- 著者
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中井 誠一
- 出版者
- Japanese Society of Biometeorology
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.1, pp.51-54, 2004-08-01
- 被引用文献数
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わが国の高温による死亡数(熱中症)人口動態統計と新聞記事から検討した.熱中症死亡数と年間の日最高気温度32 °C,34°C,36°C以上の日数との間にはそれぞれ相関関係が認められた.また,日最高温度が38度を超えるような日が出現する年では熱中症件数が高値を示した.運動場面の熱中症発生状況は,若年男性が多く,運動種目では,野球が最多であり,屋外だけでなく屋内においても発生がみられた.また,運動強度の強いランニング時の発生数が多いことも特徴である.発生要因をまとめると以下のようになる.(1)全国各地で発生.(2)若年男性が多い(新入生が多い).(3)運動種目は屋外だけでなく室内でも発生し,ランニング時が多い.(4)気温は24 °C以上,湿球温度20°C以上,WBGT 23°C以上で発生.(5)着衣条件と体調不良も見逃せない.熱中症の発生実態とグラウンドの環境温度観測値をもとにして検討された運動時の熱中症予防指針(日本体育協会)は,WBGT 21°C以下:ほぼ安全,WBGT 21~25°C:注意,WBGT 25~28°C:警戒,WBGT 28~31°C:厳重警戒,WBGT 31°C以上:運動は原則中止,となっている.一方,日常生活での曝露温度は自然環境温度の変化と乖離がみられ移動による急激な温度編も観察された.従って,温度条件を考える場合,自然環境による気象変化だけでなく人工環境による温度変化も合わせて考慮する必要性があることを指摘した.<br>