- 著者
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田子 泰彦
- 出版者
- 水産増殖談話会
- 雑誌
- 水産増殖 (ISSN:03714217)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.2, pp.225-226, 2003-06-20
- 被引用文献数
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北陸地方で有数のアユ、Plecoglossus altivelis、漁場が存在する庄川では、アユ漁の盛期である夏季のアユ漁場の流量は、合口ダムから分水路を経て多くの水(約60トン/秒)が和田川に流れるため、約10トン/秒と著しく少なくなっている。また、低水護岸の建設や砂利採取などの河川工事の影響も加わり、庄川では20㎞に及ぶ漁場に最大水深2mを越える淵はわずか3個しかなく、瀬は水深の浅い平瀬が多くを占めるようになった。このようにアユの隠れ場や休息場である淵の喪失や瀬の平均水深が浅くなることによって、アユ網漁の漁獲圧力が高まったと推察されている。一方、余暇時間の増大や交通の利便性の向上などに伴い、近年アユ漁を行う人は急激に増加した。庄川では漁獲能力の高い投網とテンカラ網(投げ刺網の一種)の承認件数は、1978年にはそれぞれ145統と678統であったが、1998年には192統(1.3倍)と1364統(2.0倍)に増加し、アユに対する漁獲圧力は以前と比べ著しく高くなった。しかし、庄川では新規申請者では網漁の許可が得にくいことや網漁の解禁日が釣りよりも5日遅いこと(富山県内でアユ網漁が可能な河川に一様に適用)以外に網漁の漁業規制は実施されていない。本研究では、人為的な理由で流量が少なくなった河川(区域)において、流量の増加がアユの資源管理に及ぼす影響の一つを明らかにするために、庄川に放流される湖産アユを用いて、飼育池において水深別にアユの漁獲試験を行い、その漁獲効率の差を明らかにした。