著者
安彦 智史 長谷川 大 プタシンスキ ミハウ 中村 健二 佐久田 博司
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.41-58, 2018 (Released:2019-06-04)

プライベートチャットアプリケーションのID 交換を目的とした掲示板 (ID 交換掲示板 において違法・有害な情報を含む書き込みが増加傾向にある. ID 交換掲示板では,多様な隠語表現を用いたやり取りが行われており意図的に崩された日本語が多く含まれるため,従来の手法では有害性評価を行うことが困難である.そこで本研究では,ID交換掲示板における隠語表現を分類し,特に表層的な表記揺れが生じる環境下でも有害性判定を行える手法を検討する.
著者
杉野 隆
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第7回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.6-2, 2011 (Released:2020-05-25)

「管理」という言葉の由来を中国清代、日本の江戸・明治時代の文献に遡り、当時における意味を確認する。また、江戸時代に翻訳された中国の小説などを元に、「管理」の意味が変わっていないことを確認する。更に、現在において、品質管理における「管理」の意味、「管理」に対応する3つの英語 administer、control、manageの意味の違いを調べ、PDSサイクル上にプロットすることによって、多義的な「管理」の意味の位相を明らかにする。
著者
古賀 広志
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第13回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.b22, 2017 (Released:2019-07-17)

近年、社会物質性という考え方が注目されている。それは、システム開発の開始時点で、組織と技術を分離して考慮するのではなく、組織的行為=情報実践の中で両者が浮かび上がってくるとする考え方である。しかし、その視座はシステム設計に役に立つのか、という批判が少なくない。ところで、社会性物質の視座は、ソフトウェア工学におけるアジャイル開発の設計思想と軌を一にする点が少なくない。そこで、本稿では、アジャイル開発における社会物質性の意義を探ることにしたい。そのために、まず問題の所在を明らかにし、次いで社会物質性について概説を行い、最後にアジャイル開発の実践的意義について私見を述べることにしたい。
著者
松平 和也 小久保 幹紀
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第7回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.2-2, 2011 (Released:2020-05-25)

日本には情報参謀が育たなかったと信じられている。直近の太平洋戦争での情報戦は戦争開始前から負けていた。情報という言葉が明治初年に軍事用語として使われ始めた。そのため、一般の日本人にはなじみがないというのかもしれない。確かに太平洋戦争において、情報の活用は未熟であった。そのため、真珠湾奇襲からして、その奇襲により米国民の意欲を挫いてしまうという目的を達成できなかった。逆にルーズベルト大統領に外交暗号を解読されていて、“リメンバー・パールハーバー”という合言葉で、米国国民の日本への憎しみをあおられ、米国国民一丸となった参戦をはたした。しかも、“日本人はずるい”という言葉が戦争中流布された。誇り高い山本五十六大将は、この戦争開始時の米国への情報伝達について大変気にしていた。不思議なことに、山本大将自身は、司令部に情報参謀を配置しなかった。しかも、自分自身が米国の傍受網にかかり乗機が撃墜されて戦死した。戦後、米軍は日本の諜報技術をつぶさに調べて、陸海軍の一部情報参謀の優秀性を評価している。日本の陸海軍の情報参謀は、情報の無視と軽視の環境下でも地道に努力を継続し、劣勢の中で独特の工夫をしていた[1]。しかしながら、指導者に影響を与えられるだけの知識を有した国家的参謀を育てられなかったので戦争に負けたといえる。現在に至るまで、国家情報参謀は育てられていない。本論文では、日本人の情報活用能力が諸外国に比して遅れていたわけではないことを主張する。と同時に、日本の歴史上国家に貢献した参謀を見出し、彼らが如何に国家情報参謀足りえたかを、彼らの知識獲得の仕方、獲得した知識の分野などから学ぶ。これにより、今後、国家参謀を育成する上で、不足している教育分野を明らかにした。本論から、国家情報参謀育成の知識モデルを示す。国家が、進化的変革を達成しつつ持続的成長を実現するためには優れた人材を育て、その知識資源の有効活用によって、日本国家リーダが正しい意思決定を行うことで日本の政治経済力の一歩前進を期待するのである。
著者
高橋 利枝
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.7-17, 2019 (Released:2019-06-10)

本論文の目的は,人工知能(AI)やロボットがもたらす社会的インパクトを理論的かつ経験的に捉えることである.まず理論枠組みとして,これまで理論と経験的調査研究との往還運動を通して発展させてきた「コミュニケーションの複雑性モデル」について紹介をする.次に,AIやロボットに関する日本と西欧の差異についてアプローチしていく.両者の差異に関しては,これまで思想や宗教的な観点から主に多く説明されてきた.そのため本稿では,ケンブリッジ大学との共同研究「グローバル・AIナラティブ」プロジェクトから,1920年代以降のAIナラティブについて社会経済的な力学から考察を試みたいと思う.さらに人とAI/ロボットとのエンゲージメントに関する実態について,現在行なっている2つの調査研究—若者とAI調査,高齢者のロボット・エンゲージメントから考察する.最後に今後のAI/ロボット開発において必要な「ヒューマン・ファースト・イノベーション」について提案したいと思う.
著者
安岡 美佳 ニールセン レーネ
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.14-30, 2014 (Released:2017-06-08)

人間中心のシステム開発手法の一つであるペルソナ法は,ユーザの顕在ニーズを汲みとり,非顕在化ニーズを洞察するためのデザイン・ツールとして 欧米を中心に利活用されてきた.近年,日本でもペルソナ法が利用されるようになってきたが,活用方法はもとより作成プロセスに関しても参考になる事例 は限られているようだ.ユーザ群を的確に反映するペルソナ作成はペルソナ手法の利用効果を最大化するためには欠かせない. 特に,利用対象者が多岐に渡り多くの属性への対応が不可欠になってくるITシステム,例えば 電子政府の構築においてペルソナ法を利用する場合は,社会的責任や社会全体に対するインパクトが高いことからも,一層適切なペルソナ構築が重要になる.本論は,ペルソナ活 用段階以前の「ペルソナ作成プロセス」に焦点を当て,大規模公共システムのための効果的かつ実践的なペルソナ構築方法を論じる.事例として,国家規模 の電子化の成功事例として国内外で言及されることが多いデンマーク電子政府のアプリケーション,「電子政府ポータル」を扱い,ペルソナ作成には反復を 前提とした精錬プロセスが不可欠であること,さらに,プロセス全般において,利害関係者の積極的な参加が重要であることを示す.デンマークの電子政府 ポータルで活用された参加型を採用した国民を包括するペルソナ群の構築方法は,今後我が国で増加すると想定される社会的インパクトの強いITシステム のためのペルソナ構築事例として,重要な示唆を与えるものと考える.
著者
松平 和也
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第2回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.7-04, 2006 (Released:2021-01-04)

今情報システム部門は役割を見失っている。発足以来電算課から情報システム部門へとすくすく育ったが経営環境の急変に付いて行けずに旧来の機能を墨守しているに過ぎない。戦略情報システム子会社ともてはやされて分社したら、数年を経ず電算メーカに売却されてしまったなどという例もある。コストカット対象部門になって久しい。 情報の語源は敵情報知からきたという。この語源が示唆することは、この部門の本質的機能は経営者に敵、即ち競争相手および潜在的競合の情報を報告知らせることではなかったか。軍組織ではこの役割は情報参謀と言っていた。CIOはこの参謀達の主任である。本論文ではダブルキャストのCIO制と配下の参謀組織を文字通りSTAFFとして再編成して持つ新しい役割機能を提案するものである。
著者
冨永 章
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第2回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.7-01, 2006 (Released:2021-01-04)

ソフトウェア規模の増大に伴い,ちょっとした間違い(グリッチ)が大事故に繋がるリスクが高まっている。組込み分野の欠陥は意外な結果となり目立ち易い。しかし,大企業の情報システムはもっと複雑な場合が多く,また機器のように比較的閉じた世界にはない。ソフトウェアの複雑化はグリッチを招き,社会問題ともなり得る。設計までの考慮漏れの場合はテストもされないため,防止策の立案は容易ではない。保険制度等はあるが,予防ではなく賠償策である。本稿ではグリッチの予防に必要な事を整理し,最近のプロジェクトで効果のあった策を示す。
著者
佐々木 桐子
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第11回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.a21, 2015 (Released:2019-10-28)

日本海側の地域では,冬,急速に発達する低気圧により地吹雪がしばしば発生する.地吹雪発生時,幹線 道路では通行止めや交通規制の措置が速やかにとられるようになったが,代替先の道路では交通容量を超え る人や車輌であふれ,大きな混雑や渋滞が発生し,二次的影響も少なくない.そこで本研究では新潟国際情 報大学周辺で 2010年 2月に 発生した地吹雪に関して,当時の状況を再現すべく交通流のシミュレーションモ デルを構築し, 幹線道路の通行止めが周辺道路へもたら した影響に関して分析をおこな った
著者
花本 洋平 古宮 誠一
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第4回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.D1-2, 2008 (Released:2020-06-29)

オブジェクト指向言語で開発されたプログラムでは,ポリモーフィズムによって分岐網羅の基準が実際の分岐を反映しなくなるため,分岐網羅のテストカバレッジが100%であっても十分に分岐をテストしているとは言えない.本研究では新しい分岐網羅基準を提案し,その基準に基づいたカバレッジを取得するためのツールを開発することでオブジェクト指向プログラムの信頼性を向上させることを目的とする.また,有用性についてはオープンソースソフトウェアに対して実験を行うことで検証する.
著者
石田 和成
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集 第5回全国大会・研究発表大会論文集 (ISSN:24339318)
巻号頁・発行日
pp.A2-2, 2009 (Released:2020-06-29)

Wikipediaにおけるエイリアスもとづき,キーワードの表記ゆれ情報の抽出を行った.エイリアスはWikipedia内のページ名と異なる名前で, 指定したページへのリンクを張る仕組みである.この仕組みを用いて,Wikipediaの編集者はページ編集において,編集中の文脈に沿ったキーワードを選定して文章を構成する.そのため,本研究ではエイリアスにもとづきキーワードの表記ゆれおよび同義語の抽出を試みた.
著者
中山 義人 森 雅広 成末 義哲 森川 博之
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会誌 (ISSN:18842135)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.26-38, 2018 (Released:2019-06-17)
被引用文献数
1

営業活動における意思決定から,営業担当者個人の経験や直感といった属人的要素を取り除くことにより 営業活動を大幅に効率化するための手段が求められている .筆者らはこの 課題に対し, 機械学習モデルを 用いた 業務意思決定支援システムの構築を試みて いる その構築に際し, 受注確率が高い営業活動の プロセス を学習する必要があるため,営業活動の 意思決定 から 規則性を 抽出するプロセス発見技術が不可欠である. 従来の プロセスマイニング におけるプロセス発見手法では ,定型的な業務プロセスを対象として システム出力されたイベントログに含まれるイベントの実行順序の情報から 業務プロセスの規則性やルールを抽出する しかし 営業活動の意思決定においては ルールが予め分かっていないだけでなく 入力情報が営業日誌などの非構造化データであるために ,従来のプロセス 発見 手法 を 適用する ことは困難である そこで 本稿では 業務意思决定支援システムに向けた 営業活動の 意思決定 の プロセス発見手法に対し 非構造化データに基づいた アクティビティ 推定,および,非定型プロセスにおける規則性を確率的に表現するための プロセス推定を用いた プロセス発 見手法を示す.
著者
中西 昌武
出版者
一般社団法人 情報システム学会
雑誌
情報システム学会 全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.13, 2017

業務システムで扱うデータは膨大であり,登録は根気のいる厄介な仕事だが,上手な運用次第で,不完全な登録でも業務サービスが有効に行える場合がある.その昔,建学間もない筑波大学の図書館において,前身の東京教育大学からの膨大な蔵書移送に対し,漸次的にデータベースを構築しつつ,図書貸出業務の効率性や利便性で工夫があった例がそれである.本稿は,当時あった「利用優先,登録あとまわし」の現場理念について事例研究する.