著者
中邑 幾太
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-1,10, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

Generally speaking, there are two aspects in the judgment of the scale value of attitude. The one is that in which the scale values are judged in terms of agreement with the statements of attitude, and the other is that in which they are judged in terms of opposition to the statements. L. L. Thurstone has pointed out the reliability of the experimental scale value S dependent on agreement with the statements of attitude, but the present writer has been thinking that the attitude measurement in terms of the experimental scale value S' dependent on the opposition to the statements would be none the less effective, and that for that reason it may be of great necessity to find out a new formula which is able to measure the attitude in terms of the continuous variable which has both directions mentioned above. The attitude score L by R. Likert, though without any scientific and statistical foundations, has been relatively valid and reliable scoring on the basis of the attitude continuum with both directions of agreement and opposition.The present writer has experimentally examined the validity and reliability of such attitude indices as S, S', L, S-S' and S/S', and found out that S-S' is the most valid and reliable of them all. However, it must be admitted that S-S' is not free from some defects as its calculation is very complex and the opinions selected in its scale are quite few.In order to correct these defects, the present writer thought it best to apply S, S', and S-S' to the attitude scale measured by Thurstone's method of apparently equal intervals. Based on the experimental results, the present writer has concluded that Sr-S'r is the most valid and effective of, all these subjective rating scale values, Sr, Sir and Sr-S'r, measured by the method of apparently equal intervals.When examined statistically, S-S' has a significant difference. Such significant differences, existing not only in the area of attitude measurement but also in the form of perceptional judgment, necessarily call for further psychological investigations and interpretations.
著者
濱口 佳和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.248-264, 2017
被引用文献数
5

本研究は自記式能動的・反応的攻撃性尺度(大学生用: SPRAS-U)を作成し, 因子構造, 信頼性, 妥当性を検討するとともに, 身体的攻撃, 言語的攻撃, 関係性攻撃との関連を明らかにすることが目的とされた。SPRAS-U原版は, 能動的攻撃性として他者支配欲求, 攻撃有能感, 攻撃肯定評価, 欲求固執, 反応的攻撃性として, 易怒性, 怒り持続性, 怒り強度, 報復意図, 外責的認知の合計9下位尺度, 合計75項目から構成された。1短大・5大学の学生616名(男子294名, 女子322名)から妥当性検討の尺度が異なる2種類の質問紙に対する回答を得た。因子分析の結果, 想定された9因子が得られ, α係数による信頼性は7下位尺度で.70以上の値を示し, 概ね使用可能な範囲にあった。反応的攻撃性の下位尺度の殆どがBAQの敵意や怒り喚起・持続性尺度, FASの報復心と中程度以上の正の有意相関が見られ, 能動的攻撃性の各下位尺度は一次性サイコパシー尺度やFASの支配性と中程度の正の有意相関を, 共感性とは負の有意相関を示し, 併存的妥当性が実証された。重回帰分析の結果, 身体的攻撃は主に反応的攻撃性と, 言語的攻撃は主に能動的攻撃性と, 関係性攻撃は能動的・反応的両攻撃性の下位尺度と有意な関連を示した。
著者
芝崎 美和 山崎 晃
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.256-267, 2016
被引用文献数
1

本研究の目的は, 児童の謝罪が幼児と同様に罪悪感によって規定されるか否かを明らかにし, 違反発覚の有無という点で異なる約束違反場面と欺き場面での加害児の謝罪についての児童の予測が罪悪感認識の程度と関連するか否かについて明らかにすることであった。調査対象者は小学2年生87名, 4年生86名, 6年生79名であった。分析の結果, 以下の3点が明らかになった。第1に, 所有物の持ち去り場面で加害児の行動として謝罪を推測した者は罪悪感低群よりも高群で多く, 反対に自己中心的方略を推測した者は罪悪感高群よりも低群で多かった。第2に, 約束違反場面では加害児の行動予測に罪悪感認識の高低による違いはみられず, 加害児の罪悪感の程度にかかわらず謝罪が多く予測された。第3に, 欺き場面では, 罪悪感認識の高低によって謝罪を推測する程度には違いがみられなかったが, 罪悪感低群では自己中心的方略を推測した者が多く,他方,罪悪感高群では, 向社会的方略を推測した者が多かった。以上のことから, 児童の謝罪が罪悪感に規定される程度は違反の種類によって異なり, 所有物の持ち去り場面での児童の謝罪は罪悪感と関連するが, 約束違反場面での謝罪は罪悪感と関係しておらず, 違反が発覚しない欺き場面では, 罪悪感は謝罪ではなく向社会的方略を促すことが示された。
著者
一柳 貴博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.79-94, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
31
被引用文献数
5

本研究の目的は,小学校の通常の学級に在籍するASD特性児に対する「周囲児」の行動メカニズムを検討し,両者の関係形成に向けた支援を提案することであった。小学校教諭95名を調査協力者とした質問紙調査を実施し,周囲児の要支援行動が「ある」と回答した35名のデータを用いて,周囲児の要支援行動および代替行動の内容・きっかけ・結果の回答をKJ法を参考にして分類した。要支援行動については,〈ASD特性児が周囲とずれた行動や発言をする時〉に,【からかい・悪口】【行き過ぎた注意】【除け者・回避】が生じ,【不快体験の生起・維持】や【楽しさを得る】という結果に至っていることが示された。代替行動については,ASD特性児と周囲児の間で「共有」できるものがある時に【友好的な関わり】が生じるというメカニズムと,各々が自分のことに取り組めるような環境がある時に【ASD特性児に対して何もしない】という代替行動が生起するというメカニズムが示された。周囲児の代替行動を増やす支援として,ASD特性児と周囲児が「共有」できる場を増やすこと,各々のことに集中して取り組めるような環境を整えること,休み時間の両者の関わりに着目すること,周囲児自身の話を丁寧に聞くことの四点が見出された。
著者
松井 仁
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.29-36, 1992-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

In this research, a new scaling procedure was developed in order to measure personality traits (θ) to create Movement responses of organic objects (M or FM in the Rorschach test) in the Inkblot test. This procedure was based on the item response theory. In this procedure the homogeneity of the items of the used test were checked. Here, 60 items including the Rorschach test and other items from Holtzman Inkblot Technique (HIT) were used and 402 subjects were asked to create one response for each item. Then, 40 homogenious items including 8 items from the Rorschach test were selected through the principal factor method. The item parameters of the selected 40 items and the information function for the estimation of θ were then calculated. The estimates of θ were also calculated by the maximum likelihood method. A discussion on the charactristics of items and personality traits estimated on Movement took place. And the result proved that the estimate of θ (personality traits) in order to create Movement responses were not reliable at a low level.
著者
白石 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.252-262, 2005-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
17 10

本研究では, 大学生の抑うつ傾向への対処的・予防的取り組みとして認知療法を基にした心理的介入プログラムを実践し, その評価を行った。研究1では, 大学生126名を対象に, 本プログラムの抑うつ感軽減効果及び抑うつ関連認知の変容効果について検証した。実験期間は3週間であった。分析の結果, 本プログラムを受けた認知療法群 (n=62) は, 統制群 (n=64) に比べ有意に抑うつ感の程度が軽減したことが示された。また, 抑うつ感の発現因と捉えられている否定的自動思考の頻度, 抑うつスキーマの程度も有意に軽減したことが示され, 本プログラムは将来に対する予防的措置としても有効であることが示唆された。研究2では, 本プログラムによる抑うつ感軽減効果の個人差について検討した。個人差要因となる変数には, 認知的変数として否定的・肯定的自動思考の頻度及び抑うつスキーマの程度を, 行動的変数として調整型・改良型セルフ・コントロール実行状況を想定した。分析の結果, 介入前における肯定的自動思考の頻度が効果の個人差要因となることが示された。
著者
村山 航
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.130-140, 2003-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
20 13

これまでの研究において, 学習方略使用と有効性の認知との関係に関し, 一貫した結果が得られていない。本研究では, その非一貫性を解消するため, 従来単一のものとして扱われていた学習方略の有効性の認知を, 短期的な有効性の認知 (目前のテストなどに対する有効性の認知) と, 長期的な有効性の認知 (長期的な学習に対する有効性の認知) の2つに分け, 学習者の方略使用に与える影響を比較検討した。また, その結果の学校間変動や達成目標という個人差変数の調整効果も併せて検討した。中学生・高校生12校1138人に, 予備調査によって作成した歴史の学習方略質問紙に対して回答してもらい, 階層線形モデルなどによる分析を行った。結果, 短期的な有効性の認知は方略使用に対し直接の効果を持つが, 長期的な有効性の認知は, 短期的な有効性の認知を媒介した間接的な効果しか持たないことが明らかになり, 学習方略の有効性の認知を分けて概念化することの有用性が示された。有意な学校間変動は見られなかった。また, 達成目標による調整効果はみられなかった。
著者
田村 節子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.168-181, 2003-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
4

学校生活において子ども達は, 学習面, 心理・社会面, 進路面, 健康面にわたる多様な援助ニーズをもっている。スクールカウンセラーが, 子ども達の援助ニーズに応えるためには, 学校心理学に基づく心理教育的援助サービスの理論体系 (石隈, 1999) が多くの示唆を与える。本稿では, 学校心理学を枠組みとしてスクールカウンセラーが実践したコア援助チームの事例を取り上げ, 心理教育的援助サービスについて考察した。コア援助チームとは“教師・保護者・コーディネーター (スクールカウンセラーなど)が核になり, 他の援助資源を活用しながら定期的に援助する心理教育的援助サービスの形態 (田村, 1998)”である。コア援助チームでは, それぞれの異なった専門性や役割を生かしながら子どもの状況について検討し, 今後の援助について話し合い, 援助資源を生かして援助を行う。コア援助チームで行ったコーディネーションや相互コンサルテーションは有効であることが示唆された。さらに, 援助資源の把握, アセスメント, 援助の立案などのために作成した援助チームシート・援助資源チェックシートも有用であることが示された。
著者
工藤 与志文 白井 秀明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.21-30, 1991-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
11

The purpose of this study was to investigate the effects of learners' existing mis -rules (ru) on area learning. It was inferred that schoolchildren had a ru that if the perimeter of a figure is longer, the area of it is larger (perimeter-ru). The relations between the presence of this ru and the existent education of area were researched. The results were: (i) More than fifty percent of the children in each grade judged areal size in terms of the ru.(ii) The percentage of the ru-response rapidly increased after area learning. These results suggested that (a) the present education of area could not reconstruct the perimeter-ru to the correct rule (ru), and (b) rather, might strengthen misjudgments caused by the perimeter-ru.
著者
解良 優基 中谷 素之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.285-295, 2016-09-30 (Released:2016-10-31)
参考文献数
41
被引用文献数
5 7

本研究は, 課題価値概念におけるポジティブな価値とコストが学習行動に及ぼす影響について, それぞれの主効果に加えて交互作用効果がみられる可能性について検討した。4年制大学の大学生と短大生計434名を対象に, 心理学の授業について課題価値評定および持続性の欠如について測定した。重回帰分析の結果, 努力コストにおいてのみポジティブな価値とコストの交互作用効果が有意であった。単純傾斜の検定を行った結果, 努力コストを高く認知している者にとって, ポジティブな価値の認知はより強い影響をもつことが明らかとなった。また, 機会コスト, 心理コストについては, それぞれポジティブな価値とコストの主効果のみが有意であり, ポジティブな価値は学習の持続性に正の影響を, コストは負の影響を及ぼしていた。興味価値・実践的利用価値の2つのポジティブな価値の間では概ね共通した結果がみられ, 学習者のもつポジティブな価値のみでなく, コスト認知についても考慮する必要性が示唆された。
著者
久保 信子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.511-520, 1999-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
8 5

本研究の目的は, 大学生の英語学習について, 学習動機学習に関する認知的評価, 学習行動, およびパフォーマンスという潜在変数間の関係を明らかにすることである。そのために, 志向-評価モデルと名づけた動機づけモデルを提案した。そのモデルは, 学習動機と学習に関する主観的評価が共変動し, それぞれが学習行動に影響し, さらにパフォーマンスに作用すると想定したものである。このモデルを文系の学生193名, 理系の学生136名の反応について検討した。まず学習方略について, その項目を因子分析にかけた。その結果, 一般的方略と大意伝達方略の2つに分類された。次に, 文系の学生と理系の学生とではいくつかの観測変数の分布に顕著な違いが見られたので, これらを別々に分析した。共分散構造分析にかけたところ, 文系および理系の学生の両グル-プは潜在変数間において同様の関連を持つ結果となり, その関連は志向-評価モデルと同様であった。学習動機と認知的評価への介入一般について考察した。
著者
谷 冬彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.265-273, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
43 18

本研究の目的は, Erikson理論に基づいて, 第V段階における同一性の感覚を測定する多次元自我同一性尺度 (MEIS) を新たに作成し, 青年期における同一性の感覚の構造を検討することである。Eriksonの記述に基づき,「自己斉一性・連続性」「対自的同一性」「対他的同一性」「心理社会的同一性」の4つの下位概念が設定された。20項目からなるMEISを大学生390名 (18-22歳) に施行し, 因子分析を行ったところ, 4つの下位概念に完全に対応する4因子が得られた。α係数, 再検査信頼性係数, 2時点での因子分析における因子負荷量の一致性係数などの結果から, 高い信頼性が確認された。また, EPSIとの関連から併存的妥当性が確認され, 自尊心尺度, 充実感尺度, 基本的信頼感尺度との関連から構成概念的妥当性 (収束的・弁別的妥当性) が確認された。また, 年齢が高くなるほどMEIS得点が高くなるという結果から, 発達的観点からの構成概念的妥当性も確認された。このように信頼性・妥当性の高い多次元自我同一性尺度 (MEIS) が作成され, 青年期における同一性の感覚は4次元からなる構造であることが示唆された。
著者
坂口 由佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.290-310, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究は, 自傷行為経験者の視点から, 自傷行為をする生徒たちに対する学校での対応を検討したものである。自傷行為経験者14名によって書かれたブログから学校の先生たちの対応に関する記事を抜粋し, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。その結果, 自傷行為をする生徒たちは先生からの対応について大きく2つの体験プロセスを経ていた。一つは《自傷行為をする生徒たちにとってサポートされたと感じる体験プロセス》であり, この体験を重ねる中で, 生徒たちは自傷行為をやめようと思えるようになっていく。もう一方は《自傷行為をする生徒たちにとって冷たく見放されたという形で体験がすすむプロセス》である。この体験を経ると, 自傷行為をする生徒たちは心を閉ざし, 先生たちとの関係を絶つようになる。一度つながったとしてもその後の先生たちの対応によっては容易に関係を切り, 一旦先生たちとの距離を置くようになるとサポートされたと感じる体験プロセスに戻ることはほとんどない。しかし, 先生たちからのこまめな声かけなど日常的なサポートを繰り返し受けることでサポートされたと感じるプロセスに戻っていくというルートが一つ認められた。