- 著者
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山田 利博
- 出版者
- 水利科学研究所
- 巻号頁・発行日
- no.364, pp.81-99, 2018 (Released:2019-06-10)
東京大学演習林において森林内のキノコにおける放射性セシウムの福島原子力発電所事故後5年間の変化を土壌などの基質との関係から調べた。いくつかの種類のキノコで放射性セシウム濃度は事故後1,2年目に高く,その後低下した。しかし,多くのキノコでは放射性セシウムの変化は大きくなく,時間とともに放射性セシウムが集積することは一般的ではなかった。放射性セシウムはA0層では次第に減少する傾向がみられたが,A層における増加は事故後1,2年目にみられたもののその後は明瞭でなかった。放射性セシウムはいくつかのキノコ種,特に菌根菌で高濃度に集積したが,他のキノコでは土壌環境の値を超えず,キノコがどの程度放射性セシウムを集積するかどうかには菌の種類や土壌条件が影響していると思われた。放射性セシウム134(Cs-134)との比から計算した過去の残存放射性セシウム137(Cs-137)の割合から,キノコや土壌では福島事故以前からのCs-137を長期間保持しているだけでなく,福島事故で発生したCs-137は流動的であるのに対して,事故以前からの残存Cs-137は菌類の物質循環系に強固に保持されていることが示唆された。