を添加し、経時的にTEER値を測定した。ジクロフェナクナトリウム(DCF)またはSC-560(COX-1選択的阻害剤)の存在・非存在下においてTNFαまたはPGE_2の添加がTEER値に与える影響を検討した。【結果・考察】TEER値はIL-6により濃度依存的に低下し、TNFα・IL-1βの併用によりさらに低下した。PGE_2の添加によりTEER値は低下し、DCFの存在下ではその低下は増強された。しかし、SC-560の存在下ではその増強は観測されなかった。以上より、炎症性サイトカインとPGE_2はBBB透過性を上昇させる作用を有していること、また既にPGE_2が産生している炎症状態おいて後からDCFが投与された場合にはPGE_2のBBB透過性の上昇作用が増強される可能性があることが示唆された。
著者
石橋 大輔
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、宿主の自然免疫機構に着目し、プリオン感染との関係について検討した。結果として転写因子IRF3がプリオン感染に重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究により、自然免疫機構をターゲットにしたプリオン病の予防・治療薬の開発が進むと考えられる。
著者
岡崎 俊太郎
出版者
生理学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,発声と聴覚(音声の聴取)の相互作用とその神経基盤に着目し,これまで吃音者の流暢性を増大させるために用いられてきた手法の作用機序を解明することである.特に発話が聴覚フィードバックに合わせて実行されてしまう「引き込み現象」について非吃音者および吃音者においてその特性を網羅的に調べた. 13名の非吃音者および吃音者5名において自声および他声を聴取したときの発話の音響特性を分析した.その結果,発話の途中における引き込み現象は非吃音者および吃音者双方に観測され,この現象によって,斉唱や遅延聴覚フィードバックが,吃音者の非流暢性低下させるメカニズムを説明できることが分かった.また発話の開始時においては非吃音者では引き込み現象が起こらず,能動的に発話を開始していたが,吃音者では発話の開始自体を聴覚フィードバックに対する引き込みに依存する傾向が見られた.この結果から,聴覚情報として自分の声が必要な遅延聴覚フィードバックよりも斉唱のほうが吃音者の非流暢性低減に高い効果を示す理由が説明できる.本研究の結果は,今後の吃音に対する言語聴覚療法に対して有用な情報を提供し,これまで健常者だけでは不明瞭であった発話制御機構の神経基盤解明につながるものである.
著者
板橋 貴史
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

成人ASD当事者を対象に、安静時、課題fMRI、行動研究を実施し、認知的柔軟性に関わる神経基盤と周辺要因について検討を行った。安静時fMRIでは、認知的柔軟性に寄与していることが予想される島皮質に対して、その機能的分化が健康成人と異なるかを検討した。その結果、島皮質における機能分化がASDと健康成人では異なる事が明らかになり、特に認知、情動に関わる領域がASDにおいて感覚に関わる領域に置き換わっていることが明らかになった。課題fMRIでは、両側の上側頭回の賦活が低下し、その低下度合いと社会相互性の障害の重症度が相関することを明らかにした。周辺要因として心的距離に焦点をあて、調査を行い検討した。
著者
車井 浩子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、代理変数を含む回帰モデルにおける推定量の統計的性質と代理変数の質の関係を明らかにし、実証分析へ応用することを目的とした。推定量の理論的分析に関しては、各種縮小推定量を用いて研究を行った。分析結果より、用いる代理変数の質が推定量の統計的性質の評価に影響を与えることが明らかになった。さらに、評価基準である損失関数を考慮すると、用いる損失関数によっても推定量に関する評価が異なることが明らかになった。これら結果より、推定量の統計的性質に着目した場合、代理変数の質が良い場合であってもその代理変数を用いないほうが望ましい場合があり、観測不可能な変数が回帰モデルに含まれる場合には、推定量の評価基準や代理変数の質を考慮した上で推定方法の選択を行うべきであることが明らかになった。これら結果は、論文1にもまとめられている。さらに、今年度はこれら理論分析による結果を考慮した賃金関数の実証分析、および実証分析を行う上でさらに必要となる推定量の理論分析を行っている。実証分析においては、研究対象を大卒男性とし、賃金センサスによるデータを用いている。実証分析を行う際には、得られた推定量の有意性について仮説検定を行う必要がある。しかし、本研究で用いている各種推定量については、その密度関数を理論的に求めることは難しく、仮説検定を行うことが極めて困難である。本研究では、この点にも着目し、推定量の密度関数に関してブートストラップ法を用いた分析を行っている。ブートストラップ法を用いることで、密度関数がわからない推定量についても、有意性の検定を行う際の棄却域を数値計算により求めることが可能であり、本研究や用いている各種推定量をより適切に実証分析に応用することが可能になる。論文1.非対称な損失関数に基づく代理変数の統計的性質、国民経済雑誌2005年