- 著者
-
榊原 巌
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:13478397)
- 巻号頁・発行日
- vol.132, no.5, pp.265-269, 2008-11-01
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
-
6
漢方製剤が薬価に収載されてすでに30年以上が過ぎ,医療の現場においても漢方製剤が治療アイテムとして定着してきている.また,15改正日本薬局方において初めて6処方の漢方エキスが収載され,医療用医薬品の地位を固めつつある中,その品質保証の面で,科学の進歩に合わせたより高度な分析評価が望まれるようになってきている.一方,欧米においては補完代替医療(CAM)の考え方が定着し,多くのサプリメントが普及されるようになってきている.その中,アリストロキア酸含有生薬が配合された製品が引き起こした腎障害事例,エフェドラによる脳出血の事例など,ハーブによる様々な問題も表面化されるようになり,植物薬の品質管理面での社会的な要望が高まりつつある.米国FDAならびに欧州EMEAでは植物薬の品質評価として"フィンガープリント"を提唱している.この流れを汲み,漢方製剤の国際化も考慮し,"漢方製剤の3Dフィンガープリント評価法"を確立した.本評価法は原料となる生薬および製品である漢方製剤の双方の品質評価に有用であり,特に配合する生薬の品質が最終製品である漢方製剤の品質を左右することから,より均一な漢方製剤を提供するためには原料生薬レベルでの品質の安定化を図る取り組みが重要となる.またフィンガープリントによる同等性評価としての新たな試みとして,統計学的な手法を用いたパターン認識法による同等性の解析評価法を開発した.漢方製剤を高次なレベルで評価する取り組みが今後,益々重要視されてくる.<br>