著者
小菅 正裕
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、地震波の波形を用いて震源位置を推定する方法を開発し、特に本震直後の余震活動を明らかにすることを目的としている。2011年東北地方太平洋沖地震等については通常の方法での震源決定を行い、余震域が本震からの経過時間の対数に比例して広がったことを明らかにした。本研究で開発した方法は、ひな形(テンプレート)地震と連続波形の相関を用いて震源を推定するものである。この手法を東北地方太平洋沖地震へ適用したが、余震活動の全容解明には課題を残した。しかし、この手法の改善により、例えば地殻内の流体分布の解明などへの応用が期待できる。
著者
城本 るみ
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高齢者行政担当者の聴き取りや各種高齢者施設の訪問調査及び現地での網羅的な資料収集に努め、台湾の高齢者福祉政策が政治的要因の影響を大きく受け、中国(大陸)との共通点が多いことを明らかにした。また高齢者施設の運営状況や介護労働に従事する東南アジア籍ヘルパーや大陸籍配偶者の実態から、少子化が急激に進む台湾における介護事業の特徴ならびに高齢者ケアに関する台湾独自の問題点や今後の課題を明らかにした。
著者
伊東 健
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまでの培養細胞での研究より,Nrf2は血管内皮細胞では抗炎症作用を示す一方でマクロファージではスカベンジャーレセプターであるCD36を発現誘導し酸化LDLの貪食を促進すると考えられており,Nrf2の動脈硬化症での役割は不明であった.そこでNrf2の個体レベルにおける動脈硬化症への関与を調べるために,動脈硬化症モデルマウスであるApoE遺伝子欠損マウス(ApoEKO)とNrf2遺伝子欠損マウスをかけ合わせることによりApoE::Nrf2遺伝子二重欠損マウス(DKO)を作成した.このDKOマウスに高脂肪食を12週間投与し,大動脈における動脈硬化巣の形成を脂肪染色法により解析した.ApoEマウスでは動脈硬化巣が形成されるのに対して,DKOマウスでは動脈硬化巣が出来にくいことが明らかになった.このことは動脈硬化症おいては血管内皮細胞のNrf2よりもマクロファージのNrf2が動脈硬化巣の形成に大きく関与していると考えられる.また,マウスマクロファージ培養細胞にNrf2誘導剤であるDEMを処理したところ,酸化LDLを取り込んだマクロファージのアポトーシスを抑制するAIM(apoptosis inhibitor expressed by macrophage)が誘導されることが明らかになった.Nrf2はマクロファージにおいて酸化LDLに対するCD36を介した貪食能だけでなく細胞のアポトーシスを制御することにより動脈硬化巣形成へ関与していることが示唆された.個体レベルでマクロファージにおけるNrf2の役割を明かにするために,DKOマウスにApoEKOマウスの骨髄を移植し,動脈硬化巣形成への影響を現在解析中である.今回の個体レベルでの研究により動脈硬化巣形成に対してはマクロファージにおけるNrf2の役割が重要であることが示された.
著者
大高 明史
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

新たな採集によって得られた標本と博物館などに保管されている過去の標本の分類学的検討によって,日本列島に分布する50の淡水湖沼の深底部から,5科にわたる35分類群の水生貧毛類を記録した。貧毛類の群集構造は,湖沼の生物地理学的位置や栄養状態によって大きく異なっており,貧栄養湖では,密度は低いものの多様性の高い群集が見られた。一方,富栄養化の進行に伴って,ミズミミズ科イトミミズ亜科の特定の種群が高密度になって優占する群集に収れんする傾向が指摘された。この点から,深底部の群集構造の変化を追跡することで,また深底部と集水域の群集構造を比較することによって,湖底環境の変化や富栄養化の進行を監視できると考えられる。
著者
斎藤 稔 岡崎 功
出版者
弘前大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、シャペロニンが内部空洞中の基質蛋白質をフォールディングさせる機能を調べるために、内部空洞水溶液の物理化学的性質を明らかにすることであった。そのために、シャペロニン全体を水中に置き、全原子全自由度の分子動力学シミュレーションを実施した。内部空洞に基質蛋白質(α-lactalbumin)を含む系と含まない系とで同一のシミュレーションを行った。シミュレーションは、これまでになく大規模(各620ps,総原子数約110万個)であったが、数値的に安定した計算を行うことができた。シャペロニンの様々な場所における水分子の拡散係数を明確に求めることができた。空洞内中心領域、空洞内壁面領域の拡散係数はそれぞれ0.3Å^2/ps、0.1Å^2/psであった。バルクの水分子の拡散係数に比べて明らかに小さいことがわかった。このような知見は、実験による観測から得ることは困難である。内部空洞中の小さい拡散係数の水が、基質蛋白質のフォールディングに何らかの影響を及ぼすものと考えている。一方、本研究のシミュレーションでは、原子に対する束縛が一切無いために、水溶液環境でのシャペロニンの平衡構造を知ることができる。水中のシャペロニンは、初期構造(X線結晶構造)と比較して有意な対称的構造変化を示した。この構造変化は、シャペロニンが結晶中で隣のシャペロニンと接している部分に顕著であった。このような知見も、本研究によって初めて得られた新しい知見である。今後更に、シミュレーションの時間を延長し、論文にまとめる計画である。
著者
山本 秀樹
出版者
弘前大学
雑誌
文化紀要 (ISSN:04408624)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.115-129, 1997

1 0 0 0 IR 彫刻の原理

著者
岡田 敬司
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.55-68, 1991-10

無限定の三次元空間に彫刻が存在する在り方の検討を通し,彫刻表現の原理的特性について論じた試論である。その内容は主として,彫刻存在の;I.状態に関わるものⅠⅠ.場所性に関わるものⅠⅠⅠ.時間性に関わるものⅠⅤ.空間性に関わるものV.物質性に関わるものⅤⅠ.その他である。就中,「没形象性」への注目と,同時にこれに捉われることによって生ずる「表現の不自由性」について論じられる。この小論の中で,彫刻表現における真の「自由」を獲得する為に,あらゆる主義や思潮を超えた地点に制作主体たる自己は立脚せねばならないと結論する。
著者
鳥飼 宏之
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

爆薬にアジ化銀ペレットを用い,そのペレット数を変化させることで爆発現象に投入するエネルギ量を変化させ,そして消火対象にメタン-空気拡散火炎を用いて爆風消火の消火特性について実験的に検討した.その結果,爆薬量を増加させるほど,完全に消火が達成される爆点から火源までの距離が増加した.また,爆薬のエネルギ量と大気圧との比の1/3乗で爆点と火炎との距離を無次元化することで,火炎規模を一定とした場合,爆風により消火が達成される限界の無次元距離が投入した爆薬のエネルギ量によらずほぼ同じ値を示すことを明らかにした.
著者
今井 民子
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.65-71, 2002-10

本稿は近代音楽史学の礎となったJ.ホ-キンズとC. バーニーの『音楽通史』に関して,特に18世紀の各国の音楽に対する両者の見解を比較検討するものである。その結果,明らかとなったのは,ホ-キンズの保守的音楽観とバーニーの進歩的音楽観の相違である。すなわち,バーニーは大陸音楽紀行の成果をふまえ,18世紀の新しい潮流を視野に入れて各国の音楽をとらえているのに対し,ホ-キンズは斬新な音楽よりも,コレツリやジェミニア-ニに代表される古典様式の音楽に音楽発展の完成をみていた。ホ-キンズが『通史』で示した古楽復興-の強い関心は,彼の保守的姿勢のあらわれであり,彼はその中に,音楽のアマチュアリズムの確立と,古典的趣味の育成を求めていたといえよう。
著者
新井 陽
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

L-dopa誘発ジスキネジア(LID)の発症機序の解明と対策の確立のため、パーキンソン病モデルラット(PDラット)とLIDモデルラット(LIDラット)の淡蒼球内節でin vivoマイクロダイアリシス法によりGABAを測定した。LIDラットではPDラットに比較して淡蒼球内節でのGABA放出が増加していることを確認した。またPDモデルの淡蒼球内節にGABAA受容体アゴニスト(muscimol)を注入することによってジスキネジアを誘発されることを確認した。さらにL-dopaを投与したLIDモデルラットの淡蒼球内節にGABAA受容体アンタゴニスト(bicuculline)を直接注入することによってジスキネジアがを抑制されることを確認した。以上の結果より淡蒼球内節へのGABA放出異常がLID発現の原因であると考えられた。
著者
伊藤 大雄 石田 祐宣 松島 大 石田 祐宣 松島 大
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

リンゴ園で微気象観測ならびに乱流計測を長期間実施し、複数の解析手法により蒸発散量を明らかにした。また、群落内貯熱量や融雪潜熱量の推定手法を考案するとともに、渦相関法における熱収支インバランス問題を追究し、得られた成果を蒸発散量の計算プロセスに反映させた。その結果、土壌水分推定法の開発には至らなかったが、月別の作物係数をもとにした蒸発散量の高精度推定を可能にした。更に衛星画像を利用した日射量推定法や、これを利用した蒸発散量推定法を考案し、蒸発散速度の広域的推定に展望を開いた。
著者
鳥丸 猛
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ブナ、ハウチワカエデ、コミネカエデの稚樹(胸高直径5cm未満、樹高30cm以上の幹)の毎木調査と林冠状態の変化を比較した結果、コミネカエデが最も台風撹乱の影響を受けており、続いてハウチワカエデが中程度の影響を受けていた。一方、ブナは台風撹乱の影響をあまり受けていなかった。一方、これらのカエデ属について利用可能な7座のマイクロサテライトマーカーを選抜した。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

従来、発掘整理や資料価値など、研究が十分にすすんでいなかった、往来物資料について、調査を実施し、その分類整理を行った。特に北東北地域所蔵の往来物資料について、書誌的文献学的な紹介とともに、その分布や偏在状況を提示した。近世期における秋田、岩手、青森の諸地域の教育環境や文化的背景を考察検討するうえで、それらの資料群が重要な示唆を与えてくれるものであることが判明した。今後、近世庶民生活や教育の実態について、発展的応用的な研究基盤となることが期待される。
著者
松井 太
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

西暦9〜14世紀に属する中央アジア・新疆地域出土の古代ウイグル語世俗文書のなかから,特に税役制度に関係する社会経済文書群を文献学的に解読し,歴史学的考察の基礎となる校訂テキストを準備した。特に,税役徴発を命じる行政文書群については,近日中に英文で資料集として出版する予定である。また,その他の個別の諸種文書(免税特権許可状,契約文書など)を解読校訂しつつ,その歴史的背景となる税役制度の分析を試みた。
著者
古郡 規雄
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

P糖タンパクは腸管、肝臓、腎臓および血液脳関門に存在し、汲みだしポンプとして作用する薬物輸送トランスポーターである。P糖タンパクをコードするMDR1遺伝子にはいくつかの多型が存在する。この多型が血液脳関門に発現するP糖タンパク機能を規定し、中枢神経薬の脳内濃度の個人差を導き出す可能性がある。そこで申請者は、定型抗精神病薬ブロムペリドールの臨床効果に及ぼす血液脳関門遺伝子MDR1多型の役割について検討した。本研究に対し文書での同意が得られた31例の急性期の未治療あるいは治療中断中の統合失調症患者であった。ブロムペリドール(6-18mg/day)による治療を3週間行い、毎週BPRSとUKU副作用スケールによる臨床評価および血漿薬物濃度測定用の採血を行った。MDR1遺伝子多型であるC3435TとG2677T/AをPCR-RFLP法で同定した。これらの両遺伝子多型、年齢、体重、性別および血漿薬物濃度を独立変数にそれぞれの臨床反応を従属変数に多変量解析を行ったところ、認知障害の改善スコア(β=0.673,p<0.01)においても改善率(β=0.464,p<0.05)においてもC3435T遺伝子型と有意な相関を認めた。副作用はいずれの変数とも差がなかった。今回の結果より、血液脳関門遺伝子MDR1の多型は抗精神病薬の薬効に関与する可能性が示された。今後、脳内薬物濃度を規定する因子を考慮に入れた検討をすることで薬効予測が容易になることが示され、将来の研究に大いに役立つ所見であると考えられた。
著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.41-52, 2003-03

本稿は、家督を継いだばかりの信長が、知多郡・篠島の商人を保護し、彼らに対し往来の自由を認めた折紙の分析である。本稿での私の目的は、当文書発給の歴史的な場面を復元することにあるOここで私は、先学が暖味にしてきた「当所守山」を、当時の信長の勢力圏「那吉野・守山間」とし、宛名の「大森平右衛門尉」を守山・大森にあった宿・関と関わった人物で、この折紙により、知多郡・篠島の商人の商人司に任命されたとの考えを提出した。当時交通の自由を妨げていたものは、通説では経済関とされているが、この文書の分析によって明らかになったことは、質取りや喧嘩などで人身の自由が脅かされていたことが大きかったとなろう。
著者
澤村 大輔 松崎 康司 中野 創
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

遺伝子を破壊するのではなく,任意の時期に目的の蛋白そのものを分解できるマウスシステムを着想した.そこでBP180の分解を試みた. K14プロモーター下に、分解TAGを持つBP180遺伝子を発現する遺伝子コンストラクトを作製。表皮細胞株にTIR遺伝子を導入して、TIR遺伝子を恒常的に発現する細胞株を作製した。それらの発現をウエスタンブロットと蛍光抗体法で確認した。次にその細胞株に、TAG-BP180の遺伝子を導入し、オーキシンを加えたところ、TAG-BP180の分解が確かめられた.本研究は、接合部型表皮水疱症や類天疱瘡の新しい観点からの診断法や治療法が確立される可能性が高いことが解明された。