著者
家辺 勝文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.334-343, 2008-11-29 (Released:2009-01-27)
参考文献数
13

視覚的なメディアとしての文書は言語表記体系に依存した空間的構造をもち,形態依存の意味作用の場を形作る.電子文書交換の観点から組版関係のJISなどを参照しつつ日本語文書の視覚的構造化の諸特性を再検討する.
著者
西岡 千文 亀田 尭宙 佐藤 翔
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-20, 2020-02-29 (Released:2020-03-27)
参考文献数
55

学術出版物のオープンアクセスが進展し,自由にアクセス可能な学術情報が蓄積されている.一方,引用データに関しては,機械可読なアクセスのオープン化が遅れている.このような状況を解決するために,I4OC(Initiative for Open Citations)が設立され,オープン・サイテーション,すなわち引用データのオープン化を推進している.本稿では,I4OC の取り組みによって公開された引用データを分析することで,日本におけるオープン・サイテーションの現状の把握を試みる.結果,世界の学術出版物において引用データをオープンにしている文献の割合は24.22%であるのに対して,日本の学術出版物においては18.86%であることが判明した.オープン・サイテーションを推進するための今後の課題として,過去の文献と人文学系分野の文献の引用データの組織化の支援が挙げられる.
著者
安平 哲太郎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.195-211, 2009-05-16 (Released:2009-06-27)
被引用文献数
1

情報関連装置への入力以前の問題として、客観的世界に働いている完全合理性とそれを認識する人間の限定合理性との関係を議論する。完全合理性は人間が認識するという立場からは、「2 つの対象を人間がある観点から見た時に、本来同じと認識すべき事、異なると認識すべき事」と表現できる。これは、同時点の別の2 つの対象や、ある時点での対象と経時変化を経た後の同じ対象との間で成立し、異なり方は部分と全体の間で、さらに、経時変化を経る間に外部から働く作用と部分あるいは全体との間で一対一対応である。一方、人間の認識は不完全であり、それ故に限定合理性といわれる。このうち、特に異なると認識できていない時、対立や矛盾が生ずる事をパラドックスを用いて明らかにする。そして、この限定合理性を完全合理性に近づけてゆくためには、部分と全体との関係について問題意識を持つ事が重要で、これが概念分析の本質であることを示す。
著者
時実 象一 小出 直輝
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.71-76, 2012-05-20 (Released:2012-07-31)
参考文献数
9

文庫本などシリーズで長期間にわたって刊行されている書籍を対象にレイアウトがどのように変化してきたかを調査した. 愛知大学豊橋図書館が所蔵する19種類の文庫本等 (新書含む) の文字サイズ, 字間, 行間はほぼ同一であった. 「岩波文庫」の面積あたりの文字数は2007 年前後に低下した. 村上春樹著「ノルウェイの森」(講談社) では, 単行本版は行間・余白が最も広く, したがって文字密度が最も低い. 電子書籍では, Kinoppy (iPad, HTC), i文庫 (iPad-ゴシック体, HTC), はこの字間/行間の比率はほぼ同一であったが, i文庫 (iPad-明朝体), GARAPAGOS (HTC) は字間が行間に比べて広めであった.
著者
柴田 大輔 芳鐘 冬樹
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.277-296, 2016-09-30 (Released:2017-01-06)
参考文献数
52
被引用文献数
1

本研究では,研究評価指標や情報検索技術の改善に利用される学術論文の引用情報について概念的な整理を試みた.第一段階として,引用をタイプ別に分類した様々な先行研究から分類スキーマを抽出し,その観点を(1)意義的観点,(2)評価的観点,(3)機能的観点,(4)形態的観点,(5)位置的観点,(6)社会的観点の6観点に分けて再定義した.第二段階として,第一段階で得られた各観点について尺度水準,推奨される分類スキーマ,活用時の注意点を考察した.従来複合的な観点から構築されていた区分を分離し,異なる観点として位置づけられてきた区分を統合することで,引用分類についての基礎的なスキーマを作成できた.
著者
江草 由佳
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.225-234, 2007-12-08 (Released:2007-12-21)
被引用文献数
1

日本の教科書のうち,特に現行の検定教科書以前に使用された戦前教科書の電子化と応用の現状を述べ,ケーススタディとして国立教育政策研究所教育研究情報センター教育図書館が所蔵する戦前教科書の電子化,保存とその応用について述べる.
著者
堀井 洋 林 正治 堀井 美里 上田 啓未 山地 一禎 高田 良宏
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.217-220, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

古文書や科学実験機器など所謂”博物資料”に関しては,将来に向けた保存・継承 とともに広く社会における活用や普及が求められている.発表者らは,これまで 明治・大正期の科学実験機器資料や教育掛図資料に関する博物資料情報をリポジトリ公開し,それらに対してデジタルオブジェクト識別子(DOI: Digital Object Identifier)を付与する試みを実施してきた.本発表では,その概要を紹介するとともに,社会における活用など今後の展望について述べる.
著者
工藤 彰 村井 源 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.126-131, 2009-05-16
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

本研究では村上春樹の初期三部作を用いて,語彙の出現頻度や語彙同士の関係性に着目し,単語の計量分析からネットワークを作成した.主として,三部作に共通して登場する人物である「鼠」がネットワークの中心を占めていることに着目し,共起単語より「鼠」の役割を分析した.その結果,三部作中の第二作途中をさかいに,物語の中心に位置していた「鼠」の出現頻度が落ち,中心から周辺に移行していく構造が見出された.また,従来の文学批評でなされてきた言説と計量的分析を比較することで,本研究の文学的解釈における有効性が確認された.
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.224-235, 2009-05-16 (Released:2009-06-27)
被引用文献数
1 4

Web 情報探索行動中のサーチエンジン検索結果一覧ページ(以下,SERP と呼ぶ)に対する行動に着目し,ユーザ実験の方法論により,視線データ,ブラウザログ,事後インタビュー等の情報を包括的に用いて,ユーザ属性,タスク属性,クエリ属性の3 つの要因と,眼球運動による視線データとの関連を探った.分析の結果,SERP における行動の説明変数としては,他の要因に比べてInformation/Navigational クエリの違いによる効果が最も大きく,SERP への遷移の直接的な原因となるクエリ種別により,ユーザの行動を予測しうる可能性が示唆された.
著者
河合 将志 尾城 孝一 朝岡 誠 西岡 千文 前田 隼 林 正治 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.260-266, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
7

日本の機関リポジトリによるオープンアクセスを推進するため,図書館は研究者に対して論文の提供依頼をおこなってきたが,そのメリットは不明確であり,提供依頼の成功率は低迷している.こうした現状を踏まえ,本研究では被引用数に着目することにより,日本の機関リポジトリによるオープンアクセスのメリットの存否について検証した.日本の機関リポジトリによるオープンアクセス論文の数は限られるものの,その被引用数と様々なタイプのオープンアクセス論文の被引用数の比較からは,日本の機関リポジトリによるオープンアクセスのメリットは確認できなかった.
著者
白鳥 孝幸 村井 源
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.276-282, 2020-05-23 (Released:2020-06-26)
参考文献数
13

「ハッピーエンド」と「バッドエンド」は物語における最もメジャーなカテゴライズであるが,これまでの研究においてそれらに関する計量的な分析はほとんど行われていなかった.本研究では,乙一の短編小説における喜劇性と悲劇性の抽出を目指した.まず,対象データを3 ジャンルに分類し,分類語彙表に基づいた新たな極性辞書を作成した.また,極性辞書を用いてテキスト中の極性語を抽出した.そして,抽出した極性語から,階層的クラスター分析と重回帰分析を用いて,ハッピーエンド作品とバッドエンド作品における特徴の抽出を試みた.その結果,物語の終盤四分の一における「好・愛・敬」にカテゴライズされる極性語がハッピーエンドに寄与していることが明らかになった.また,物語の終盤四分の一における「悲・哀」にカテゴライズされる極性語がバッドエンドに寄与していることが明らかになった.
著者
佐藤 翔 石橋 柚香 南谷 涼香 奥田 麻友 保志 育世 吉田 光男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.268-283, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
25

本研究では非専門家にとっての論文タイトルの「面白さ」を得点化し,Twitterからの言及数が多い論文と言及されたことのない論文でこの得点に差があるかを検証した.Twitterからの言及数データはCeek.jp Altmetricsから収集し,2008年に出版された論文の中でTwitterからの言及回数が特に多い論文103本と,言及回数が0の論文の中からランダムに選択した100本を分析対象とした.4名の非専門家が各論文タイトルの「面白さ」を7段階で評価し,その点数の合計を「面白さ」得点と定義した.分析の結果,Twitterからの言及数が多い論文グループと,言及数が0の論文グループで「面白さ」得点には有意な差が存在し,Twitterからの言及数が多い論文の方がタイトルが「面白い」傾向が確認された.さらに,この差は分野別に分析しても確認された.
著者
高久 雅生 江草 由佳 寺井 仁 齋藤 ひとみ 三輪 眞木子 神門 典子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.249-276, 2010-10-22 (Released:2010-12-08)
参考文献数
41
被引用文献数
3

Web利用者の情報探索行動の理解のために,眼球運動データ,ブラウザログ等の情報を包括的に用いて,ユーザ特性,タスク種別の違いがいかに探索行動に影響しうるかを検討した.ユーザ特性として図書館情報学専攻の大学院生と一般学部生の2グループを設定し,それぞれ大学院生5名,学部生11名が実験に参加した.タスク種別としてレポートタスクと旅行タスクの2つを設定して,それぞれ15分間ずつのWeb探索行動を観察した.実験の結果,タスク種別の影響として,サーチエンジンの検索結果一覧ページ上における視線注視箇所として,旅行タスクではスポンサーリンク,レポートタスクではスニペット領域がより多く見られるなど,タスク毎に着目する情報が異なることが示された.また,旅行タスクではサーチエンジン検索結果一覧ページから2回以上たどったページの閲覧回数がより多く,異なるタスクにおいて情報収集方略が異なる傾向が示唆された.一方でユーザ特性の影響として,大学院生は学部生に比べて,ページ閲覧をすばやく行い,タブ機能を用いた並列的な閲覧行動も観察されるなど,効率的な情報収集を目指した行動の差異が見られた.
著者
青山 優里彩 松村 敦 宇陀 則彦
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.233-238, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
7

本研究は、情報検索時のメタ認知と感情の側面を支援することで検索パフォーマンスを向上させることを目的とする。2体のチャットボットを用意し、検索行動時に対話することによって検察パフォーマンスの向上を目指す。1体はユーザのメタ認知を促進させる対話をし、もう1体は主にはげます対話をするボットを開発した。ボットとの対話による検察パフォーマンスへの効果を検証するべく、ユーザ実験を行った結果について報告する。
著者
岡本 裕子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.439-446, 2021-01-09 (Released:2021-02-12)
参考文献数
6

本発表では、2020 年10 月に開催した大学共同利用機関シンポジウムを事例としてオンラインイベントのあり方について考察する。本シンポジウムは、大学等の共同研究・共同利用を支える全国の大学共同利用機関が一堂に会し、例年、アキバ・スクエア、科学未来館等のリアル会場で行われてきた。一般市民に向けて研究成果や共同利用事業の展示並びに研究トークを主なプログラムとして開催してきたが、本年2020 年は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オンライン開催とすることが決定された。約2カ月の期間でオンラインイベントを設計するためのポイントを振り返り、今後のハイブリット型イベントを検討する一助にしたい。
著者
佐藤 翔 吉田 光男 安蒜 孝政 逸村 裕
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-162, 2011-05-28
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では情報探索行動の起点としてのWikipediaの有効性について検討することを目的に,日本語版Wikipediaの外部リンク約119万件について,URLの詳細やアクセス障害・リンク切れの状況について調査した.結果から,1)日本語版Wikipediaからのリンクの11%程度でアクセスに障害がある,2) edu,co.jp,go.jpドメインの外部リンクでアクセス障害が多い,3) 新聞社が運営するニュースサイトで特にアクセス障害が多いこと等を明らかにした.
著者
山下 泰弘 西澤 正己 孫 媛 根岸 正光
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会研究報告会講演論文集 情報知識学会 第8回(2000年度)研究報告会講演論文集 (ISSN:24329908)
巻号頁・発行日
pp.5-12, 2000 (Released:2017-09-19)
参考文献数
2

In recent years, research evaluation is becoming one of the major topics of governmental science policy. Along with this trend, citation analyses attract great attention as a tool for quantitative measure of quality of research output. We report some results of an analysis on the characteristics of citations in academic disciplines, based on the ISI citation statistic database : National Citation Report (NCR). This database contains bibliographies of articles written by authors affiliating to Japanese institutes from January 1981 to June 1997,with yearly citation counts. First, we analyze frequency distributions of citations by academic disciplines, and then investigate changes of citation counts per article through the years after the publication. Finally, we classify all disciplines into four types by the two indices : number of papers and cited times per article.
著者
工藤 彰 村井 源 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.1101190024-1101190024, (Released:2011-01-31)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本論文の目的は,作家の作風変化を科学的に検証することである.対象としたデータは,現代の日本を代表する作家,村上春樹の長篇12作品とした.12長篇の中で近似的作風を持つ作品群を明示化するため,テクストから得られた語彙を計量化して品詞と意味カテゴリの両分類から特徴ベクトルを抽出し,それぞれの特徴ベクトルからクラスタ分析を行った.その結果,品詞分類からは通時的な区分によってのクラスタが形成され,村上の文体が時代とともに変化しているのが確認できた.また,意味分類からは主題や内容に影響されたクラスタが形成され,村上の関心が個人から社会に向かっていくのが実証できた.
著者
岡部 晋典 佐藤 翔 逸村 裕
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.333-349, 2011-09-27
被引用文献数
2

本稿ではオープンアクセス運動の契機となったBudapest Open Access Initiative(BOAI)について分析し,これがどのような意図のもとで公開されたか調査した.まず,BOAIを提唱し,オープンアクセス運動を支援している財団であるOpen Society Institute(OSI)と,その設立者であるGeorge Sorosについて紹介し,彼らの思想的根拠であるKarl R. Popperの提唱した「開かれた社会」概念について概観した.また,BOAI中にその思想が影響していることを明らかにした.次に,オープンアクセス運動に関連する文献群中でのPopperおよび「開かれた社会」への言及状況とBOAIの受容状況の定量的計測から,オープンアクセス関係者の間での「開かれた社会」関連思想の認知状況を検討した.その結果,OSIは「開かれた社会」という政治思想の実現を目的にオープンアクセス運動に関与しているにもかかわらず,他のオープンアクセス運動関係者はこの思想の存在には言及していないことがあきらかになった.
著者
工藤彰 彰 村井 源 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.126-131, 2009-05-16 (Released:2009-06-27)
被引用文献数
1 1

本研究では村上春樹の初期三部作を用いて,語彙の出現頻度や語彙同士の関係性に着目し,単語の計量分析からネットワークを作成した.主として,三部作に共通して登場する人物である「鼠」がネットワークの中心を占めていることに着目し,共起単語より「鼠」の役割を分析した.その結果,三部作中の第二作途中をさかいに,物語の中心に位置していた「鼠」の出現頻度が落ち,中心から周辺に移行していく構造が見出された.また,従来の文学批評でなされてきた言説と計量的分析を比較することで,本研究の文学的解釈における有効性が確認された.